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冤罪魔王と悪役令嬢ロボの銀河騒動記  作者: ぎあまん


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31/52

31決着



 輸送船を繋ぎ合わせた急造の長期間航行船に工房艦グランダラをつなげて危険宙域を進んでいく。

 作戦がうまくいかなかった場合は、あるいはうまくいったとしても状況の好転が見込めない場合は、およそ十年の時間をかけて隣のバーンズ星系国家に移動する予定だった。

 だが、それほどの時間も必要とせず、船はクルーザー級の戦闘艦に包囲されてしまった。


「これは、敵を甘く見ていたかねぇ」

「防衛戦の勝率は10%ほどかと」

「仕方ない。停止命令に従うか」


 いざという時の戦闘能力のないセンダナルは、ママスカヤの助言に頷き、向こうに言われるがままに船を止めた。

 それからミーシャに謝った。


「すまないね、ミーシャ」

「いえ、ご迷惑をおかけしたのはこちらですから」


 ミーシャもこうなる覚悟はしていた。


「ただ、イオさんの足手纏いになってしまうことは……」

「それはね。まぁ、なにか一発逆転のなにかでも起きてくれないとねぇ」


 センダナルの言葉はただの希望だ。

 だが、クルーザーから派遣された兵士たちが長期間航行船に乗り込み、センダナルへと向かっていたそのとき、それは起きた。


「重力震です」


 ママスカヤがそう告げたと同時に、白い戦艦、星守ステラガーダー専用艦が姿を現し、その砲撃でクルーザーを撃沈させた。

 さらに乗り込んできた星守が兵士たちを結晶刃で切り捨て、ミーシャの前に立つ。

 狐耳を持つ強化人間ハイブリッドは結晶刃を背中に回し、彼女の前で膝を付く。


「星守No.38フォクサ・アンヘインです。先日の不始末、皇女様への無礼を自らの命でお詫びするためにこの場に参りました」


 方言も引っ込め、死を覚悟した顔でフォクサは告げると、結晶刃をミーシャに差し出した。


「どうか、我が剣を持って我が命をお断ちください。それにて、他の者たちの罪は、どうか……」

「フォクサ殿、どうかお立ちください」


 差し出された結晶刃を押し返し、ミーシャは告げる。


「敵に良いように振り回されたのは事実ですが、その罪をあなたに止めては根本的な解決に繋がりません。なによりあなたはこの帝国でも二百人しかいない貴重な人材。このようなことで失われるべきではありません。あなたの部下たちも同様です」

