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冤罪魔王と悪役令嬢ロボの銀河騒動記  作者: ぎあまん


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19/21

19訓練



 工房艦グランダラはバーンズ星系にあるアクセンブル支社を目指すことになった。

 ミーシャの頼るものが皇帝……帝国正規軍しかないのであるのならば、それが到着するかこちらから向かうのは時間がかかる。

 それならアクセンブル社に援助を求める方が早い、という結論になったためだ。

 センダナルの話では支社にも警備艦隊は存在する。


 宇宙空間において助け合いの精神は重要となるが、それ以前に自助努力・自己防衛……自分の身は自分で守りましょうの精神が根本にある。

 それは個人においても、組織において同様だ。

 帝国法は存在するが広大な版図の全ての問題を解決させる完璧なものではなく、また膨大な人口と膨大な面積という二つの要素が司法的解決に多大な負荷をかける。

 時は金なりという考えはこの宇宙にも存在し、司法解決を待つ暇があれば自前の暴力で解決した方が早いという思考の下、多くの組織は自前の軍隊を用意することになる。


 アクセンブル社は銀河帝国において大企業に列する実力を持つ。つまりはそれ相応の武力を持っているということであり、支社に配備された警護艦隊も星系国家に負けない規模を持つ。


 それに合わせてイオの登録関係の話になった。

 いまのままでも自由民という立場になるが、それは同時になんの組織的背景もない身分となる。

 そうなるぐらいなら武力担当のギルド……傭兵ギルドに所属した方がいい。

 しかし、それだとヴィルダの修理などに際して面倒になる。

 その辺りの煩雑さを飛び越える方法はあるにはあるが、しかしそれはイオがどうしても傭兵でいたいと意志を固めていればの話だ。

 結果として、アクセンブル社に所属することが最も効率的であるという結論になった。

 組織に対して懐疑的になってしまうイオだが、ヴィルダという相棒のことを考えれば妥協も必要だろうと、とりあえず納得する。

 どうしてもダメなら逃げ出してしまえばいい。

 宇宙は広いのだから。


 ともあれ、アクセンブル社の社員になる方針が決まった。

 それならばアクセンブル社としての立場はパイロットということになる。

 ヴィルダを操縦するだけならいまのままでも問題ないのだが、資格がないのは給与的に不利になるし、他に移る場合でも損にはならないということで、パイロットに必要な資格を獲得するための勉強を移動中にすることとなった。

 移動時間の全てを資格取得のために費やし、知識の詰め込みとシミュレーターでの操縦時間を稼ぐことに費やしていく。


 そんなことをしていれば不思議な物を見る目をするのはミーシャだ。

 パイロットの資格を持っていないのにヴィルダを自由自在に動かし、さらに他の者にはない超常の技術を操っている。

 どういうことなのかという好奇心の目が、イオの勉強時間を阻害する。


 つまり、四六時中、じーっと見てくる。

 ミーシャもまた、暇なのだ。


「イオさん、後で教えてくれるという話ではなかったですか?」


 食堂で休憩しているとミーシャがそんなことを言った。


「後でとは言ったが、教えるとは言っていない」

「それ、ずるくないですか?」


 自分は全てを話したのにと頬を膨らませるミーシャに対し、イオをは素知らぬ顔をした。


「守っているんだから、ずるくはない」

「ええ!」


 信じられないという顔をされたが、事実なのだから仕方ない。

 元から話すつもりはなかった。

 ミーシャをたすけるつもりはあるが、だからこそ、銀河の権力者一族に全てを話すつもりはない。

 この辺りはイオの権力者アレルギーが関係していた。


「私、とても寂しいのですけど?」

「君たちだけが抱えている秘密を一般人は共有できない。それを寂しいと言われて、全て話してしまうのか?」

「その言い方はずるいです」

「ずるかろうと、全てを共有できないもどかしさは知っているのだろう?」

「むう」


 別にミーシャが嫌いなわけではない。

 だが、全てを話す必要があるのかどうかはまた別の問題だ。


「そんなに暇なら、一緒に勉強しよう」

「私、パイロットになるつもりはありませんけど」

「覚えていれば、今度は一人で戦闘機を操って脱出できるようになる」

「あら、それはちょっと素敵です」


 素敵かどうかはよくわからなかったが、ミーシャも時間潰しを見つけることができたようだ。


「むむむ」


 それが面白くないのはヴィルダだ。


「イオが会いに来なーい!」


 普通のパイロットの資格勉強では、ヴィルダはなんの役にも立たない。

 なにしろ操縦系からなにから特別性なので、汎用的なパイロット資格にはまったく対応していないからだ。


「まぁ、こんなものを王子に押し付けようとした私が言うことではないかもしれないが」


 イオの代わりに話し相手になっているセンダナルが苦笑のスタンプをヴィルダに送る。

 二人の会話は音声的なやりとりと文字チャット的なやりとりが並行して行われている。

 ちなみに、本当に王子に引き渡すことになっていた場合、ヴィルダの機械知性は陽電子頭脳に置き換え、操縦系も向こうのリクエスト次第では通常のものに変更される予定だった。

 それでもカタログスペック的に、向こうがこちらに文句をつけたような酷いものにはならなかったとセンダナルは思っている。

 変形機構という余計なものがありながら、機動性能と火力において一般機を凌駕するものを作ったという自負があり、操縦性も変形機構から目を逸らせば悪くはない。後者はテストパイロットからの評なので間違いないはずだ。


「君たちほどのベストカップルはそうはいないから、心配する必要はないよ」

「でもー、いまのままだと普段のイオと一緒にいられないしー」

「まぁねえ」


 おやおや、もう独占欲が生まれているとセンダナルは内心で思いながら頷く。


「でもでもー、私の見ていないところで浮気とかするかもしれないしー」

「ううん」


 初めて彼氏ができた思春期女子のようなウザさを感じながら、おざなりな相槌で聞き流す。センダナルは自分たちがやらかしたことに関して、まったく罪悪感を覚えていなかった。

 逆に、ヴィルダを動かす霊子頭脳の可能性について興味深く思う限りだ。

 そして、センダナルの中で、新しい案が浮かんでいた。


「ふうむ。いやしかし、それだと……」

「博士?」

「ちょっと待ちなさい……いや、君に計算してもらった方が早いか?」

「え? なになに?」

「機体の強度を再計算しないといけないんだ。変形機構のせいでいろいろと面倒でねぇ」


 と、アイデアを送りつける。


「あっ! なにこれ! すごい! これならイオを浮気から守れる!」

「君、束縛系ヤンデレとかにでもなる気かい?」

「ふふふー。イオの視界を支配するためにも、いろいろと好みを調べておかないと」

「ああ、それならいい方法があるよ」

「ほほう。なにかななにかな?」

「彼の生い立ちには私も興味があるからねぇ」


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