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027:ビッグティガーの群れ

 アリアドネ公国に俺含む五人のクランメンバーで向かった。


 俺、グレイシア、双子のグリムとアンデルセンと、人形族のハンクだ。

 ハンクを連れて来たのには理由があるけど、大きな理由は本人が希望したからだ。


 黒と白のコントラストの綺麗な毛皮をした雄の人形族で。

 人形族として特徴的な語尾はなく、人間のようなしゃべり方をする。


「ご主人様、馬車旅はどのくらいで終わりますか?」

「往路で六日間ぐらいらしい」


 御者の隣にはグレイシアが護衛のため座っている。

 レイヴンズチルドレンのメンバーが交代交代で馬車の護衛をする予定だ。


 双子は以前もやっていたカードゲームを今でも興じている。

 特殊なカードに魔力を込めて知能戦だ。


 ふと、集中しすぎたグリムがカードを落とした。

 ハンクが拾い上げてグリムに渡す。


「ありがとう」

「なんてことありませんよ」

「……ハンクって、魔法使えたんだな」

「おや? どうしてお気づきになられたので?」

「このカードはそういう代物だからだよ、少しでも魔力を帯びれば反応する」

「ふむふむ、面白そうですね」


 三人がカードゲームに勤しむ光景を肴に、俺はまた一杯やろうかな。


 往路六日間の長旅にまったりしようかなと思っていると、馬車が急に止まった。


「駄目だよお嬢さん、危ないから戻って来なって」


 しかも外からもめごとのようなセリフが聞こえてくる。

 馬車から降りてみると、グレイシアが弓を構えていた。


「なに――」


 しているんだと声を掛けようとした時、彼女は矢を放つ。

 慣れた様子で森に入っていき、巨大な鹿を担いで持ってきた。


「今日のご馳走」


 いや、そんなことしなくても六人分の賄ぐらいどうにかなったのに。

 忘れているかもしれないが、俺には亜空間倉庫がある。


 俺の畑で獲れた作物やら、メイガス帝国の海産物。

 また今回の出張を見越して肉も大量に購入してあるんだ。


「おじさん何で謝ってるの」


 お前の勝手な行動のせいだろうが!

 ハンクが狩猟した鹿肉をさばいて亜空間倉庫にしまう。


 のように、今回の出張のお供は癖のある連中ばかりだった。


 ◇ ◇ ◇


 夜になり、馬も休ませるために道中にある村に立ち寄った。


 村人の話によると最近になって周辺地域に賞金首モンスターの出没が確認されている。レイヴンズチルドレンのメンバーでじゃんけんし、総団長の俺が討伐しに行く運びになった。


 冒険者を志しているという村の青年が数名の仲間を連れてそのモンスターの所に案内してくれるようだ。


「あんた一人で大丈夫か?」

「まぁ、不安に思う気持ちもわからないでもないですが、大丈夫だよ」


 相手は以前戦ったことのあるビッグティガーの群れだとのこと。

 むしろ俺は彼らが犠牲になることを恐れていた。


 常に感知魔法を周囲一キロで張り、何があっても対応できるようにした。


「そろそろ出没地帯だ、気を付けてくれ」

「ええ、それじゃあ皆さんはこの結界魔法の中から動かないでくださいね」


 書類仕事の連続で凝り固まった両肩をならすように回し。

 感知魔法に引っかかった前方にいるビッグティガーの群れに奇襲を仕掛けた。


 ――ッ、ッッッ!!

 夜の森の中に立ち上がったひときわ強烈な蒼い爆炎。


 群れにいたビッグティガーの数体は絶命したようだ。


「どこを見てるんだ、俺はこっちだぞ!」


 声を上げた真逆の方向から先ほどと同じ爆炎魔法を使ってビッグティガーを屠る。


 時に、ビッグティガーにまつわる話をしよう。

 ビッグティガーは雌雄率が雄に偏っていて。

 雌雄で対比するとおすが九割に対してめすが一割だ。


 そのためビッグティガーは女王を中心としたコロニーを形成する。


 俺とグレイシアが冒険者登録の時に退治した一頭は本当に稀な例だった。


 爆炎魔法によって雄のビッグティガーは全滅させた。

 残ったのは致命傷を負った女王だけ。


 致命傷を負った女王は不可視の魔法を使えず、足を引きずって森の奥に向かった。


 まぁ予想通りだったけど、女王が向かった先にはコロニーの新生児がいた。


 母親として最期に子供に乳を与え、そこで女王のビッグティガーは息絶えた。


 そのあと、俺はビッグティガーの赤ちゃんたちを連れて村に戻った。


 村長さんが祈りをささげ、こう言ったんだ。


「可哀想だが、子供の方も殺すしかないよ」

「大丈夫です、この子たちはこの村で飼いならしましょう」

「は? 失礼、あんたは有名な冒険者みたいだが、正気からくる発言と思えんな」

「世界的にも例がありますよ、人間がビッグティガーを飼いならして運用するのは」


 ビッグティガーの子供はまだ乳児の段階だ。

 この時期であれば毎日面倒見ていれば勝手になつく。


 すりこみの作用でこの子たちは村の守護獣として重宝されていくんだ。


 村長さんは俺の説得に応じようとせず、始末しないとこっちが殺されると言う。


 業を煮やしたのはグレイシアだった。

 彼女は村長の足元に威嚇射撃のように矢で射抜く。


「ラウルの言っていることは事実です、アリアドネ公国に古くから伝わってる」

「と、彼女も言っているし、再度ご考量お願いしますよ村長」


 村長はためらっていたものの、村の青年団のリーダーの意見に最後は押し切られた。


「村長、俺たちが面倒見るよ。俺はラウルさんを信じる、いや、信じるしかない」

「どういう意味だ?」

「村長は彼の力を目の当たりにしてないから、凄さがわからないんだよ」


 どうも、どーも。

 と言うことで立ち寄った村の一件は片付いた。


 帰る時にまた寄ると思うし、経過はその時に見させて頂くとしよう。


 翌日、馬車はアリアドネ公国に向けて再び走り始めた。

 今日の護衛担当はグリムだ、御者の隣で警戒している。


「……グレイシア」

「なに?」

「昨日は村長に口添えしてくれてありがとうな」

「おじさんのためじゃないからいい」

「まぁまぁ、それでふと疑問に思ってさ」


 グレイシアがビッグティガーを見たのは冒険者登録の時が初めてだったはず。

 そう言うと彼女はいつもの調子で、そうだっけってすっとぼけるんだ。


 グレイシアは何かを隠していそうだった。




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