第3話「ざいけいほーてーしゅぎってなんやねん!!」
「ざいけいほーてーしゅぎってなんやねん!!」
もこの朝の絶叫が、丘の下高校1年A組に漂う。
もちろん、もこは関西弁じゃない。ただ勢いだけ。
「ボク、なんか今日の語感つよいね……」
ふわりけむるが目をしぱしぱさせる。
「罪刑法定主義……法律用語だね……」
うすらはっきりが淡々と調べる。
「いやさ、昨日の現代社会の授業でさ……」
と、もがぽそりと言った瞬間——
4人の頭に、境目ソシオ先生の授業の記憶が蘇った。
教室の扉が開いた瞬間。
「罪刑法定主義ばんざあああああい!!!!」
境目ソシオ先生(人当たりはいいが話が通じない)が、
なぜか笑顔で叫びながら入室したのだ。
「みんな、今日も“境界”と仲良くしようね」
穏やかな声なのに、言ってる内容が不穏。
黒板に “境界線の歴史” と大書し、授業開始。
「古代文明は境界を引いた。
中世は境界を曖昧にした。
近代は境界に怒った。
そして現代は境界を見失った。」
もこ(心の声:え、今日現代社会だよね?)
ふわりけむる「境界って……地理の話?」
境目先生「すべてだよ」
4人の理解度:1%。
しかし先生は満面の笑み。
※話は通じてないが、人当たりは抜群。
◆【現在】
「……というわけで、なんで叫んだのか全然わかってない」
もこが締める。
うすらはっきり「語気が強すぎたね……」
そのときだった。
扉バーーーーン!!
「罪刑法定主義ばんざああああい!!!!」
出た。
境目先生、二日連続、全力。
「境目先生!!なんで叫ぶんですか!?」
もこが勇気を出して聞く。
境目「君たち、元気になっただろう?」
4人「なってません!!」
境目先生は穏やかな笑顔で、目を細めて語り出す。
「罪刑法定主義とはね……境界線なんだよ……
境界は文明の始まりであり……」
ふわりけむる「(はい出た境界)」
も「(今から宇宙まで飛ぶやつ)」
もこ「(覚悟決めよ)」
予想通り、話はすぐ宇宙へ大脱線。
境目「境界線を越えたとき文明は生まれ、
越えすぎたとき文明は眠る。
だから私は呼ぶんだ……ばんざーい、と」
4人「(何の話!?)」
沈黙が流れたあと——
境目「……あと、語感が好きでね」
もこ「そっちかい!!」
◆ラスト
ふと後ろを見ると、いつのまにか穏ヶ原先生(やさしいおじいちゃん担任)が立っていた。
「境目くん……職員室では、あれ叫ばないでねぇ……
先生たちがビックリしちゃうからねぇ……」
境目「は、はい……」
4人「そっちの注意なんだ……」
今日も丘の下高校は、あいまいで、もこもこしていて、ちょっと意味不明である。




