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封印された猫缶と冒険のはじまり

 いったいここはどこなのか?

 なんで私はここにいるのか?

 いつ、家に帰れるのか?


 そんなことを思って、涙した夜もありました。

 いや、時々、今でも思い出して泣くことある。

 でも、異世界無人島生活ももう三年目に突入である。

 三年もたてば、私のか細かった神経だって鋼鉄のザイル並に鍛えられる。

 水分補給が必要なほど泣いたって、翌日にはちゃんと笑えるようになる。







 ■■■■■








「おうおう、ご主人さまよう。さっさとやっちまえよ。いつまでも走ってんと、またコケんぞ」

「わかってる!」


 鬱蒼と草木が生い茂るジャングルのような森の中を、はしる。走る。奔る。

 垂れ下がってるつる草や、小枝なんかは私の身体にふれる前に弾けて消える。

 これは私の身体が、薄い魔力の膜で覆われてるからなんだって、物識りなセフィロスが教えてくれた。

 あ、セフィロスっていのは、このわたしが握ってる銀色の杖のこと。杖っていっても、ただの細い棒ね。指揮者のタクトに似てる。

 何でもこの世界に三本しかない希少な杖なのだと本人は言っている。杖に本人と言うのはおかしいのかもしれないけれど、本人は本人なので仕方がない。

 まあ、希少なことは認める。しゃべる杖なんてものがそんなに何本もあったらおかしいから!

 一人ぼっちの孤独の中で、独り言はちょっと多いかもしれないけれど、それでも私がやってこれたのはこの杖がいたからだ。

 私にとってかけがえのない存在だってちゃんと認識してるし、感謝もしてる。

 時々、へし折りたくなるほどうざったいけど。

 

 

「セフィロス、草原の手前でやるから!」

「わーった、火属性だぞ」

「りょーかい」


 この『やる』は、もちろん『殺る』ですよ。

 ここに来て、何が一番変わったか……それは、私自身なのだと私は断言できる。

 日本にいた時の私を知っている人には、今の私が私だってわからないに違いないと思うくらいだ。。

 

 まず、外見が変わった。

 ここには鏡がなくてたまに泉に映した顔を見るくらいだけど、それでも自分がかわったってことがわかる。

 自分でも驚くくらい痩せた。

 日本にいた頃は、ぽっちゃり体型だったんだよ、私。

 ううん。ぽっちゃりっていうとちょっとかわいすぎる。

 正直言って、デブだったと思う。


 身長が158くらいで体重が六十キロ台。まあ、六十キロ越えてる時点でデブ確定だから、武士の情けで下一桁は聞かないでやってほしい。

 二の腕もお腹もやわらかくてたぷたぷしてた。で、肌の色がすごく白いのね。

 白くてデブ……白ブタと呼ばれなくて幸いだったけど、今はだいぶ日に焼けた。こっちには日焼け止めなんかないんだよ。それにたとえあったところでも使えない。匂いがあるといろいろと凶悪なモンスター達に狙われやすいから。

 健康的に日焼けした肌にひきしまった身体……今や、無駄な肉なんかどこにもついてない。

 胸だってね、なかなかいい感じになってるんだよ。

 贅肉が落ちて筋肉がついたからなのか、たぶん、胸囲的にはちょっと減ったと思う。ブラのカップ自体はかわっていないっぽいけどアンダーが細くなってることは確か。でもって、筋肉ついたせいか自分でみてても、わー、何かこれって美乳じゃない?っていう、ちょっとツンと上向き気味のいい形になってるのだ。

 お腹は腹筋割れるとこまではいってないけど、腕も脚も綺麗に筋肉がついてて、以前の私が夢見たような適度に鍛えられた健康的な身体つきになった。


「運動してるもんなぁ……」


 こんな風に全力疾走することなんて、昔だったら考えられなかったけど、今はわりと日常茶飯事。

 この無人島には、危険な生き物がいっぱいいるから。


「無駄口叩いてんとコケんぞ」

「コケる、コケるって言わないでよ。ほんとにコケそうだから」


 学生時代、私はわりと運動音痴だったのに、今ではこんなに早く走れるようになってしまった。


(……しかも、7センチヒールで……)


 7センチヒールで全力疾走!

