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006:後のクランハウス

 オークの戦場から生還すると、帰りを待っていたアスターが微笑んでいた。


「さすがは兄さんだ」

「貴方ほどじゃありませんよ、超新星のアスターさん」


 アスターは元々農民の家の子で、俺の国では階級が低い出自だ。

 そのアスターが今や三国が共同出資する混成都市の代表になった。


 キメラシティのみんなはアスターのサクセスストーリーを羨み。

 超新星のアスターと言う風に呼んで、讃えているらしい。


「おだてているつもりですか? 兄さんが言うと逆に嫌味だ」

「そんなわけないだろ、見てくれよ、俺の冒険者等級」

「五つ星だね」


 今回のオークの戦場での大活躍から実力を認められたらしい。

 と言うのは俺のちょっとした自慢。


「そう五つ星だ、神童と呼ばれていた頃から考えれば、不満だろ?」


 得意気な表情でそう言っておいた。

 ちなみに一緒の戦列にいたグレイシアは四つ星の活躍。


 彼女は帰る道すがら、おじさんが邪魔するからとずっと愚痴っていた。


「所で兄さんはどうしてここに来たの? ここは兄さんたちの家じゃないよ?」

「え……キメラシティに来た当初は、自分の家だと思ってくれていいって」

「娘が兄さんと一緒に暮らすのは嫌なんだって」

「ノアちゃんが!?」


 あんな幼気で可愛い子にそう言われると死にたくなる。


「っていうのは冗談で」

「ほっとした、嫌な冗談はやめてくれ」

「オークの戦場での活躍は聞いたよ、正に獅子奮迅の活躍だって」


 けど、独り占めはよくないよね?

 アスターは底冷えした声音でそう言い、オークを八千体は倒した俺を見詰める。


 隣に控えていたグレイシアは天罰がくだったねと言っていた。


 アスターはキメラシティの代表としてさらに俺に言いたいことがあるそうだ。


「さすがに兄さん一人だけに八千枚もの金貨は出せないんだ、ごめんね」

「じゃあ今回の報酬は?」

「金貨五百枚」


 まぁ、ビッグティガーよりも格下のオーク相手だしと、無理やり自分を納得させる。

 アスターはそれだけだと兄さんが不貞腐れちゃうから、という理由で。


「今回の報酬は金貨五百枚と、キメラシティの家を贈呈させてもらうよ」

「おお、いいのか?」

「ああ、なぜかって、娘が兄さんと一緒に暮らすのは嫌だってうるさいからね」

「それ結局冗談なのか本当の話なのかわからない」


 と言う訳で、俺とグレイシアはアスターに連れられて街の一角に向かった。キメラシティの中央部から離れた場所で、夜通し人が行きかっている街路地とは違い、夜はしっかりと暗い。


 キメラシティにある巨大な魔石アポロンの恩恵はさずかれそうにない場所だった。


 そこに違和感を残した不思議な建物があった。


 見たことのない巨樹の根っこで編まれたような、ファンタジーチックな家だ。


 アスターの顔をちらりと見ると。


「お察しの通り、俺の魔法で急いで作った。けど中はしっかりとしているはずだよ」

「雨ざらしになるよりはましだよ、ありがとう」


 家は盛り土を基盤として造られており、小階段を上がって巨樹の根っこのような壁につけられた扉をくぐると、室内の光景に俺は胸をときめかせた。赤を基調とした絨毯に、小洒落た酒場のような一階の居間を囲うように段差がある。扉の右手には応接室のような空間まであるし。


「内装や家具は臣下にお願いしたけど、羨ましいほど立派だ」

「こんな家貰っていいのか?」

「もちろん、兄さんたちの自由に使ってくれ」


 王都にいた頃、なけなしの給料で借りていた賃貸物件とは大違いだ。

 Gは出るしネズミによる被害にも遭っていたし。


 もちろん気をつけないとこの家でもそういった被害は出てしまう。

 清潔に大切に使うとしよう。



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