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迷い
放課後。
僕と菜穂子は、特に当てもなく、適当に街を歩いていた。
「なあ?」
「なに?」
「本当に正しいんだろうか?」
「何が?」
「だって、僕の彼女は由加里のはずだろ?」
「そうね」
「それなのに、こんなことして、いいんだろうか?」
「…確かに」
菜穂子がため息をついた。
「私もそう思ってたとこ」
「正しくないよな?」
「うん」
菜穂子が続ける。
「でも…、あなたが彼だっていう思いも、私の中には強くあるの」
「…そう。確かに、僕の中にもそれはある」
ベンチ。
「好き…」
菜穂子が僕の手を握った。
「僕も、だ…」
僕らは、大きな迷いを抱えながらキスをした。