4/65
激しい心の揺れ
朝、校門の前に、由加里が立っていた。
「ちょっと、いい?」
由加里は、人気のない校舎の影に、僕を連れ出した。
「遼が菜穂子と付き合うの、正しくないんじゃないかな?」
「でも、決めたじゃないか。僕らは付き合うの、やめるって」
由加里が目をうるませた。
「だって、好きなんだもん!遼のこと」
僕は由加里の肩に手をのせた。
「だったら、この間の話し合いのとき、そう言えばよかっただろ?」
「もう、わけ、わかんない!」
由加里は、その場から駆けていった。
放課後。
菜穂子と街を歩いていた。
「苦しんでるんだ、由加里…」
「ともかく、もう終わった話だ」
僕は菜穂子の腰に手をまわした。
しかし、菜穂子はその手をさえぎった。
「私の、あなたへの気持ちだって、疑問だらけなのよ」
僕は真顔で言った。
「じゃあ、別れるのかい?」
「嫌!」
菜穂子が僕に抱きついた。
「もう離したくない!あなたが好き!」
「僕も…」
けれども、僕の心は、激しく揺れていた。