表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/61

Chapter8【修道女とロボット】

突如、黒い影が空を切った。


背中の巨大なジェットエンジンが轟音ごうおんを立て、砂煙と粉塵を巻き上げながら、漆黒のロボットが突進してきた。


鋭い剣を振りかざし――


ガキィィン!


リヴァイアが咄嗟に受け止めた。

あまりの衝撃に、リヴァイアの足は大地にめり込み、足首まで地面に埋まる。


(なにこれ……やば……)


突然の事態に、魔王ハル子は頭を整理するので精一杯だった。

しかし、ここは攻撃に集中しなければならない。ハル子はそう思うと


「スキル・ソラリス発動!」


ハル子が叫ぶと、薄く黒いオーラがその身を包み、魔王必殺の剣技が発動する。

剣がすさまじい勢いで、黒きロボットに襲い掛かった!


ガキン、ガキン、ガキンッ!


しかし、ロボットはその巨体に似合わぬ俊敏な動きで、すべての剣撃をいなしていく。


「魔王様……こやつ、全力で挑まねばならぬ相手です」


リヴァイアが厳しい表情で言う。


「魔王様、私が電撃魔法『スパーク』の魔法を練り上げます! 3分間、奴の動きを封じてください!」


アンドラスもすかさず提案した。


「よし、リヴァイア! 最大火力で押し潰すぞ!」


魔王ハル子の号令が飛ぶ。


「――バハムート壱式!!」


リヴァイアは咆哮を上げると、黒煙に包まれ、ハル子との一戦で見せた

人型の竜へと変化したが、違ったのは大きく翼を持った姿へと変身した。


(ほほう・・壱式が空戦用、弐式は陸戦用か・・・でも全能力6倍で3分はありがたい!)

とハル子は考える間もなく


「行くぞ!」


剣を構えた魔王ハル子と、巨大な竜の形態となったリヴァイアが、黒いロボットに

連続で斬撃を叩き込んでいく。


ガキンガキンガキンガキンガキン――!


剣戟けんげき爪撃そうげきが火花を散らし、辺りには爆音と金属音がこだました。

互いに一歩も譲らぬ凄絶な攻防が続き、ハル子もリヴァイアも押し切れない。


(くそっ……タフすぎる……!)


ハル子は肩で息をしながら、ロボットの底知れぬ耐久力に舌を巻いた。


一方、ロボットには疲労など微塵みじんもない。

背中のジェットパックから火柱が噴き上がり、上空へ跳び上がった。


そして、距離を取ると――


ズガン! ズガン!


二発のミサイルが背中から発射され、リヴァイアに向かって迫る!


すかさず

「ファイアーボール!」

リヴァイアが魔法を唱え


火球を放った。

そして、飛来するミサイルの一発を空中で爆破させた――


ドガーン・・・と鳴り響き、粉塵がまきあがる


しかし!

爆煙の中から、もう一発のミサイルが姿を現す!


「しまった!」


ドカン!!!


直撃――!


リヴァイアは交差した腕で必死に防御したが、地面ごと吹き飛ばされ、膝をついた。


「リヴァイア、大丈夫かっ!」


駆け寄るハル子に、リヴァイアは苦悶の表情で答えた。


「……ええ、なんとか……」


だが、時間は迫っていた。

アンドラスのスパーク発動まで、あとわずか――ここで畳みかけねばならない。


これを食らえ

「オメガアタック!」


魔王ハル子が雄叫びを上げる。


真紅のオーラが爆発的に膨れ上がり、周囲の大地が震える。

空気すら震わせるほどの異様な圧力――


(全力だ……!)


魔王の全能力を10倍に引き上げる究極奥義――

ただし、その代償として、発動時間はわずか30秒。


ハル子は赤い光を纏い、凄まじい速度と破壊力で黒きロボットに斬りかかった。


ドガッ、ガキン、バキィ!


防戦一方となったロボットは、とうとう吹き飛ばされ、地面に叩きつけられる!


その瞬間――


「電撃稲妻魔法!スパーク!!!」


アンドラスの放った電撃魔法が、青白い雷となってロボットに直撃!


