1-4 輪廻
朝、キウイの酸味とヨーグルトの柔らかさ、豆乳のまろやかさが喉を通る。
いつの間にか、この朝の儀式は私の一部になった。
綺麗に整えられた机の上で食べる朝食は、いつだって心地いい。
カーテンを開けると、朝日が部屋に差し込む…。
風が気持ちいい。
また私の朝がやってきた。
メイクを軽く整え、衣服に袖を通して外に出る。
頬に撫でる風を感じながら、足取りは軽やかだ。
移動する道すがら、今日も色んな配信を物色する。
「朝のメンツは変わり映えしないなぁ…」
「あ、ピコリールで伸びてた人だ。」
この時間も自分にとって大事な時間になっていた。
分析すれば、自分の行動指針にもなるから。
最近はCMの撮影の仕事が舞い込むようになった。
なんでこんな私にとは思うけど、これが結構評判で、
今度はコスメもやってみませんかなどと言われているが、それはちょっと検討中。
今日は、キウイの歌を歌って、踊って、その後事務所に行く。
ダンスは思ったよりもテンポが速く、難しい。
今の身体で動く私は、まだどこかぎこちない。
撮影を終えて事務所に行く。
配信の相談に乗るため、若い子たちにノウハウを伝えることに時間を使っている。
かつて自分が聞きたかった言葉を知っているからか、評判は上々だ。
今日も誰かに良い影響を与えられたらいいなと思いながら、紳士に耳を傾ける。
それは、もう自分ではできないことを、人に伝えることで、私自身の学びにもなっている。
後輩へのアドバイスを終え、家に帰る。
そこには、届いたばかりの荷物が山積みになっていた。
コスメ、キウイ、その他もろもろ…。
荷物をある程度開け、ソファに体を預けると、あの日のことを思い出す。
そう、私はあの日を境にヴァーチャル配信をやめることになった。
もちろん、結構必死にもがいたよ?
配信を分析して、自分の声のトーンの修正、動きの確認。
どんなことを、どんなふうな切り口で語って、どんな勢いだったか。
私は完璧と言って差し支えないほど分析しなおして、完璧な私をこなした。
でも、何度配信しても、
――あの日の私は、もうどこにもいなかった。
私は気づかないうちに、すっかり落ち着いた人間になっていたのかもしれない。
引退の時は、信じられないくらい炎上して、
またハッキングされるかと思ったけど、事務所のセキュリティが見直されていて、そんなことは起きなかった。
あいつって結局…。
ふとあの男の事を考える。
あの男は結局なんだったんだろう、私になにか影響を与えたかな?
確かに、あの頃は、部屋も荒れていたし、視野も狭くなっていたと思う。
それで結局、整形なんかして、余計に感情がぐちゃぐちゃになって…。
本当に、バカだったなぁ。
でも、色々あったけど、私は今の私が結構好きだ。
というか、整形する前の自分も、普通に好きだったと思う。
晒されて、怖い目にあって、とんでもない言葉を浴びせられたけど、
あの私も別に、嫌いじゃなかった。
私は喧騒の中で、どこか幸せを見失っていたのかもしれない。
もっと、早く気づけていればな
ごめんね…。私。
あいつは私にそういう考えをくれる、“きっかけ”を与えてくれたにすぎないのかもしれない。
そんなことを考えていると、不意に、アラームが鳴った。
「もうこんな時間か」
試供品のリップを塗り、私は実写の配信をスタートする。
画面の向こうには、あの日のファンもいてくれて、それなりに盛り上がっている。
落ち着てる私を好きだと言ってくれている人が沢山いて、
私は今、十分に幸せを感じている。




