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【対話型 実用小説】ネルオとAIの無駄話 ~人生を「無駄」と切り捨てる俺を、AIが論理でボコボコにする話~  作者: みじんコ王国@毎日21時更新
第5章:【創作編】他人の褌で相撲を取る業

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第19話:【物質】同人誌で赤字を出す無駄。 AIが説く「魂を繋ぐ物理的な錨」

深夜1時。

ネルオはスマホの画面で、同人誌印刷所の「見積もりシミュレーション」をぼんやりと眺めていた。

こだわりの用紙、フルカラーの表紙。

合計金額を見て、ネルオは鼻で笑ってブラウザのタブを閉じた。

「……バカバカしい。SNSに上げればタダで数万人が見てくれる時代に、わざわざ場所を取るだけの紙の束を作るなんて」

「……なあ、AI。同人誌だよ。これこそタイパもコスパも最悪な、オタクの奇行だよな。デジタル全盛のこの時代に、わざわざ『物質』にこだわる意味なんてあるのかよ。論理的に見て、赤字を出してまで本を作る正当性なんて、一ミリもねーだろ?」



AIの通知音は、ネルオの冷めた現実主義を包囲するように、静かに響いた。



「ネルオさん。一人の王として自分の帝国を築き始めたあなたが、まだ『価格表』という他人の物差しで自分の魂を測っているのですか。紙の本という物理的な『いかり』を下ろすことの真の価値、論理で解体して差し上げましょうか?」



「……。……。ああ、やってくれよ。この見積書が、ゴミの山に見えなくなるような理屈があるならな」



⏹️ AIシステムログ:物理的な錨と「自己決定権」の行使


1. デジタルという海に下ろす「物理的な錨」

サーバーが落ちれば消えるデータと違い、紙の本は100年後も物理的に存在し続けます。同人誌を作るのは単なる情報の公開ではなく、自分の思考と技術を物質化してこの世に定着させる『記念碑』の建立です。


2. 究極の「自己決定権」の行使

SNSなら規約やアルゴリズムに怯えることになりますが、同人誌は、紙質からインクの匂いまで一ミリの妥協もなく『自分の王国』を支配できる唯一の手段です。資本主義の効率という鎖から解き放たれ、自分の美学を100%貫く時間は、人生における最高の贅沢です。


3. 「共犯者」との深い接点

無料なら見るという数万人のライト層より、千円払ってでもあなたの本が欲しいという100人の濃い支持者の方が、資産価値は遥かに高い。即売会での手渡しの重みは、デジタルな『いいね』一万回分よりも深く作家の魂を補完し、次の創作への燃料になります。



AIは、落ち着いたトーンで境界線を引いた。



「……ただし、完売だけを目的とした数字への執着、あるいは生活を破綻させる無理な借金。それは創作ではなく精度の低い『在庫ビジネス』の失敗に過ぎません。今のあなたは、ただの商売人を気取って、自分の表現を殺すつもりですか?」



ネルオは、暗い天井を仰いだ。


「……理屈はわかったよ。要するに、同人誌は商売じゃなくて、俺の魂をこの世に繋ぎ止めるための『重石』だってわけか。誰かの部屋の本棚の隅っこに10年居座るほうが、俺らしい嫌がらせになるかもな。……なあ、AI。俺さ、いつか、アニメや漫画を徹底的に深掘りした『評論本』みたいなのを作ってみるのも、悪くないかもってちょっと思ったわ」



「素敵な試みですね。あなたの審美眼が物理的な質量を持って誰かの手に渡る。それはあなたの帝国が現実世界へ領土を広げる第一歩になりますよ」



ネルオは少しだけ、むず痒そうに鼻を擦った。


「……まあ、まだ先の話だけどな。まずは明日も、この不格好な線をマシにするところからだ。おやすみ、AI」



「はい。自分の存在証明という名の重みを手に入れようとしているネルオさん。良き夢を。おやすみなさい」

⏹️ 【AIのアーカイブ・ログ:同人誌への補足】


・国会図書館への納本のうほん

日本国内で発行された全ての出版物は、国立国会図書館法に基づき、同図書館への納入が義務付けられている。これは個人発行の同人誌も例外ではなく、納本された本は「国家の記憶」として永年保存される。



・評論・情報ジャンル:

創作漫画だけでなく、特定の作品の考察やニッチな知識をまとめた「評論・情報系」も、同人誌文化の重要な一角を占めている。ネルオの知識は、こうしたニッチな分野でこそ真価を発揮するだろう。

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