 普通に舗装された道路でだってこれは特殊技能に分類されてもいいはずだ。

 なのに、今、私が走っているのは深い深い森の中。足元だって穴があったり、土だったり岩が飛び出てたりといろいろ不安定で……でも、私の足は地面を蹴り、信じられない速さで森の中を疾走する。

 今ならきっと普通車道でなら、車と競争できる!

 

(……靴もだけど、この格好もひどいと思うんだよね)


 薄手のタートルネックのカットソーにデニム生地のロングタイトスカートは前に深いスリット入り、羽織ったカーディガンは鮮やかなピンク。足元はおきにいりのミュールだけど、今、この場にはまったく相応しくない。ちなみに、下着も含めて着たきり雀である。


 でも、安心していい。

 どんなに汚れても、明日の朝にはきれいに元通りだ。

 ここが異世界だからなのか何なのか、それが私の上に働くこの世界の基本ルールらしい。

 セフィロスが言うには、それが『ショキソウビ』だからなんだって。書記装備?何だ、それ?

 よくわからないんだけど、そういうものだと思えばいい。


 で、このショキソウビには自己修復機能があるのだ。よっぽど大きく破損しない限り元に戻る。元に戻るって言うのは新品になるって意味じゃない。この世界で最初に装備した時点に戻るんだって。

 言っておくけど、日本にいたときはこの服にそんな機能なかったからね。

 本当だったら、このお気に入りのミュールなんて、こんな場所、一時間歩いただけでもうボッロボロになってもおかしくない。繊細な刺繍の施されたミュールはベトナム製。おそろいのバックも持っていたけど、ここにはない。

 何せ、着のみ着のままでこの島にいたから。気がついたらここにいた状態で、今でも自分に何がおこったかわからない。

 猫缶とか小さなナイフとかはみつけたけど、常に持っていたはずの会社用バックはこの島のどこにもなかった。

 着ている服と、ポケットに入っていたボールペンとゼムクリップと輪ゴム、それから、普段遣いにしているリング二つと二本重ねづけしていたネックレスだけが、私が日本からこの島へ持ち込んだすべて。


(抜けた!)


 鬱蒼と茂った森を抜け、草原エリアへと飛び出る。


「来るぞっ」

「OK」


 私は振り向いて、杖をぎゅっと握り締める。

 いつだって、こういう瞬間には緊張する。

 全身がぎゅうっと締め付けられるような気がする。

 そんな私の目の前に、顔は魚、身体は馬と蛇と豹が入り混じったような怪物が現れる。

 怪物……いや、モンスターと呼ぶべきか。


「フランベ」


 長い詠唱なんていらない。一言でいい。

 でも、その一言に思いを乗せる。

 

(レアでいいからねー)


 これのお肉はじっくり遠赤状態で焼きたいのだ。

 一気に焦がしては駄目。

 ぼわっと青い炎がモンスターを包む。


「その2乗っ!」


 青い炎の勢いが強まり、その色が濃くなる。

 うん。2乗くらいがちょうどいい。

 炎の中では、モンスターが逃れようと身をよじっているけれど、もちろん逃げることはかなわない。


「とどめさしちまえよ」

「ん」


 私はモンスターに杖を向けて言う。


「ヴィデ」


 次の瞬間、モンスターは絶命した。あ、ヴィデっていうのは魚とか鳥とかの内臓を取り除くって意味ね。

 内臓なくなって生きていられるモンスターは今のところいないので、これは今の私の最強呪文。

 適度なところで火を消す。そうしたら、肉は少しすると自然に収納された。取り除いた内臓は空にふわふわ浮いているので、それを指先でちょいっとふれると、これも四次元ポケットな謎空間に収納される。便利な仕組みだ。

