第2話「かんぎゅーってなんやねん!」
昼休み。教室の隅でプリントをのぞきこんでいた あいまいもこ が、突然両手を上げて叫んだ。
もこ
「か、かんぎゅーってなんやねん!!!」
クラス中「!?」となる。
しっかりめい
「ちょっと待って。あなた普段そんな喋り方しないでしょ!? どうしたのよ急に!」
もこ
「ご、ごめん……なんか……勢いで……。でも……これ……読めなくて……」
プリントには大きく書かれた四字熟語――
汗牛充棟
うすらはっきり
「“かんぎゅーじゅーとー”!?!? 牛十頭じゃん! 絶対牧場の授業じゃん!」
ふわりけむる
「ボク……牛が汗かいてる……アニメみたいな映像が……頭に……」
めいはため息をつき、スマホで辞書アプリを出す。
めい
「はい調べました。“汗牛充棟”は“本が多くて、運ぶ牛が汗かくくらい”って例え。牛十頭ではありません!」
もこ
「じゃあ……牛……出ない……?」
うす
「いや出るでしょ!? 汗かいてるって言ってるよ!?」
けむる
「牛……がんばりすぎじゃない……? ボク、ちょっと泣きそう……」
めい
「泣かなくていいのよ! 牛はイメージなの! イメージ!!」
それでも3人の表情は曖昧・ふわふわ・聞き間違えまくりのまま。
めいは黒板に大きく書き出す。
めい
「まとめ! “汗牛”=“牛が汗かくほど”っていうたとえ。
“充棟”=“家に積み上げるほど”本が多いこと。」
もこ
「ふむふむ……つまり……牛が……汗を……かくほど……?」
めい
「そう! でも実際に牛は運んでません!」
うす
「じゃあ牛は……幻の牛!?」
めい
「ちがう!!普通の牛!!」
けむる
「普通の牛が……幻のように働かされてる……?」
めい
「なんでそうなるのよ!!」
教室の後ろで見ていた担任の穏ヶ原先生がほほえむ。
穏ヶ原先生
「まぁ、牛さんに感謝して本を読めばいいんじゃよ」
続いて体育の轟木先生が現れ、黒板をにらむ。
轟木先生
「……“汗牛充棟”だ。覚えておけ! 牛を甘く見るなよ!」
4人
「(どっちが本気なの!?)」
こうして1年A組の“牛騒動”は、結局最後まで曖昧なまま終わっていった。
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穏ヶ原先生:担任
超優しいおじいちゃん先生
全員を見守るタイプ
“ふわっとした曖昧さ”を許すどころか推奨してしまう
職員室のお茶コーナー担当
轟木ダイゴ:副担任(体育教師)
見た目マフィアな副担任。生徒から超恐れられている。
年功序列を神レベルで重んじる
穏ヶ原先生(大先輩)には絶対に逆らわない
礼儀が厳しいのは「先輩に恥をかかせないため」
穏ヶ原先生の前だとやや柔らかくなる
生徒に対して厳しいのも「大先輩のクラスを乱すな」という信念から




