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冤罪魔王と悪役令嬢ロボの銀河騒動記  作者: ぎあまん


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34/52

34初仕事と異世界剣術



 ひと騒動を乗り越えたイオたちであったが、これで落ち着いた生活が手に入る……というものでもなかった。

 イオはバーンズ星系支社で社員登録を行なった。

 その後にあんな騒動を起こしたのだから、どうせ馘首クビになっているだろうと思っていたのだが、そんなことはなかった。

 それどころか、超光速通信で本社会長と社長にお褒めの言葉を頂き、次なる仕事の話をされてしまった。

 反乱の起きた七つの星系国家から、社員たちの避難を援護せよというものである。

 もちろん、一人でやれというものではない。バーンズ星系支社の警備艦隊と合流し行うこととなった。

 パルミナエル星系支社は例の件があってすでに撤退準備を進めていたことが功を奏し、順調にバーンズ星系に避難する段取りを整えることができた。


 イオたちはそのままP7反乱軍に所属する隣の星系、セファタタ星系に移動し、そちらの撤退を支援している別の警備艦隊を助力することとなった。

 潜次元航法《Dドライブ》で安全圏航路セーフティラインを進み、領域ゲートは封鎖されているため、ワープを使う。

 空間跳躍を終了した先はセファタタ星系となる。

 宇宙空間に大きな違いはなく、イオはそれを客室のモニターウィンドウで眺めていた。

 ここは星守ステラガーダー専用艦の中だ。

 星守No.38フォクサ・アンヘインの専用艦。

 艦名はサンジョウという。


 なぜイオたちが星守専用艦の乗っているかといえば、理由はミーシャにある。

 攫われ、反乱の旗頭としてクローン体を利用され、その汚名を返上するために自ら行動した勇猛(?)な姫として一躍有名になった第五皇女だが、星守たちに保護されてそれで終了とはならなかった。

 クローン体はいまだ確保されておらず、騒動の原因となったのも事実、その結末を見届けるべしと父である皇帝に命じられ、フォクサ・アンヘインが護衛として付くことになった。


「あ、イオさん」


 食事の時間になったので部屋を出ると、船員用の食堂にミーシャの姿があった。

 いまは帝国軍士官の服を身につけている。

 軍服には付き物の所属や経歴、資格などを示す物が何一つないため、コスプレ感が否めない。


「こちらどうぞ」

「ああ」


 護衛が周りに立っている状況だが、かまわずにこちらに呼ぶ姿にももう慣れたイオである。

 周囲の視線などかまわずに正面に座り、食事を始める。

 特に会話などを盛り上げるタイプでもないイオは基本聞き役である。

 なのでミーシャ……いや、すでに仮の名前ではなくリリスミアを名乗っている彼女が会話の主導権を持って進めていく。

 とはいえここ数日同じことの繰り返しとなっているため、それほど話題が豊富となるわけでもない。


「今日も周りの視線に負けんと皇女様とお食事なんか?」


 乱雑にハンバーガーの乗ったトレイを置いて、フォクサがイオの隣に座った。


「あんた、ほんまにすごいなぁ」


 そう言って、フォクサはニヤリと笑い、頭の狐耳を動かした。

 この宇宙に獣人はいない。

 フォクサは宇宙空間での活動能力を強化するための改造処置を受けた結果、狐耳と狐尻尾を生やした強化人間である。

 なぜ狐耳と尻尾なのかは……フォクサの趣味である。

 フォクサの言う視線とは、リリスミアを護衛する兵士たち……だけでなく食堂にいる全ての兵士たちからの視線だ。


「文句があればかかってくればいい。全員に応えてやったはずだが?」

「うちも含めてなぁ」


 と、フォクサがからから笑う。

 この戦艦にいる間、何度、訓練という名目で様々なシミュレーターに挑戦させられ、あるいは肉体言語で応じることになったが。

 もちろん、闇討ちの類はない。

 だが、大体の兵士が一度挑戦すればそれで終わっているというのに、フォクサだけは諦めない。


「ほな、飯が終わったら再戦やで」

「再戦か?」


 再戦ではないだろうと思う。

 イオとフォクサも何度も戦ったが、その全てにおいてイオは勝利している。


「あれだけやって再戦と表現するか?」

「心の狭い奴やな。それなら復讐リベンジって言い換えたってん」

「……まぁ、どうせ暇な船旅だ」

「そやそや」


 フォクサは頷くと、機嫌良くハンバーガーに齧り付く。

 イオは知らない。

 兵士たちの不機嫌の理由がリリスミアと親しいというだけでなく、フォクサの笑顔にもあるということを。


 食事が終わり、戦艦にあるトレーニングルームに移動する。

 フォクサが使うためだけに存在するこの空間にイオも入る。

 観戦するリリスミア、それと合流したヴィルダとセンダナル、ママスカヤたちは壁を隔てた向こう側にいる。

 手にしているのは訓練用の模擬刀だ。

 イオは「木刀?」と首を傾げていたが、一度使って別の素材で作られているとわかった。


「さて、やろか」

「ああ」


 いい感じに距離を離していた両者だが、瞬時に空間の中心に移動し、模擬刀を打ち合わせ鍔迫り合いの形となった。


「おや、終わらなかったか」

「何回目やと思てんねん? うちかて学習ぐらいするわ!」

「そうかい」

「っ!」


 イオからの気配を察して、フォクサが即座に飛び退く。

 その顔には冷や汗が浮かんでいた。


「それや、そのわけがわからへんの!」


 フォクサが鍔迫り合いを止めて退避したほんの刹那前、イオの体から魔力が発生し、衝撃波となって放たれた。

 軽く殴られる程度の威力にとどめてはいたが、当たればフォクサは体勢を崩し、そのまま負けていただろう。

 実際、それで何度も敗北していた。


「これは使えるんだろう? 俺の練習相手になりたいなら、せめてこれぐらい覚えろ」


 イオがいま見せたのは魔法ではなく、ただ魔力を使っただけの異世界剣術の技だ。体から自然に生まれる魔力を意思と体術を用いて攻撃手段とする。


「無茶言うな!」

「結晶刃を作れるんだ。魔力……エネルギーの生み出し方はわかっているんだろう? それなら後は、見て覚えろ!」

「ぎゃあっ!」


 遠くでイオが剣を振る。

 だが、模擬刀に纏わり付いていた魔力が衝撃波となって襲いかかる。

 フォクサはそれを勘だけで避ける。

 星守となる者は銀河帝国で主要なエネルギーとなっている魔力を自身で生み出し、感じることのできる希少な特殊体質の者たちからさらに厳選された存在である。

 そんなフォクサでさえ、魔力を見ることはできず、ただ感じるだけだ。


 目に見えない攻撃を連続され、フォクサは悲鳴をあげて逃げ回るだけとなった。


「まずは魔力が見えるようにならないと話にならないか?」

「そんなん見えるわけあらへんやろ!」

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