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026:大浴場

 クランのみんなが用意してくれた誕生日会は夜更けまで続いた。

 深夜になると利口な連中は引き上げる。


 アスターも帰ったし、ギルドの受付嬢や、アンネさんも引き上げた。


 そんな中、深夜三時の最中だろうと帰宅しないもののふの面構えを確認する。


 ニーアは眠たそうに俺に体を預けていて。

 酒屋をやっているアルはその光景に固唾をのんでいた。


「くぅ! 俺もラウルの旦那みてーになりたかったッ」

「おすすめしません」


 今日は無礼講だ、みんな胸中を語り明かそう。

 そう言うとジェーンが頬を赤らめて。


「総団長っ、私はいつになったらみんなみたいになれますか」

「ジェーンは、場数を踏めば自然と強くなるよ」


 今までは臆病な性格から逃げ腰でろくに戦ったことないだろ?


「総団長っ、私は逃げたくて逃げてるわけじゃないんです」


 そんな彼女も今や五つ星冒険者か。

 クラン・レイヴンズチルドレンの新規メンバー加入はもう少し待とう。


 ジェーンがあと一段階の成長を遂げるまでは、待ってみよう。


 クランハウスの居間には数名の生き残りと、執事、メイド役の人形族だけがいる。


 グレイシアは壁際にあるソファを占有して寝ているし。

 ニーアもほぼ寝ている。


 二人とも一輪の花のように可憐だ。


 俺とアルとジェーンとキーツ、それからマキナティアが生存者だ。

 マキナティアは手遊びするように水晶玉をなでて、キーツに問いかける。


「余興の一環じゃ、キーツの将来を占ってやろうかの」


 独身貴族のアルが俺も占ってくれーとこんがんしていた。

 マキナティアは水晶玉に手をかざし、優しい光を放つと。


「キーツはジェーンに好意をもっておるのか?」


 ざわ。

 もしかしたらマキナティアの爆弾発言に、俺は一人心をざわつかせる。


 キーツはグラスに注がれたスモーキーな酒を口に運ぶ。


「嫌いじゃないと思う」

「二人が戦場で絆を深めている光景が見えるの」

「彼女が持ち前の速さで敵をほんろうし、俺が持ち前の力で相手を葬る」


 このクランに入った後の初めての戦場、あれは実に快感だった。


 キーツの言葉にジェーンは泣きながら抱き着いていた。


「うわぁああああん、キーツさん好きぃ」

「お前の成長に期待しているぞ」


 キーツは冷静にジェーンの頭をなでている。

 今は酔っぱらっているが、二人が自分の気持ちに素直になったら。

 今度は俺が祝う側になりそうだった。


 その時、ニーアが目を覚ました。


「ラウルのことも占って」

「無論じゃ……ほほう、これは」

「何が見えた? ラウルの隣にいるのは私? それともグレイシア?」


 その時突然、マキナティアの水晶玉が粉砕されて飛び散る。

 酒屋のアルがびっくりしていた。


「わ、割れた? 前触れもなく一体何が」

「いやー、びっくりしたなー」


 お道化る俺をニーアはきつくにらむも、ふとした拍子に安らいでいた。


「まぁいいか」


 彼女はそう言い残して俺のふとももに倒れ、膝枕されつつ寝入った。


「あー、そう言えばニーア」

「なに?」

「俺、明日からアリアドネ公国に出張しにいくから、よろしくな」

「……うん、明日っていうか、今日だよね?」


 そう、この数時間後には出立する。

 グレイシアと双子を連れて。


 七つ星冒険者のニーアがいれば安心して出張もできる。


 クラン創設の時から彼女には負担掛けっぱなしで。

 期待に応えられてないのに申し訳なさすら覚えていた。


 ◇ ◇ ◇


 アリアドネ公国に向かう前、双子が迎えにやってきたみたいだ。


「ニーアさん、総団長は?」

「……大浴場に行った、グレイシアさんと一緒に」

「もうそろそろ迎えの馬車来ますよ?」

「なんなら先に行っていいと思う、二人なら追いつく」

「ニーアさん酒臭いです、総団長と一緒に大浴場に行けばよかったと思います」

「ラウルは化け物だから」


 クランハウスの近く、街道沿いに新しい大浴場が建った。

 キメラシティにいるときは毎日通っている。


 昨夜から飲みまくったし、湯に浸かって酒気を飛ばそう。


 大きな壁を隔てた女湯からグレイシアの声が聞こえた。


「おじさん、私はそろそろ上がるよ」

「おー、俺ももう少ししたらあがる」

「湯船で泳いだら駄目だよ?」

「そんなマナー違反は子供の時に卒業したよ」

「十歳までおねしょしてたのに?」


 いうな、こんな公衆の場で!

 仕方なく俺も湯船から上がり、脱衣所で身なりを整えた。


 グレイシアから貰った虫歯と口臭予防の薬草を噛んで、ぺっぺと吐き出し。

 脱衣所に取り付けられた大きな鏡越しに自分の顔を見る。

 やはり三十三歳になってちょっと老けてきた実感を覚えつつ、髪を乾かしていた。


 その時、脱衣所の扉が開かれ。


「おじさん、馬車来たらしいよ」


 グレイシアが男湯の脱衣所に乱入してしまった。


「わあーッッ! お前がここに入っちゃ駄目だろ!」

「大丈夫」

「何が!?」

「おじさんの、普通だと思う」


 ナニを見てそう言ってるので!?


 グレイシア、やっぱり君はどこまで行ってもそうなのだろうな。




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