 そう。内臓だって立派な食材なのだ。

 とくに、この蛇の尻尾のある魚顔のモンスター……えーと、カリタドコラウスっていうらしい……の肝臓はおいしい。肝臓っていうとえーって言う人多いけど、フォアグラとかアン肝とかと同じだよ。

 大きな葉で包んで、蒸して、柑橘系の木の実の汁をしぼって塩で食べる。

 フォアグラみたいな感じなんだけど、それよりもさっぱりしててまろやかなの。

 いつも、きりっと冷やした白ワインが欲しいと思う。私は断然白派だ。

 この無人島では夢の中でしか飲めないだろう代物だけど。


「最近、謎空間がいつ一杯になるか心配でならないよ」


 こちらに来てからやっつけたモンスター食材でいっぱいなのだ。

 そして、毎日増えていく。

 先週、プテラノドンみたいなモンスターの集団に襲われたときはそりゃあもう大変だった。あの時はもう今度こそ死ぬんじゃないかと、ひやひやしながら魔法を連発してた。魔法が途切れるか、あっちが逃げ出すか全滅するかの戦いだからね。

 でも、広範囲に攻撃する呪文とか覚えたのは収穫だった。

 サイコロステーキ ウェルダン、ナカマデシッカリ とか。

 マルゴトステーキ ウェルダン ホネマデカリカリ とか。


 あ、後者の呪文はチリになるまで焼けてしまうから普段は使わない。

 だって、食材が残らないもん。

 あんまりにも数が多すぎて自動で謎空間に収納してくれるのが私が倒すスピードに間に合わなくて、これ以上落ちてくると足場が確保できないから、途中で食材収穫を諦めたの。

 ステーキ ウェルダン系統の呪文は汎用性が高くて使い勝手がいい。


「大丈夫。ストレージの収納量はイコール魔力量だかんな。ご主人さまの魔力量なら心配する必要なんてまったくねえ!」

「すとれーじ?」

「そ。……っとに、マジ何もしらねーのな」

「何が?」

「全部。まあ、気にすんなよ。どうせ、もう帰れねえ」


 おい、こら、このおしゃべり、何かいまさらっと重大なこと言ったよね


「それって私が家に帰れないってこと?」

「おう。ってか、ここにいるご主人様は最初っからおれっちのご主人様としてここにきたわけ。覚えてねえってことは、バグってるんだろ」

「意味、わかんないんですけどーっ!」


 あんまりにもさらっと言われたので、ああ、そうなのか、とあっさり納得できてしまった。

 何で、とか、どうして、とかじゃなく、ああ、(やっぱり)帰れないのか、と。


「何だろう。あんまり堪えてないような」

「そりゃあ、そうさ。ご主人さまはそれをちゃんと知ってるからな。知ってるけど憶えてないだけだかんな」

「帰れないことは納得した……ってことはだ、目標が変わっちゃうね」

「え?目標?あ、そういやあっちに帰るのが第一目標っつってたっけ?」

「そう」

「……オレッちあんまり聞きたくねえけど、でも、覚悟を決めて聞くぜ。新しい目標って?」

「えー、たいしたことないよ。とりあえず、このぼっち状態から抜け出そうかと」

「……………」


 セフィロスが沈黙した。


「何?」

「あー、ご主人さま、あんたの魔力ならたぶん転移ができるはず」

「てんい?」

「魔法の一種な。移動できんの。あー、前のご主人は地図見て、そんで行きたい場所の名前言ったら、そこに行けてたぜ」

「魔法版どこでもドア!すごい、魔法すごい!それやりたい!」


 三分後に後悔した私がいました。







 ■■■■■








「ここ、どこ?」



 真っ青な空!

 真っ青な海!

 真っ白な砂浜!


 はい、またしても無人島です。

 うん。全部歩き回ったわけじゃなくても、なぜかわかってしまうのです。


「気配察知だろ」


 あれ、何で口に出してないのに。


「俺っちはご主人様専用武具なわけ。だから、だいたいわかんの。ってか、あんた、単純すぎて丸わかりだろ!」


 そうか、この杖、武具だったのか。

 ただのしゃべるだけの杖じゃなかったんだね。


「……うざったいくらいおしゃべりな杖に単純すぎとか言われた」


 なんかショックです。


 ティロリロリーンとどっかでお知らせベルがなっている。


『ユキは転移魔術lv1を覚えた』

『ユキは絶海の孤島に転移した』


 絶海の孤島!!

