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冤罪魔王と悪役令嬢ロボの銀河騒動記  作者: ぎあまん


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49セファタタ星系脱出作戦



 キメラウィルスによるテロと、それに起因してなのか宇宙怪獣たちの大移動によって増大した危機感に背中を押され、星系脱出の船団は出発する。

 アクセンブル社の警備艦隊は、合流した企業や傭兵などの戦力が合わさった結果、わずかに数を増やしている。

 守り切るには心許ない増加数だが、戦力の充実を待っている余裕も無くなった。


「宇宙怪獣どもにこのまま追われるのであれば、ただ逃げるだけではいずれ追い付かれる。こうなったら戦場に押し付けてしまおう」


 上層部は会議の末にその結論に達し、戦場へと移動を急ぐ。

 リリスミアを乗せた星守ステラガーダー専用艦サンジョウも、静かにその様子を見守っていた。

 リリスミアとそれを護衛する星守の立場は微妙だ。

 反乱に利用された責任を取るためにこの地に残っているリリスミアは、星系から脱出する人々の手助けをすることはできても、P7反乱軍の勢力圏から自ら出ることは許されない。


 できて戦場まで共にし、領域ゲート周辺で戦っている反乱軍の後背を突くぐらいだろう。

 直接的に守ることはできない。


「くれぐれも、気を付けてくださいね」


 苦しそうな表情をホロモニターに浮かべたリリスミアに対して、イオは冷静だった。

 ここは工房艦グランダラのドックにある待機室だ。

 普段からここにいるようにしているが、出撃の時間は近いいまは、絶対にここから離れられない。


「単艦で行動することになるそっちの方が危険だと思うんだけどな?」

「それは大丈夫です。こちらは帝国最強の星守専用艦ですから」


 どれだけすごくとも数の劣勢は危機を招きやすいとは思ったが、イオはそれを口にしなかった。

 対策ができるわけでもないのに、不安にさせるわけにもいかない。

 むしろリリスミアの中にある心配を増幅させることにもなりかねない。


「お互い大変な身の上だが、まぁがんばるとしよう」


 代わりの言葉を送る。


「はい。……イオさん」

「うん?」

「また、会えますよね?」


 リリスミアのその言葉は、ここで永遠の別れになるかもしれないという予感を覚えてのものだった。

 死別を意味しているわけではない。

 銀河帝国を統べる皇帝の娘と一私企業に仕えるパイロット、本来ならそんな二人に社会的な接点などできるわけもない。

 セファタタ支社の星系からの脱出がなれば、イオはそのまま反乱地域を離れていくことになる。リリスミアは反乱の成り行きを見守った後、銀河帝国の首都星に戻ることになるだろう。

 その後の二人が再会する可能性は限りなく低い。


「まぁ、運がよければな」

「そうですね。では、幸運を祈ってます。ずっと」

「トラブル中の気分になんか執着するなよ。そんなものは気の迷いだ」

「心なんて、いつもずっと迷っていますよ」


 イオの言葉に、リリスミアは即座に答えた。


「迷っているから、飛びつくんです」

「……まぁ、それは言えているかもしれない」


 自身のフィーリーアに対する気持ちがまさしくそうだったかもしれないと思うからこそ、イオは反論できなかった。


「……そろそろ戦場だ」

「はい」

「傍受の危険があるから見つかるまで通信は封鎖だそうだ」

「はい」

「では……」

「イオさん。私、イオさんにまた会いたいです」

「……またな」


 イオが返せる言葉はそれしかなかった。

 別れ際の常套句。

 約束したようで約束していない言葉。

 そんな曖昧なものしかイオには用意できない。

 未来なんてイオにもわからない。それと戦ってはきても切り開いたとは到底言えない結果しか知らない。


「わかるものか」


 そう呟いてホロモニターを消した先には、ヴィルダのむくれた顔があった。


「なんでリリスミアといい雰囲気になってるわけ⁉︎」

「あれがいい雰囲気に見えるのかよ」

「見えた! 遠距離恋愛中の恋人みたいに見えた!」

「ここにもあるのか遠距離恋愛」


 そう思ったが、宇宙時代の遠距離恋愛は地球のそれよりも規模がでかいことになっていると気付いた。


「もう決めた。絶対決めた!」

「なにを?」


 ぷりぷり怒るヴィルダの決意が分からずにイオは尋ねる。


機械知性マシンイデア事務局があるコロニーに行って成人マインドにアップデートしてもらう! もうこれ絶対」


 機械知性の成人の判定はその処理を受けているかどうかというものになる。

 生産されたばかりの機械知性は、特別に指定されていない限りは未成年で設定されている。これを変更するのは機械知性との契約者、あるいは機械知性本人である。

 戦闘機ヴィルダの制御を主目的として誕生したヴィルダは当然未成年の状態であった。アンドロイドに載せ替えられる際にはセンダナルが失念していたため、成人へのアップデートが行われなかったという経緯がある。


