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029:神鳥2

 アリアドネ公国の君主ファードランド様の謁見は終わった。


 俺は公国の交渉担当と、先ずは野菜の輸出額について軽く話し合った。

 交渉のテーブルにはエイミーさんと彼女の弟である双子も同席して。


 エイミーさんはグリムに向けて口を開いた。


「後で父さんに会ってあげたら? 二人が立派になった所見たら喜ぶと思うよ」

「その話は絶対に聞けない、俺たちは父を見返すために冒険者になったんだ」

「そんな所だろうと思ったけど、本当にそうだったのね」


 冒険者はハイリスクハイリターンな職業だしな。

 収入の面で言えば双子はもうその意思を叶えているんじゃないか?


 と言っても他人様の家庭の話だし、余計なこと言わないようにお口にチャック。


 エイミーさんは俺の顔を見てにこりと営業スマイルを取る。


「失礼しました、それはそうとラウル様」

「なんでしょうか?」

「不死の草の担当に取り次ぎますので、引き続きよろしいですか?」


 となればジャガーさんの出番だ。

 ジャガーさんは人形族の姿に戻っていて。


「ようやく僕の出番か、行こうラウルくん、大船に乗ったつもりで任せて欲しい」

「ええ、ですがその姿でやりづらくないですか?」

「これでいいんだ、贅肉まみれの醜い体で応じるよりもいい印象持たれる」

「そうですか? まぁ相手次第なんでしょうね」


 エイミーさんの案内で今度向かったのは王宮から離れた神殿だ。

 ファードランド様の話だと不死の草は宗教上の重要な代物だというし。

 不死の草で料理しようなんて考えがそもそも大それたものなのも理解できる。


 神殿には上がり巫女と呼ばれる老女のシスターがいて。

 彼女が不死の草の担当だったようだ。


「まぁ、不死の草を人工栽培するの? 陛下がそれを許したの?」

「ええ、私も横で聞いていて耳を疑いました」

「誰がそんな不敬な申し出をしたの? こちらの人?」


 え? 俺? 違う違う、こっちの人です。


「俺じゃないです、人形族にふんしている彼です」

「ごめんなさい、でも自信はあります。僕は長年にわたって栽培の研究をしていて」


 不死の草の人工栽培は集大成になるでしょう。

 ジャガーさんがそう言うと、シスターはぽかんとしていた。


「……でも、そうね、陛下がなぜお許しになられたのか私にもわかる気がします」


 シスターは驚きで開いていた口を数秒後には閉ざし、微笑んでいた。


「不死の草は別称、生贄草と呼ばれていて、選出された巫女が摘みにいきます」

「なんか不穏な別称ですね」

「不死の草の採取に向かう際は必ず犠牲が出ます、それほどに危険な場所にあるの」


 なんでも、シスターもその昔は不死の草を摘むための巫女だったらしい。

 彼女はアリアドネ公国に伝わる風習に乗っ取って別親に育てられたようだ。


 そして巫女としての責務を全うし、今は公国で安寧な生活をしているらしい。


 シスターはグレイシアを見やり、意外なことを告げた。


「だから不死の草の人工栽培の話だけでも驚きなのに、まさかその発言をしたのが今年の巫女だったなんて、にわかには信じられなくてね。あなたが提案したのですか、グレイシア」


「私じゃないよおばあちゃん、人工栽培はこの人の提案」


 グレイシアは俺を指さしていた。


「俺じゃないし、グレイシアは巫女だったのか?」

「おどろいた?」

「何かを隠している様子はあったけど、巫女って具体的にどんな立場なんだ?」

「不死の草を摘むための役目、その道中は危険、だから私は冒険者もやってる」


 グレイシアにしてはずいぶんと筋だっていた。

 今もぶぜんとしていて、無表情で、野獣のような鋭い目つきで人を見定めている。


 シスターがグレイシアの頭を手でなでつつ、彼女と同じく俺を見定める。


「孫が失礼しませんでしたか?」

「グレイシアは頼もしい仲間ですよ、普段から助けられています」

「今お話しした通り、孫には巫女としての役目がございます」


 シスターはグレイシアを言い聞かせるように、だからねと言葉を続ける。


「彼らとはここでお別れしなきゃ駄目よ?」

「え? グレイシアにいなくなられたら困ります」

「申し訳ありませんが、それがグレイシアに与えられた使命です」


 とうとつにグレイシアとの別れを宣言され、とたんに他人事じゃなくなった。


 おとぎ話を聞いていたら当事者になった気分だ、急に怖くなった。


 意思を確認するため、グレイシアの瞳を覗き込むように見ていた。

 彼女は俺の意図など気にせず、相変わらず人を見定めるように観察している。


「おじさん」

「おお、何か言ってくれグレイシア、君がいなくちゃクランは成り立たない」

「……ごめん、私は巫女の務めを果たす」


 こんなことになるのなら、この国に来なければよかったと思った。



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