「ありがたき……お言葉」

「いまは事態の終息に全力を尽くしましょう。戦場に戻り、イオを救ってください。あの方もまた、この銀河が失ってはならない可能性に満ちています」

「そちらはご心配なく、すでに姉上君のカリスティア様以下、五人の戦艦が向かっております」

「へ?」


 その名を聞き、ミーシャの皇女の顔が崩れた。

 カリスティアとは、つまみ食いを銀河中にバラされた第三皇女の名前である。


「……めちゃ怒ってる?」

「めちゃ怒ってます」

「あうあうあう」


 ミーシャが姉に怒られる未来に恐怖していたそのとき……。


 白い戦艦の登場で戦場は完全に停止した。

 ダンロイド王子率いるパルミナエル星系国家側の軍はすでに満身創痍に近い状態である。

 その上で帝国軍の所有戦艦の中でも最強と目される星守専用艦が五隻並んでいる。

 その戦艦の攻撃力だけでも十分であり、さらにその船には宇宙の蹂躙者とも呼ばれる星守がいるのだ。

 逆らえば全滅以外の道はない。


「イオ、星守専用艦から通信が求められてるけど?」

「繋いでくれ」


 ホロモニターが浮かび、その中に相手の顔が浮かんだ。

 ミーシャと同じアルビノであり、その容貌もミーシャに似ているように見えた。

 彼女を勇ましく、凛々しくすればこういう顔になるのかもしれない。


『貴様が我が妹をたすけた男か?』

「そうだ。それで、あなたは姉、ということになるのか?」

『そうだ。第三皇女カリスティア・ファーラ・ダグワーレンである』

「どうも。イオルード・ティンバーラインだ」

『ではイオルード。あの策を考えたのは貴様か?』


 策と言われたイオはあの動画のことが頭に浮かんだ。


「遠くで身分を証明する手段としては、上出来だっただろう?」

『おかげで私の好物のチョコパイが売り切れになったんだぞ!』


 そういえば第三皇女のネタはそれだったかと、イオは思い出した。


『事前に買い溜めておいたものは百ケースしかないというのに……』

「行方不明の妹の居場所がチョコパイで判明したんだ。安い代償だと思え」


 それだけあれば市場に補充されるまで十分保つだろうという言葉はとりあえず飲み込んだものの、作戦を考えた者としては言っておかなければならないと判断した。


『貴様。私を前にその言い草。まったくいい根性だな!』

「どうも」

『さて、この場はこれで終いとしたいのだが、とりあえず妹を乗せた船がここに来るまでは……』

「ああ、皇女殿、俺とあちらの戦いはまだ一つ決着していないことがあるんだが?」

『なんだ?』

「うちの戦闘機ヴィルダと王子専用機との決着だ」

『……最後の動画の件か? ふむ』


 カリスティアもあの動画を見ていたようだ。


『よかろう! どうせこの戦いはまだ続く。たかが地方の王子如きの身柄、どうとでもなる!』


 カリスティアはそう言うと、彼女自身が交渉役となり話が進んでいった。

 残っていた戦力は全て投降扱いとして帝国軍が引き受ける。

 ただし、ダンロイド王子はこの一騎打ちに勝利すれば身柄を即時解放する。


 この条件でイオとの一騎打ちの場が誕生した。


『イオルード! それがお前の名前か!』


 ダンロイドの乗ってきた機体は、金色に塗装された、非常に趣味の悪いものだった。

 イオとしては、その色を使いこなせるのは超の付くパイロット技術の持ち主だけだが、ダンロイドははたしてどうなのか。


「やあ、王子。どうだい? この場に引きずり出された気分は?」

『貴様さえ、いなければ』

「たった一人でどうこうなるような計画なら、そもそもどこかに破綻があるんだよ」

『黙れ!』

『じゃれあいはそれぐらいで満足しておけ、こちらも暇ではない。では……始めよ!』


 カリスティアの宣言と共に、ダンロイドの機体が突進してきた。

 放たれた重レーザー砲を避ける。


『殺す!』


 ダンロイドは殺意高く追いかけて、ひたすら背後を取ろうとする。

 その動き自体は間違っていないのだが……。


「まぁ、この程度か」

「そうだね」


 機体の直進速度、旋回性能……機動性、そして取り付けられた兵装の破壊力。

 全てがイオにとって、そしてヴィルダにとっても驚くようなものではなかった。

 試しにこちらのパルスレーザーを当ててみれば、簡単にシールドが破れてしまった。威力を落としていなければ、あの時点で撃破してしまっていた。

 パイロットの技術は艦載機を操っていた者たちよりも少し劣る程度だ。素養があるのかもしれないが、絶対的な搭乗時間の不足が感じられる。


 そして機体の性能もまた同様だ。

 普通のものよりも高性能なようだが、それは結局、かけられた予算が違うという以上の理由は見出せないものだった。


「悪い女に騙されたな王子」

『なにを!』

「いや、そもそも、女を見る目がないんだよ」

『貴様! 人工知能が!』

「相棒になる機械知性をそんな風にしか見れないところも、大減点!」

「じゃあ、終わりだ」


 王子に合わせて落としていた速度を上げる。


『なっ! くっ、うおおおお!』


 瞬く間に戦闘機ヴィルダの動きを追いきれずに目を回したダンロイドは、やたらめったらに全ての武器を撃ちまくる。

 狙いも定まっていないレーザーやミサイルをかわし、戦闘機ヴィルダは肉薄すると人型に変形、結晶刃を展開する。

 その姿を、ダンロイドは見ることができたのか……。


『あっ……』


 最後にそう溢した呟きがオープンチャンネルに響き、機体は半ばから二つに裂けた。


「皇女様、まだ生きているはずだから確保してくれ」

『了解した。ご苦労。あんなのでも取れる情報あるだろう』


 爆発しない最適解の箇所をヴィルダに探してもらい、イオはその場所を正確に斬ってみせた。


「さて……」


 二つに分かれて流れていくダンロイドの機体から目を離し、イオは別の場所を見た。

 そこには白い戦艦に守られてやってくる、工房艦の姿がある。

 必要無くなった長期間航行船は切り離してきたようだ。


「帰るか」

「うん!」


 ヴィルダの返事を聞き、イオは工房艦へと向かった。


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