バリバリバリバリバリ――ッ!!!


「ぐ……ぐ……ぐ……」


ロボットは機械音を漏らしながら、痙攣するように動きを止めた。


両膝をつき、腕をつき、ついには沈黙する。


「やったか……」


魔王ハル子は、剣を構えたまま呟いた。


だが――


ギュイイイイィィン……!


機械の唸りとともに、ロボットは再び立ち上がった。


「効いてない……っ!」


アンドラスが蒼白になり、肩を落とす。


黒きロボットは剣を再び構え、襲いかかろうとしたその時――


プシューッ!


と音を立て、突然、ロボットの腹部が開いた。


そして、中から現れたのは――

150センチほどの小柄な少女だった。


その少女は修道服に身を包み、純白の髪を頭巾の隙間からのぞかせる。


「あの……これ以上、戦わないで……」


か細い声が、戦場に響いた。


「貴様は誰だ!」


リヴァイアが剣を向け問いただす。


「あの……話さないといけないことが……」


少女――そう告げた。


ハル子は剣を下ろし、リヴァイアやアンドラスに目配せして合図した。


「……とりあえず、話を聞こう」


**


こうして、一行は地面に腰を下ろし、話を聞くことになった――







事情を聴くために、魔王ハル子、アンドラス、リヴァイア、そして修道服姿の少女は、荒れた草地に腰を下ろして向き合った。夕暮れの光が、彼らの影を長く引き伸ばしている。


少女は両手を膝の上に揃え、震える声で口を開いた。


「私は、ガーラ・ハートと申します。ログエル王国のキャドバリー村から参りました……。村では、修道女をしております」


挿絵(By みてみん)


ガーラはぎゅっと修道服の裾を握りしめると、堰を切ったように話し始めた。


「先日、村が聖ルルイエ帝国に襲撃されたのです。家も教会も破壊され、村人たちは逃げ惑う者、抵抗して戦う者と入り乱れ……村はあっという間に火の海と化しました‥‥」


ガーラは少し涙目になりながら続ける…


「私は教会にいたのですが、そこから先の記憶がありません。おそらく気を失っていたのでしょう……気がついたら、この黒い人型の何かの、お腹の中にいました……」


ガーラは、背後に立つ黒いロボットをおそるおそる振り返りながら言った。


リヴァイアが腕を組み、不機嫌そうに首を傾げる。


「で、そこの黒の無機質な素材の人型のなにかは、お主とは面識があったのか?」


ガーラは小さく首を振り、申し訳なさそうに答えた。


「いえ、面識はありません……」


彼女はさらに続ける。


「ですが、帝国は、このような緑色をした人型のなにか……を数百体も連れてきて襲いかかってきたのです……!」


その言葉に、ハル子がぽつりとつぶやいた。


「緑色の『ロボット』か……ザクかな……」


リヴァイアが怪訝けげんな顔をしてハル子を見る。


「この『人型のなにか』は、『ロボット』と申されるのか?」


(ええい、人型のなにかじゃややこしい、『ロボット』で統一しよう)


心の中でそう思いながら、ハル子はきっぱりと言った。


「ああ、そう呼ぶ」


「で、なぜその『ロボット』が聖ルルイエ帝国のものだとわかった?」


とリヴァイアが尋ねると、ガーラは胸元を押さえるようにして答えた。


「胸に帝国の紋章が刻まれていたからです……。けれど、この私を運んだ黒いロボットには、紋章がありませんでした。それが、なぜなのかは……」


言葉を濁すガーラ。

その時だった。背後に控えていた黒いロボットが、突然、甲高い機械音を混じえた声で口を開いた。


「私は特別仕様である。そして我があるじ、ガーラ様を救い出したのだ」


突然の発言に、場が凍りつく。


(えっ……!?しゃべった、このロボ!?)