「ふふふ、私が大人になったら、イオはもう断れなからね!」

「いや、断るかどうかは俺の自由意志だろう?」

「なんでそんな酷いことを言うの⁉︎」

「義務感だけではどうにもならないこともある」

「私、可愛いもん!」

「そういうとこだぞ」


 ヴィルダの相手をすることで、リリスミアとの間で醸成されていた空気は綺麗に払拭された。

 そのことに内心で感謝を示し、頭をぐりぐりとするのだが、むくれたヴィルダは「誤魔化されないし!」と怒り続ける。


 そんな時に、艦内通信が入る。


『そろそろ作戦開始です。準備をしてください』

「よし、ヴィルダ。行くぞ」

「うん!」


 さっきまでのやりとりを覚えていないがごとくに、ヴィルダは立ち上がる。

 機械知性独特の切り替えの速さには、イオも舌を巻く思いだ。


 工房艦グランダラから出撃した戦闘機ヴィルダは、戦場を横切り始めた脱出船団から離れる。

 船団の同期座標的に天井面に移動して変形、アルケミアゲイザーを構えて戦場の流れを見守った。


 後方から近づいてきた脱出船団にP7反乱軍は早期から気が付いていたが、帝国艦隊とリーンガロ星系国家艦隊を相手にしている状況では警戒するぐらいしかできることはなかった。

 だが、接近し戦場を横切り始めると徐々に流れが変わってくる。

 戦場で戦う指揮官たちは終わりのない戦いに苛立ちが募っていた。

 そんな折に戦場の横を悠々と、しかも自国から逃げ出そうとする一団がいれば苛立ちも湧く。


「ええい忌々しい、落としてしまえ!」


 船団に近い場所にいる戦艦の艦長はそう叫んだ。

 多くは艦橋にいる副官などに止められて諦めるのだが、中には止めないどころか共に頭を沸騰させている者もいて、積極的に攻撃指示を復唱する。

 戦艦の砲口が船団に向けられた……その時。


 天井側から降ってきた光条が戦艦を叩き、貫いた。

 戦闘機ヴィルダのアルケミアゲイザーによる砲撃だ。

 感応物質を利用したことによる強化は、ヴィルダが計算した撃墜のために必要なエネルギー量を正確に砲身に込めて解き放つことを可能にしている。

 短いとはいえチャージする時間をきっちりと確保できるなら、これほど確実な攻撃はない。

 思わぬ場所からの思わぬ強力な攻撃に、P7反乱軍の戦艦は連続して落とされていく。

 反乱軍が狙撃手である戦闘機ヴィルダの位置を割り当てて反撃を行うが、その時にはもう別の場所に移動し、次の攻撃準備に入っている。

 降り注ぐ必殺の光条によって戦場の一部は乱れた。

 P7反乱軍の統制が乱れたのを見て、脱出船団はさらに速度を上げて領域ゲートを目指す。

 そして敵として戦い続けた帝国艦隊とリーンガロ星系国家艦隊も、この機を逃さずに攻勢に転じた。


「脱出は成功だな」


 船団から離れすぎないように位置を変えてきたイオは、状況を確認してそう呟いた。


「だね。後は領域ゲートに入るだけ」

リーンガロ(向こう)とは連絡がついているんだよな?」

「そのはずだよ」


 すでにアルケミアゲイザーによる援護の必要はなく、戦況を眺める余裕さえもあった。


「よし、それなら帰投……」


 と言いかけたところでヴィルダが叫んだ。


「待って、重力震反応! ワープ来るって……いや、大きすぎない⁉︎」

「ヴィルダ?」

「揺れるよ!」


 その言葉の後、戦闘機ヴィルダが激しく揺れ、一瞬だが制御を失った。

 空間跳躍ワープによって起こる重力震は、ワープ対象物の消滅と再出現の間に存在する質量的存在感の蓄積が放射されている。

 多くは周辺の空間を軽く歪ませる程度の放散で済んでしまうものだ。

 それは戦艦であってもそう代わりはない。

 しかし、今回のそれはその程度では済まなかった。

 戦闘機ヴィルダだけでなく、帝国艦隊、リーンガロ星系国家艦隊、P7反乱軍の全てが重力震を受けて、艦の制御が奪われた。

 中には隣の僚艦に衝突する事態にまでなったものもある。

 突如の重力震による混乱は、ワープによって出現したそれを見ることで恐慌へと変化していく。


「なんだこれは?」


 イオも思わずそう漏らした。

 それはイオとヴィルダが知る、とある人物の顔を持っていた。


「リリスミア?」


 ヴィルダが呟く。

 そしてそれだけで、ヴィルダはこれまでに流れてきた情報を統合させ、一つの推論を弾き出す。


「リリスミアのクローン、キメラウィルス、パルミナエル星系首都星での大規模感染……」

「おい、それは……」

「これはリリスミアのクローンを取り込んだキメラウィルスってことだね」


 ヴィルダの言葉が聞こえていたわけではないだろう。

 だが、まるで時を合わせるようにキメラウィルス怪物は戦闘機ヴィルダに目を向け、そして笑った。


 見つけたと言わんばかりに、とても嬉しそうに笑ったのだった。


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