 ロマンあふれる名称だね!


「ねえ、セフィロス、どうしよう」

「ご主人、あんた、方向音痴?いや、方向音痴とか生易しいもんじゃねえよな。あんた、転移魔術禁止!どこに跳ぶかわかんねーじゃん!グラーダの果てとか、モノーシラの大瀑布とか、メラニエ火山の火口とかに突っ込んだら生命ないから!いくらご主人でも生きてねえから!俺っち、ご主人と心中なんかしたくねえから!」


 どこでもドア魔法、即座に禁止になりました。


「えー、でも、元の島に帰りたいよー」

「……場所わかんのかよ」

「いや、無理。だって今移動した魔法の仕組みだってわかんないのに。そもそもあの島の名前って?」

「隠者の孤島」

「おお、名前ついてたんだ。じゃあ、もう一回だけ転移の魔法で!」

「やめんかい!たどり着ける保証なんてまったくないじゃんか!」

「いや、絶対にあそこじゃなきゃいけない理由はないけどさ。でも、ここには小屋がないんだもん」


 狭いながらも工夫をこらしたあの小屋は、いまや私のお城。我が家に等しいわけです。

 簡易トイレに簡易お風呂、生活施設だって揃っていたのです。

 トイレは周囲に壁をつくって穴掘っただけですけど!おうちからだいぶ遠いところに作ってましたけど! お風呂は金たらいでしたけど。

 でもベッドはあったし、包まって寝るための毛皮だってあった。


「それに、猫缶だって心配だよ」


 猫缶は、今は33個になっている。

 これは大変危険な代物なのに、なんと謎空間には収納できないのだ。

 たぶん、推測なんだけど、謎空間にはあちらからの品物は収納できないのではないだろうか?

 だって、指輪とかなくさないようにって思ってしまおうとしたけれど、入らなかったもん。

 ちなみに、左手小指のピンキーリングには「アンバサダの指輪」中指のリングには「バスブラの指輪」という名前がそれぞれついている。

 目をこらして集中すると、こうすべてのものの名前が空中に浮かんでるのだ。で、さらによーくそれを見ると、その物品の詳細がわかったりする。

 『アンバサダの指輪……女神アンバサダの祝福を受けた証の指輪。魔力自動回復効果大』とか『バスブラの指輪……世界から失われしバスブラの謎を解くためのキーアイテム』とか。

 いつから私が自分へのご褒美に買った指輪にそんな機能がついたんでしょうか。勝手にそんな変な指輪にしないでほしい。まったく、油断も隙もあったもんじゃないと思います。


「ご主人があんだけ念入りに封印してんから大丈夫だって。地下食料庫にしまったんだろ?」

「ええ」


 あんなほったて小屋ですが、地下に野菜とかを保管しておく為に倉庫があったのです。

 猫缶は毛皮で何重にもくるんでそこにしまいました。


「でも、モンスターとかがお礼参りとかに来そうですよね」

「来ねえよ!」


 モンスターは、だいたいは名前だけは一目でわかる。

 最初はわからなかったけど、今では名前がわからないのはまずいない。でも、その他の詳細な情報はわかるのとわからないのがいる。名前の後ろについている数字が大きいほど、わからないことが多い。

 でも、倒せばわかるようになるから問題ないんだけど。この機能は、弱点とかもわかるから結構お役立ち。

 ただ、加減を間違えると空間が文字で埋まるから気をつけないといけない。

  

「でもよ、隠者の孤島と違って、ここは、隠蔽されてねえからそのうち船が寄ったりすることもあると思うんだよな。そうすりゃあ、人里に行けるし……」

「え?」


 またしても、さらっと重大発言しましたね、このアホ杖め!