驚きで目を見開くハル子。


そんな中、冷静にアンドラスが問いかけた。


「ガーラ殿は、生まれ持ってその髪の色なのですか?」


ガーラは恥ずかしそうに頬を赤らめ、指先で髪を弄びながら答えた。


「はい、そうです。村では1000年に一人と言われて、なにかと……チヤホヤされていました……」


ハル子が不思議そうに眉をひそめる。


「それがどうしたんだ?」


アンドラスは、いつもの丁寧な口調で説明を始めた。


「はい、魔王様もご存知かと存じますが、人族は髪が白に近づくほど魔力が高い傾向にあります。多くは茶髪ブルネットで魔力はそこそこ・・・農民や商人という立場にあります。そして黒髪の者も少なくはなく、彼らは魔法を使えない者ら…なのです。」


さらにアンドラスは続ける。


「聖ルルイエ帝国では、特に黒髪の者は迫害され、奴隷や肉体労働を主にとし、貧民街での生活を余儀なくされているのです…」


(なるほど…神の色で『魔力値』が分かるのか…)とハル子はこの世界のことわりに触れた。


「最後は、人口の一割にも満たない金髪ブロンドの者たちです。優れた魔力を有しており、帝国の中枢部や帝国軍幹部などで未来を約束された者たちになります。さらに高魔力保持者‥‥純白の髪を持つ者。その者らは、聖ルルイエ帝国の皇帝の側近にして頂点に君臨する四聖賢――ミカエル、ラファエル、ウリエル、サマエル――しかしながら皆、種族は人族ではなく、天使族なのです」


アンドラスは一呼吸おき、手を顎にかざす。


「しかし…純粋な人族で純白の者は……私も初めて見ました」


(あー本当、アンドラスは分かりやすい、助かるわーこのキャラ……)


心の中でハル子は、思わずしみじみと頷いた。


ひと通り事情を聞き終え、ハル子は改めて口を開いた。


「うむ、ひとまず誤解は解けたな。さて、そこの我が忠臣が封印された氷石だが、そなたのような高い魔力の者にも見てもらいたい‥‥どうだ?」


とハル子は氷石の方を指し示す。


ガーラは頷き、黒いロボットと共に、巨大な氷石に近づいた。

氷の中には、かすかに封じられた何者かの姿が見える。

氷の表面には複雑な紋様と、見たこともない文字が刻まれていた。


ガーラが氷に手をかざし、そっとつぶやく。


「これは…古代文字……ですわ」


アンドラスがそれを聞き、眉を寄せる。


「古代の封印術ですか……どうりで我らには解けぬはずです」


ハル子が真剣な面持ちで問いかける。


「どうにかならないか?」


ガーラは考え込み、そしておずおずと提案した。


「あの……ログエル王国には、王と十二人の騎士が仕えております。その中に大魔導士マーリン様が……。彼は魔族と人の間に生まれ、1000年以上生きていると言われております。そして、あらゆる古代魔術に通じているとも聞きます。その方なら、あるいは……」


アンドラスはすぐに片膝をつき、頭を垂れる。


「魔王様、これは好機かと存じます。今、窮地にあるログエル王国を我が魔王軍が救えば、その恩義により、大魔導士マーリン殿も力を貸してくださることでしょう」


(さっすがアンドラス……よくできた執事だ……仮面はきもいけど)


心の中で苦笑しながら、ハル子は堂々と言い放った。


「うむ、今我もそう思っていたところだ。ガーラよ、これよりそちの国を救う。そして、我らと共に故郷へ戻るがよい。何せ、見も知らぬ黒いロボットに拉致られた身だ、心細かろう」


ハル子の言葉に、ガーラは目をうるませながら立ち上がった。


「はい!」


彼女の目には、希望の光が宿っていた。

一方、黒いロボットは、気まずそうに斜め下を向き、無言でその場に立ち尽くしていた。


(大魔導士マーリン…これって松中副部長が話していた、アーサー王伝説に出てくる人だよね~)

などと心の中で思いつつ、必死に気のせいだと言い聞かせるハル子であった。


こうして、魔王ハル子一行は新たな目的を胸に、この地を後にするのであった──。


※この作品は20話目あたりから急展開していくので、頑張って読んで頂けたら幸いです!


リアクションで気持ちを伝えようで応援して頂けると励みになります!

感想も書いて頂けると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
じゅ…10倍界王拳が…効かない… ロボットの中身が幼女って良いですよねギャップが素晴らしい
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