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019:さらに活躍

 クランハウスに帰ると、グリム兄弟が不思議なカードゲームをしていた。


「何やってるんだ二人とも」


 聞くと、グリムが視線をカードに落としながら澄ました口調で答える。


「これは僕らの魔力訓練、魔力が込められたカードでテーブルゲームみたく遊べる」

「面白いのか? ルール教えてくれよ」

「いいよ、ならアンデルセンと勝負してみてくれよ」


 そこで俺はグリムの持ちカードを受け取り、ゲームに触ってみた。

 カードは魔石から作られていて、魔力を込めるとその数値が示される。


 例えば火の魔力を込めれば、数値2万の赤いカードが出来た。

 火は氷に強く、水に弱い、風とは相乗し、木を火の性質に変えることが出来る。


 双子兄弟がやっていたのは魔法の基礎を用いた魔力操作を習えるゲームだった。最初の持ち手札は五枚と決まっていて、手札を増やしていきつつ場を制圧すれば勝ちといったルールらしい。


 このゲームには欠点がある、それは何かと言えばゲームの勝敗はプレイヤーの素質にゆだねられるからだ。対戦相手になってくれたアンデルセンは水の1万のカードを作り、俺の火のカードを打ち消して自分の手札に加えていた。


「ラウルさんはどの魔法要素が得意ですか? 火ですか?」

「俺は苦手とする魔法要素はないつもりだ」

「すごい、このゲームは使える魔法要素の手数が多ければ多いほど無双できますよ」

「だろうな、だけど全要素使える魔法使いなんてほとんどいないよ」


 このゲームはプレイヤーである魔法使いの才能が問われるシビアなものだった。

 とりあえずアンデルセンが受けるのに不得意とする魔法で攻めていった。


「俺の勝ちは見えたな」


 勝利を確信していると、アンデルセンの横にグリムがついた。

 すると二人は同じカードを手に持ち、思いもせぬ魔法を使っていた。


「えぇ? 融合魔法だと」


 融合魔法とは文字通り、魔法を融合して複数の要素を持つ特異魔法を生み出す。

 俺の雷3万のカードを、二人は水と土を使って金の要素にして消滅させていた。


 兄であるグリムは上目遣いで俺の顔を見ていた。


「俺たちの誰にも負けない固有魔法です、二人そろえば互いの魔法を融合できます」

「すっごく希少性の高い固有魔法だな」


 二人が十四歳にして六つ冒険者である理由に納得がいった瞬間だった。


 マキナティアがやって来て、苦言をていしていた。


「主の真の実力を発揮できれば、相手にできる魔法使いなどおらぬの」


 彼の言葉にグリムは俺を見詰める。


「総団長はまだ不完全なんですか?」

「俺のピークは十二歳の頃だから、あの時の俺は自分で言うのもなんだけど」


 凄かったな、こと魔法であれば誰にも負けない自信があったし。

 実際、兄弟弟子の中で俺よりも優秀な魔法使いはいなかった。


 あの頃の実力にたどり着ける方法など、そうはなさそうだ。


「そういう意味では若返りたいな、神童だった自分に戻って返り咲きだ」


 マキナティアが「くくく、主が怖いことを考えておるの」と苦笑している中。

 洋服をたんまり買い終えたグレイシアがやって来て、おじさんと呼びかける。


「おじさんは若返りたいの?」

「話の流れで言ってみただけだ、本気で言ってるつもりはない」

「私の故郷に若返るための秘薬があるよ」


 ぐ、ちょっと欲しいかも。


「それって実質不老不死に近づけるってこと?」

「らしいよ」


 羨ましいな、まったく。

 それよりも俺は思った。


「グレイシアの故郷ってどこ?」

「アリアドネ公国の大森林にある集落」


 アリアドネ公国はキメラシティに共同出資している国の一つだ。

 俺の祖国、グレイシアの母国、それからこの前手伝ったメイガス帝国の三つだ。


 グレイシアは物思いにふけった様子で天井を見上げて、呟いていた。


「そういえばお墓参りしに帰らないと」

「誰の? ご両親とかか?」

「……おじさんも来る?」


 彼女の目は来て欲しいと懇願しているようだったので。

 特に考えることもせず、いかせてもらうよと答えておいた。


「その前に冒険者ギルドから依頼を紹介されてるんだ、悪いけど、それ片付けてからな?」


 冒険者ギルドから寄越された依頼は特級賞金首の討伐依頼だった。

 賞金首の名はゲイルドラゴン。

 翡翠色の竜燐を持つ災厄モンスターとして認定されている。


 このクエストを攻略すれば双子は七つ星冒険者になれるらしい。


 話を聞いてグリムは勇んで「やる」と返事していた。

 融合魔法を使える双子であれば実際にやり遂げてしまうのだろう。

 保険として双子には防御で役立つマキナティアと、ジェーンをつけることにした。


 その間、俺と他三名はばらばらになって違うクエストをこなす。


 これが最善最速、であればメンバーには早速仕事に取り掛かってもらうとしよう。


 ◇ ◇ ◇


 俺は単独でミノタウロスの群れの討伐に出ていて、今それを終えたばかりだ。

 ミノタウロスは雄牛の頭で大きな斧を持った巨大モンスターの代表格みたいな奴。


 それがカサンドラ王国の領地に突然群れで現れ、村を一つ二つ潰していた。


 ミノタウロスは首から上を切断されて倒れていたり。

 真っ黒こげになって倒れていたり。

 酷い裂傷を全身に受けて倒れていたりと、死屍累々の山を築いている。


 一緒に来ていた冒険者は驚愕のまなざしだった。


「強い、強すぎる」

「こ、これがラウル・マクスウェルの実力なのか」


 ひとえに恩師から譲り受けた三つの神器のおかげなんだけどな。

 魔力を増幅する宝剣がなければ魔力切れでぶっ倒れることも考えられるし。


 冒険者の一人がさらに驚愕の声で言っていた。


「聞いたかよ、どこの誰かは知らないがゲイルドラゴンが討伐されたらしいぞ!」


 クランメンバーのパーティーが上手くやってくれたみたいだな。

 これで双子は七つ星に昇級、ジェーンも昇級するだろうし。


 マキナティアは機人ということで、冒険者登録できていないので昇級こそないが、マキナティアのカウンターマジックを目の当たりにした冒険者が彼の功績を認めてくれるだろう。


「さてと、報告は任せるんで、俺は一足先にキメラシティに帰らせて頂きますね」


 他の冒険者にあとのことは任せ、愛用している飛翔魔道具でキメラシティの帰路につこうとした。しかしミノタウロスの被害にあった村の子供がやって来て、足元にしがみつく。


「あ、ありがとう!」

「どういたしまして」


 子供のあとを追うように父親がやってくる。


「本当にありがとうございました、妻の仇を取ってくれて」

「すみません、もっと早くに来てあげれば奥さんも助けられた」

「謝られることじゃない、王国に貴方のような偉大な冒険者がいるとは思ってなかったよ」


 父親の方が少しばかりのお礼です、と言って銀貨が入った袋を差し出す。

 もちろん遠慮しておいた、そのお金は自分たちのために使って欲しいから。


「何から何までありがとう」

「おじさん、お名前教えて」

「俺の名前? ラウル、ラウル・マクスウェルって言うんだ」


 子供は力強い意志がこもった瞳で、俺の顔を見上げて。


「俺もおじさんみたいになりたい!」

「はは、それはやめておいた方がいいんじゃないか」


 俺の辛苦にまみれた人生を追体験したいといったので。

 君は君の力で成り上がればいいんだと老婆心で教えておいた。




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