022:王国の万能畑
ニーアにキスされて逃げられたのが昨夜のこと。
とりあえず、アスターから貰った街をどう切り盛りするかだな。
今のところ新しい区画の生産性はゼロ。
だから収入もゼロ。
これをバリバリに稼働させて利益率を右肩上がりで伸ばす手段を会議したい。
クランハウスにメンバーを集結させ、議題を上げた。
「何かいい方法あったら教えてくれ」
最初に挙手したのは機人のマキナティアだった。
「育成施設を作るなんていうのはどうかの」
「育成施設を作るって、どんな育成だ?」
「冒険者の卵、商人の卵、要は学校じゃ」
マキナティアの提案だと生産性と建設性は出てくるだろう。
なかなかいい提案かもしれない。
「主は元々王立魔法研究所の職員だったのだし、似たようなものを作れんかの」
マキナティアの言葉にジェーンが驚いていた。
「そうだったんですか総団長って、凄すぎて口が開いちゃいました」
「昔の話だよ、ジェーンは議題に対して提案ないか」
「要はお金を生めばいいんですよね?」
「そうだよ」
「じゃあ錬金術師を勧誘するとかどうですか?」
ジェーンは錬金術師と言えばそこらへんにある石を金に変えてしまう職業ですし、と現代の錬金術師にただいなプレッシャーを与えていた。俺の知る限り、現代の錬金術は魔法を人工的に発生させることが出来ないか、という思想に偏っていると思う。ジェーンがいった石を金に変えるという本来の錬金術師の思想は誰も持ってないと思うんだ。
「他に何かないか?」
問うと、寡黙気質なキーツが珍しく発言をした。
「トレジャーハントはどうだ、先日片付けた海賊一味が言っていた」
先日メイガス帝国の商船や貿易船が海賊に襲われるようになったので、退治しにいった。ほとんどの海賊を逮捕出来たと思う。キーツが言っているのは、その海賊たちがメイガス帝国の海底に眠っていると噂していた宝石の山のことだろう。
「双子兄弟の意見も欲しいかな」
ぼんやりと物憂げにしていた二人に聞くと、やっぱり答えたのはグリムだった。
「病院、それも大きくてちゃんとした」
「それもあって当然だよな……ニーアはどう思う?」
昨夜、俺にキスして逃げて行ったけど、彼女はきつ然とした様子だ。
「引き取り手のない子供や、動物を匿える施設が欲しい」
「君らしい意見だな」
「割とそういった話、今でもよく耳にするから」
あと聞いてないのはグレイシアだけど。
グレイシアには地下街を任せているから、独自にやってくれることを祈ろう。
そこで、俺は昨夜から寝ずの徹夜業で作った資料をみんなに配った。
「その資料は俺が作った街のロードマップになる、何段階かに分けてこの先の街づくりのための行動を大雑把に書いた。第一段階は衣食住の確保。これは人間が生きるために最低限必要とされるものだろ? これがなければ学校の教育者も、錬金術師も、トレジャーハンターも、病院の先生も、みんな暮らしていけない」
幸いなことに、住はすでに確保できている。
とすればあとは衣服の用意と食事の確保だ。
「衣服はキメラシティのフリーマーケットで古着を安く大量に仕入れることができる。問題は食事の方であって、三国の食料の生産量は年々減少している。俺たちは優遇されているから論外」
ニーアがつまりと、今回の議題の結論を急がせる。
「つまり、食物の生産者をまずは引き入れるってこと?」
その通りではあるが、ちょっと惜しい。
マキナティアはある想起にいたったようだ。
「奴を――王国の万能畑と呼ばれたジャガーを招集するのじゃ」
「俺もまったく同じことを考えてた」
マキナティアと俺以外はジャガーを知らないので説明すると。
「王立魔法研究所に所属していた食の探究者って呼ばれるほど、食料事情に取り組んだ研究をしていた人で、今は退所してたはず。聞いた話によるとゴザ将軍が罠に嵌めて、今は山籠もりしているみたいだ」
ジェーンが質問していた。
「ジャガーさんはどんな研究してたんですか?」
「様々に、例えば畑に撒いた種を一日で収穫できるようにしたりとか、そこから彼は王国の万能畑という異名を持つようになった」
彼の研究成果があれば、今頃農家は廃業の連続だったはずなんだ。
なのに兄弟子のクソ野郎が俺の時と同じ感じで権力を使って国から追い出した。
ジャガーの優秀なところは、研究物をゴザの手に渡らせなかった所だ。
「だからクラン・レイヴンズチルドレンの次の目標はジャガーの捜索」
あの人がいればキメラシティはもっと発展するよ。




