望月ワタルの真実
僕は綾崎トオルの日記と、水嶋ユウヒ、梔子スバルのメールを読み返して、クスリと笑った。
「おもしろい!おもしろいなぁ!さいっこうだよ、みんな……」
綾崎トオルの日記を胸に抱き、僕は彼と会ったときのことを思い出しては恍惚とした表情を浮かべた。あの日の出来事が、まるで昨日のことのように思い出される。
「ああ、たまらない!あの顔!君は本当に僕を興奮させてくれる」
僕は足元に転がっている遺体のそばにしゃがみこみ、その額に恭しく唇を寄せた。
すっかり冷たくなって硬くなった頬に手を添え、僕はうっとりとした。
僕は再び立ち上がり、仄かな光を放つ携帯電話を手に取ると、両手で真っ二つに割った。
「邪魔だよ。水嶋も梔子も母さんも父さんもミカもヒロキも!なんでみんな僕の邪魔をするんだ。特に梔子スバル、君は本当に駄目な子だ。真実に気付いたみたいだったけど、少し遅かったね。君は昔から駄目な子だったよ。笑っちゃうね」
でも、と心の中で呟き、目を細めて振り返る。その視線の先には彼がいた。
「もっと駄目な子は君だよ、水嶋ユウヒ!君は本当に僕を愉しませてくれた。ありがとう、感謝するよ。君と梔子スバルは僕と綾崎トオルを引き立てる脇役でしかなかったけど、立派な活躍だったよ」
僕は大仰な仕草で頭を垂れる。水嶋ユウヒは憎々しげに僕を睨みつけている。その手には鋭利なナイフが握られている。
「なんで、綾崎を殺したんだ!」
水嶋ユウヒが怒鳴る。その姿は小さくてなんにも力を持たない獰猛な犬にそっくりで、僕は思わず笑ってしまった。
「なんでって……答えは一つに決まってるじゃないか!
僕は綾崎トオルを愛していたんだよ。ずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっと!!!
……だのに、綾崎トオルは僕を拒んだ。幼い頃、僕は綾崎トオルに拒絶された。正確には僕の両親が僕と綾崎トオルの仲を引き離したわけなのだけれど、そんなのはどうでもいい。
僕は綾崎トオルから愛されたかった!だからこんなことをしたのさ。僕だけしか見ないようにすればいいと」
水嶋ユウヒのナイフを握り締める手に力が籠もる。
「でも、それももう今日で終わりさ」
水嶋ユウヒの殺気が一瞬だけ緩んだ。そんなんじゃ僕を殺せないよ、と心の内で嘲笑いながら続けた。
「君は綾崎トオルの願いを叶えに来たんだろう?ならその願いを叶えてやれよ。
綾崎トオルが君に生涯最期の願いを託したというのは心底胸糞悪いけど、その願いを叶えてやれるのは僕しかいないだろ?それはとっても素敵なことだ。うきうきして踊り出してしまいそうだよ。
だから、はやく僕を殺してくれ」
僕は身を翻し、足元に転がる綾崎トオルの遺体を見下ろした。大きく両手を広げ、そして、嬉しさを滲ませた声で、こう言った。
「もうすぐ君のところへ行けるよ。
僕の大好きな大好きな愛する兄さん」
僕が最期に聞いたのは、ナイフが肉を斬る嫌な音と、水嶋ユウヒの泣き声という、反吐が出るような醜い音だった。
一章の最後の日記には
ある秘密が隠れています。