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017:無戦果の乱

 キメラシティの代表であるアスターから大口の依頼を提案された。

 肝心の報酬は件のメイガス帝国と交渉して欲しいと言われる。


 何のための冒険者ギルドなんだ、まったく。


 まぁ、下手に仲介役を挟んでの経費やら面倒事の上乗せは手間だと思うけどさ。


 とりあえずみんなにはクラン創設パーティーを楽しんでもらって。

 俺から一人一人にアスターの依頼を説明しよう。


 マキナティアはジェーンや、双子の魔法使いを捕まえて息巻いていた。


「なんならわし一人で片付けてやるわ」

「出来るかもしれないが、お前の場合、環境被害もすごそうだしな」

「細かいことはよかろう」


 よくないよくない。

 東にあるメイガス帝国は海産物や、海を股に掛けた貿易で経済を成り立たせている。


 アスターの推測によれば今回は空からの進軍と。

 帝国の北北西方面からの陸を伝った大部隊による挟撃とのことだ。


「メンバーの割り振りは俺とニーアの方で決めるよ、これが俺たちの初陣だ」


 各人、それなりに本気を出していこう。

 と言うと、ジェーンが早くも武者震いしているようだった。


「だ、大丈夫ですか? 相手は何万もの大軍なのに、私たち八人だけで」

「さっきも言った通り、諦めないで挑めばなんとかなるよ」

「諦めるとか、諦めないとかの前に無理だと思うんです!」


 しょうがないからジェーンは俺の方で面倒見よう。


 ◇ ◇ ◇


 某日、俺たちレイヴンズチルドレンは二手に分かれて敵勢と対峙した。


 帝国北北西の陸を主戦場とするのは俺率いる三名。

 マキナティアと巨人族のハーフのキーツと怖がりのジェーンだ。


 一方の空からの進軍に対してはニーアが率いる他三名が担当してくれる手はずだ。


 帝国の北北西の戦場の中心部は陥没していた。

 聞いた話によると、ある魔法使いが隕石を落として国を陥落させた跡らしい。


 事後の影響から大地から緑はなくなり、干上がった人工的な渓谷があった。


 人は魔法使いの御業からその場所を、レイヴンキャニオンと呼んでいた。

 恩師が放った大魔法の跡地は、同時にマキナティアにとって見慣れた場所だった。


「懐かしいのう、ここはわしの最後の戦場となった場所」


 ジェーンが涙目で「縁起でもないこと言わないでくださいよ」と言っていると。

 渓谷の向こう側から敵の先制攻撃である大火球魔法が飛んできた。


 ジェーンはその光景に足をすくませて身をかばう。


「ひぃ!」


 俺の口で「マキナティア」の出番ということを伝えると。

 少年の容姿をしたマキナティアは幾何学模様をした蒼白に光る魔法壁を展開する。


 大火球魔法はマキナティアが魔力庫代わりに運用している亜空間に向かい。

 亜空間で魔法の源であるマナに分解されたのち、彼の物になる。


 敵も何が起こったのか把握してないのか、第二第三の大火球魔法を放って来た。


「無駄じゃというのに」


 マキナティアはそれを的確に吸収し、自身の魔力庫に蓄積していく。


 一緒にいたキーツは勇ましい笑みを浮かべた。


「ジェーン、行くぞ!」

「え、えぇ? ちょっと無理やり連れて行くのは、マナー違反ですよ!!」


 キーツはジェーンを肩にかついで先陣を切ると。

 自身に掛けていた小人化の魔法を解き、巨人の姿で突進攻撃を仕掛ける。


「ヴァ!」


 キーツの攻撃によって大火球魔法を放っていた敵の魔法兵部隊は沈黙したようだ。

 マキナティアと一緒に暴れ狂うキーツを見ていたけど。


「壮観だな、巨人族なんて神話時代の遺物だと思っていたけど」

「うむ、実際に目にするのはわしも生まれて初めてじゃ」


 望遠レンズでキーツに連れて行かれたジェーンを見守る。


 彼女はお得意の疾風の如き俊敏さで敵の間隙を猛ダッシュで逃げていて。

 その行動が敵をいい感じに混乱させている。


 俺のクランメンバーは想像以上の実力を持っていたようだ。


 マキナティアは二人に任せきりもよくないといい、亜空間の出入り口を広げる。


「主に捨てられぬよう、わしも活躍してみせよう」

「誰も捨てたつもりはないんだよ」

「だといいがのう」


 マキナティアの誤解はいずれ解かないとな。

 そこに、メイガス帝国の隊がやって来る。


「失礼します! 私はこたびの防衛のため結成された部隊の指揮を執ることになっております、名を――」


 名乗ろうとした彼を手で制止した。

 俺たちから彼らに頼みたいことは一つか二つ。


「ここは俺たちだけで十分なんとかなりそうです、貴方たちには漏れがないよう敵の逃亡兵の捕獲をお願いします。ところで大海方面から進軍している敵の空軍は現状どうなってます?」


 向こうはニーアが自主的にやると言い出したので任せていたけど。

 イメージ的に向こうの方が大変そうだしな。

 ここを終わらせて手助けに行くつもりではある。


 防衛線の指揮を執るといった彼は苦虫を嚙み潰したような表情を浮かべていた。


 頬を引きつらせながら、ニーアたちの戦果を口にする。


「報告によれば敵の空軍はほぼ壊滅、我々は何も出来ずにおりまして」


 うっわ、先を越されていたか。


「お互いにうかうかしてられませんね、隊長殿」

「さ、さようですなラウル殿、我々は今日の日のために血がにじむような研鑽を」

「ニーアたちに助太刀に来られたら総団長のこけんに関わるので、俺はこれで」

「こけんと言うのであれば我らだとて同じなんですよ、ラウル殿ッ――――!」


 こうして、メイガス帝国を襲った危機は未然にふさがれた。


 帝国兵は何も出来ずに戦場を立ち去ったことから、無戦果の乱と呼ばれ。


 俺の恩師の名前を取ったクラン『レイヴンズチルドレン』は帝国でも有名になった。




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