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楽しい時間
放課後。
菜穂子が校門で待っていた。
歩きながら。
「ゴメン…」
「いいのよ。だって、苦しくて仕方なかったんだもん」
僕の頭の中に、苦しい日々が浮かんできた。
「でも、好き…」
「そんなこと、言わないでくれよ」
菜穂子が頭を抱えた。
「私、どうすればいいの!こんなに好きなのに、付き合ったらあんなに苦しいなんて…」
僕は彼女をいたわりたくなった。
「少しぶらつこう」
「うん!」
それから僕らは街を歩いた。楽しい時間が過ぎていく。
ベンチ。
「楽しかった!」
「そうだね」
「ずっとこんなふうに楽しければいいのに…」
彼女は僕の手を握った。
「やめた方が…」
「やっぱり、あなたのこと、好き…」
僕らはキスをした。
何が正しいんだろう?
そんな問いが頭をよぎり、そして消えた。