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冤罪魔王と悪役令嬢ロボの銀河騒動記  作者: ぎあまん


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20/21

20シークレットアンケート



 シミュレーターは脳波を利用した没入型のものが使われている。

 HMDを装着し、自室のリクライニングチェアで楽にしていれば、夢の中で通常戦闘機のコックピットに入っている気分になる。

 感覚としては制御された明晰夢というところだろう。

 いま学習しているのは軍用戦闘機ライセンスだ。

 帝国ライセンス統括庁に提出された通常企画の操縦席が目の前にあり、実際に動かしている気になれる。

 最終的なライセンス取得には実機でのテストが必要となるが、練習するだけならこれで十分だ。


「なにか変だな」


 たまにはヴィルダに顔を見せてやれとセンダナルに言われたイオは、コックピットの中でシミュレーターを使っていた。

 コックピットの座席は自室の椅子よりもはるかに座り心地がいいので、普段よりもシミュレーターに集中できたような気がする。

 だが、一時間のシミュレーターを終えた後に頭の中に違和感が残った。


 没入型のシミュレーターは脳の一部を端末のように利用するので独特の疲労感がある。

 それが今日はいつもよりも重い、というかいつもとは違う部分に疲れが残っているような感覚があった。


「気のせいじゃない? ほら、いつもより集中していたとか? だってシミュレーターの使用時間が一時間五分だし」

「そうか?」


 そうかもしれないと思いつつも、癖として自身の体の異常を魔法で調べた上でなにも見つからなかったので考えるのをやめた。

 その後はヴィルダと少し話をしたりして過ごした。


 工房艦での旅も一週間を過ぎると共通の時間潰しも発生する。


「え? ちょっと待ってください。なんでそんなところにいるんですか⁉︎」

「ははははは、油断したね姫様。ほぐっ!」

「油断したのはそちらだ博士」

「イオ君⁉︎ ヴィルダのところに行ったのでは?」

「ヴィルダは通信不可ゾーンに置いてきた」

「なんということを⁉︎」


 いまはFPSゲームで対戦をしている。パートナーは対戦毎にランダムで決まる仕様となっており、いまはイオとミーシャ、ヴィルダとセンダナルという組み合わせだった。


「どおりでヴィルダからの連絡がないと思っていたけど。ええ、ヴィルダを倒すとか、どういう反射神経だい?」

「反射神経の問題じゃないな」


 機械知性のヴィルダはゲームにおいて常に難易度ベリーハードを超えるナイトメアのような強さを誇っている。だが、動きにはある程度の法則性が存在するので、それを先読みすれば勝てないこともない。

 最初の三日ほどはヴィルダのいる方が勝率100%だったが、いまはイオが敵側に回っていれば70%ほどにまで勝率を落とすことができている。


「いや、まず反射神経がないと話にならないんだけどね」

「うわーん、イオに暗いところで捨てられた〜」


 戦闘が終わり、通信が復帰したヴィルダがゲームのキャラに泣き真似をさせる。


「次は協力戦にしましょう!」

「いいね。今日こそ第七ウェーブを超えよう」

「物理の限界を超えるようなものだけどね、あれ」

「いやあ、あの絶望感はなかなかだよね。シミュレーター越しでできるように改造しようか?」

「絶対嫌です!」


 協力戦にある複数の内容の一つ、無限に発生するゾンビの群れにどれだけ耐えられるかというものに挑戦しているのだが、ヴィルダがいても第七ウェーブ……七度目のゾンビの大群で物資と手数の限界がやってくるのだ。

 ホロモニター越しだからいいものの、没入型のシミュレーターでこんなゲームをしていたらトラウマになると、ミーシャは断固拒否した。

 結局、今回も第七ウェーブで全滅となった。


 就寝時間となり、イオは自室に戻って眠る。

 今日は珍しく昔の夢を見た。

 ここ最近、楽しく穏やかな時間を過ごしていたせいかもしれない。

 見たのは今のこの肉体……イオルードの体に招魂された時のことだ。


 あの世界はゴーレムを戦争の道具として使っていなかった。

 まだ魔法の運用が未熟だった頃は質量そのものを武器に、前を歩かせているだけでも役に立ったが、魔法を解除する解呪系技術の進化とともに、その姿は戦場から消えた。


 そんなゴーレムを兵器として再び戦場に戻すなんてことを言えば……。


「君はバカなのかな?」


 こんなことを言われても仕方がないのかもしれない。


「俺の体に使われている技術を使えばいいんじゃないのか?」


 イオの肉体は、魔導技術の結晶だ。

 つまりは魔法そのものと言ってもいい。

 だがいまのところ、解呪を受けて消滅の危機に陥ったことはない。


「君の体に使っている技術がどれだけのものかわかっているのか? 同じことをしようと思えばゴーレム一体にどれだけの予算をかけることになるのか、それに肉体を消されなくなったとしても、思考部分をどうする? 結局、肉体に適応した()を召喚するという荒技を使うしかなかったぐらいなんだよ? 君の召喚が成功しなかったら、その肉体は無駄にならなかったが、超人兵士計画そのものは中止になったぐらいだよ」

「俺に使った技術の簡易版やら劣化版やらを考えればいいだろう? 重要なのは思考部分や間接系……骨を守ることだ。解呪は表面装甲で防ぐ方法を考えたっていい」


 そんな風にイオの考えを聞いてもらい、技術的部分での俺の不足を補ってくれた、錬金術師にしてイオの魂を召喚させた責任者であり……王族であった女性が夢に出てきた。

 ゴーレム兵団の完成は彼女なしではあり得なかった。

 そして、彼女はイオ一人で運用できるように、錬金術と完成したゴーレム制作のノウハウの全てを叩き込んだ。


 翌日の目覚めはあまり気分のいいものではなかった。

 久しぶりに思い出した感情に苦い気分になり、発散させるためにその日はトレーニングに費やすことにした。


「こんなにも私の世界を愛してくれる君を、無碍にはしたくないからね」


 そう言って笑う彼女の顔はしばらく頭から消えなかった。

 しかし、そんな鬱々とした気分を表に出しっぱなしにするようなことはしない。

 その日以後はいつも通りにパイロットのライセンス試験に向けて勉強やシミュレーターを繰り返した。


 そうしていると、ついにアクセンブル・バーンズ星系支社のある星系首都コロニーに到着した。

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