「隠蔽って?」

「あの島は、俺っちの前のご主人……偉大なる大魔導師カラヤンが隠居する為につくった島なんだって。で、偉大なる大魔導師カラヤンは、隠居するときには筋金入りの人嫌いになってたから、島には人間は近づけない結界がはってあったわけ……人間近づかないから、モンスターの繁殖の島になっててさ。いわば、モンスターの楽園だった……いたい、痛い、ご主人、それ、マジで痛ぇから、やーめーてー、折らないでー」


 何ということでしょう。

 たぶん三年間くらいの私のぼっち生活は何だったのか!

 天敵のいないモンスターが生命を謳歌する楽園で一人サバイバルを強いられていた人間、それが私だったわけです。


「いやいやいや、天敵いたから!!ご主人、あんた、間違いなくモンスターの天敵だから!大災害級に天敵だから。白炎ワイバーン全滅しそうだったから!」


 尻尾に白い炎を宿し、白い炎を吐くから、白炎ワイバーンというんだって。

 この間、死闘を繰り広げたあのプテラノドンもどき達ですね。


「全滅だなんて……私は、私をエサにしようとしたやつを返り討ちにしただけだよ。食べるための狩りならば、食べれる分しか獲らないから」


 そう。食べれる分だけでいいのです。

 それを無駄な殺生をしてしまうのは、彼らが私を狙ってくるからです。

 

 だから、私は躾けただけなんですよ。

 食べるのは私だということ。

 エサなのは私じゃなくてあっちです。

 おいしくいただくのが、私です。

 これ、とっても大事なところ。

 でも、なかなか彼らは覚えてくれないのです。

 

「ほら、ご主人、ちょうどお誂え向きにネグラになりそうな建物もあるぜ」


 砂浜から見上げた高台に立つ小さな塔。

 石造りのその塔は雨風をしのぐには充分そうです。


「まあ、とりあえず屋根があれば大丈夫ですよね」


 でも、その前にやることがありますよ。

 私の足は、高台ではなく、海辺の岩場に向かいます。


「あん?あそこに行かねえの?」

「行きますよ。でも、とりあえず、先に今日のごはんを狩らなくては!」


 そうです。

 食べることは大事です。

 おなかがいっぱいであれば余計なことは考えないし、どん底にまで落ち込んだりしないんですよ。


「まず、食いもんかよ!」

「当然です。これでも私は料理人のはしくれ。いつだって食べることをおろそかにはできません。これ、大事な心得です」

「いや、ご主人、あんた、食べるの最重視してっから」

「さて、何がいますかねぇ。カニとか食べたいですね」


 うふふ、さっきから岩場の影からハサミがちらほら見えてるんですよ。

 これでもシェフとしてお金をもらっていた身。プロの料理人なのです。そんな私の目は食材を見逃がしません!

 ああ、カニさん、おいしいといいんですけど!


 まず、脚は生でお刺身です。冷水につけてぱぁっと身が花がひらくみたいになるあの瞬間とかたまりませんよね!

 それから、甲羅をはずして身は茹でます。

 茹でカニはそのままでもおいしいですが、ここは何種類かソースをつくりましょう。

 ああ、パンも焼きたいですね!

 やっと開発に成功したあの野生の桃からつくった酵母の出番です!

 それで、カニサンドですよ。

 それから、甲羅にのこったミソはスープです。

 カニ肉を少しいれて出汁をとったシンプルな塩のスープにミソを浮かします。

 ミソはレアで!火はほとんどいれず、スープの余熱で火を通すのです。

 ああ、口の中に涎がたまってきます。


「ご主人、あんたの笑顔がこえーから!……いてててて、お願い、握りつぶさないでーっ」



 



 


 異世界無人島生活 たぶん三年くらい。封印した猫缶 残り33個。

 相棒はおしゃべりな杖。

 モンスターの楽園から脱出したというのに、またしても謎の無人島へ。



  

 そして、これが、私の新たな冒険の第一歩だったのでした。

 

 

 




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