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030:神鳥3

 不死の草はフェニックスと呼ばれる神の鳥が好んで食べる。

 アリアドネ公国はフェニックスに生贄をささげていた歴史があるらしく。


 今でも巫女と称して国の新生児の中から女児を選出し。

 その女児を公国に生息するエイシェントモンスターと呼ばれる野獣に托卵させる。


 グレイシアは巫女の一人だった。

 彼女の他に選出された巫女は消息不明。


 フェニックスの所に不死の草を摘みに行けるのはグレイシアだけだった。


 俺は今まで彼女のことを太々しくわがままで芯の強い少女だと思っていた。

 だから国から寄越された使命など受けるはずがないと、思っていた。


 結果的にグレイシアは不死の草を摘みに行くことを明言した。


 一度口にした言葉は有言実行する子だったので、今回も意思を曲げることはないだろう。


 だからグレイシアとはここで別れることになった。

 胸中に穴が空いたかのようなショックを覚える。


 グレイシアを彼女の祖母であるシスターに託し、頭を下げて神殿から走り去った。


 目が涙でにじんでいる。

 この顔を見られてグレイシアの足を引っ張るような真似はしたくなかった。


 今はアリアドネ公国の酒場の一席でエーテルを鯨飲。

 何かあるたびにいつも酒場に来てるな、俺。


 次第に俺を探し当てた双子がやってきた。

 グリムが眉根をしかめて苦言をていする。


「総団長、お酒に逃げる癖どうにかしませんか」

「俺だってやめようとは思ってる、金かかるしな、けど――飲まずにやってられん」


 アンデルセンは同情したようすだった。


「俺も飲んでみようかな」


 グリムは弟に冗談でもやめるよううながす。


「冗談でもよしてくれ」

「いいじゃないか、俺のクランにいる以上いつかは飲む機会もあるって」

「それよりもどうするんですか? ジャガーさんは不死の草の採取に同行するみたいですよ」


 なんだと?


「あのデブ、国の神聖な行事を何だと思ってるんだ」

「アリアドネ公国から正式な許可をもらっているみたいです」

「ほんとぉ~?」


 グリムは手を鼻でつまんで、アンデルセンの肩を叩くと。


「俺たちは今日泊まる宿を手配してきます」

「頼んだ、その前に言っておきたいことがある」

「なんでしょうか」

「今回はグレイシアを失う結果になったけど、お前らまで失うつもりはないぞ」


 俺たち、ずっともだよ。


 アンデルセンは安心してくださいと穏やかな顔でいい。

 グリムは嘆息しながら納得したみたい。


「総団長って寂しがりやなんですか?」

「ほうっておけ」


 ◇ ◇ ◇


 翌日も王宮で交渉担当と話し合った。


 大筋はまとまり、あとは実際に交易してみて、その結果で細かい所を詰めようという流れだ。野菜の生産者としては美味しい野菜を研究して生み出し、各ご家庭の食卓に手が届くようにするまでだ。


 会議のあとはエイミーさんに連れられて実際の卸先に挨拶回りした。


 その内の一つである野菜売りの店主は俺たちの噂を聞いていたみたいだ。


「あんたの噂は聞いてるよ、グレッグ村のビッグティガーを一瞬で倒したんだってな」

「はは、俺は元々攻撃魔法の方が得意なんで」


 人形族の姿をしたジャガーさんは鼻声で「野蛮人」ってぬかしやがる。

 怒りの感情からジャガーさんに魔法を使いそうになった。


「今機嫌悪くしてるんですよ、俺は」


 いらぬ挑発はやめてくれ。

 っと、今の俺は取引先に営業している最中だ。


 気を取り直して再び笑顔を浮かべる。


「失礼しました」

「ま、まぁ、あの村には俺の親戚もいてな、そのお礼をさせてくれ」


 店主は陳列されていた商品から見たことのない果物を差し出す。

 お礼を言いつつ受けとろうとすれば、ジャガーさんが横からかすめとった。


「これは俺のコレクションにもないな、ありがたく頂戴します」


 そんなジャガーさんに静かに青筋を立てて攻撃魔法を放つと。

 ジャガーさんは俊敏にかわす。


 であれば必中魔法でも喰らうがいいっ!!


 ジャガーさんは驚きあわてて猛ダッシュで逃げるも、俺の電撃魔法を受けてしまう。


「あぁああああああああああああッッ!」


 いい声出してくれるじゃないの、はっはっは、ざまぁ。

 しかし彼は治癒魔法で復活し、無言で俺に肉薄した。


「因果律改変魔法を使うなんて、殺す気か!?」

「大丈夫ですよ、死なない程度の威力に抑えてあったんですから」


 ジャガーさんは俺に猛抗議するが、自業自得だろうに。

 グリムが聞き覚えのない単語に首をかしげている。


「因果律改変魔法ってなんです?」

「あー、説明してもいいが難しい話になるぞ?」

「この後でお聞かせください総団長」


 うむ、グリムやアンデルセンは才能あるし、いいだろう。

 双子は今日から俺の弟子を名乗るといい。


 エイミーさんが双子にぼそっと何事か語り掛けていた。


「あんたたちっていつもこんな感じなの?」

「いつもはもっと理路整然としてます」

「楽しそうだね」

「そうですか?」




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