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015:新規メンバー募集

 某日、キメラシティの外れにある家の前に大勢の冒険者が集まっていた。

 二階のベランダから顔を出すと、歓声染みたため息が聞こえる。


「あれがラウル・マクスウェルか」

「カサンドラ王国の稀代の神童にして、今はニーアを率いる天才冒険者」


 そろいもそろってまぁ、ご苦労さん。

 ずいぶんと沢山いるみたいだけど、全部で何人いるんだ?


 とりあえず。


「今日はお集まり頂き感謝いたします、今、整理券を配布しますので、札に書かれた番号順に面接します。ちなみに――整理券は五十枚しかないので、そこは冒険者である皆さんの方で奪い合うなりなんなりしてください、そら!」


 二階のベランダから魔法を掛けた木札をばら撒くと、キメラシティの冒険者による壮絶な大乱闘が勃発し始める。血で血を洗う大乱闘を眼下で見詰めつつ、全員に面接は今から三十分後ですと言って引っ込んだ。


 家には結界を張ってあるので、乱闘の影響は簡単に受けないようになっている。


 二階から一階に降りて、応接室につけられている窓から外の様子を伺う。

 グレイシアは俺の様子を見て。


「おじさん楽しそうだね」

「ん? まぁ、俺は自分の力を過信してない程度には自信あるけど」


 ひょっとしたらキメラシティの中には俺以上の存在がうようよいるかもしれない。

 そう言った連中はすでに自分のクランを持っているはずだけど。


 もしかしたら、という淡い希望が捨てきれないのだ。


「それより二人とも、面接は三十分後だから、用意しておけよ?」


 グレイシアとニーアの二人は同時に頷き、どこか気合が入っていた。


 ◇ ◇ ◇


 さて、三十分経ったので、今整理札を握っているものの中から採用を決める。

 一階の扉を開けると、倒された冒険者が一面に寝転がっていた。


「これで事前試験は終わりとなりまーす、今整理札を持っている人は番号順に並んでくださいねー。ニーア、整理札を持っている人を番号順に整列させてやってくれ、俺やグレイシアは怪我した冒険者を治療するから」


 亜空間倉庫の穴を出し、中からグレイシアと共同開発したポーションを取り出す。ポーションには三つのレベルがあって、グレイシアと作ったのは最高品質のエクスポーションと呼ばれる品だ。


 こいつを怪我塗れの冒険者の身体に掛けてやると、即効性で怪我が癒える。


 倒れていた内の一人の男性冒険者にポーションを使うと、意識を取り戻した。


「俺は合格できたか?」

「いいや、残念だけど」

「チ、ついてないぜ。どいつも強すぎるよ、まったく」

「ナイスファイトだった、クランメンバーの募集は次もやるかもしれない」

「その時までに強くなっておけって?」

「そういうことだ」


 惜しくも整理札を入手できなかった冒険者はすごすごとキメラシティに帰って行った。合格者の中には整理札を取ってすぐに大逃走を図ったずる賢いシーカー職もいたみたい。


 自分の利を活かして立ち回り、見事に整理札を勝ち取ったんだ。


「では一番の人から家の中にお入りください」

「儂のことだな」


 儂? もしかして老年の冒険者だったりするのかな?

 俺は儂と名乗った冒険者を見て、驚きのあまり目を丸くしてしまった。


 精緻な白髪、利発的な童顔、機械仕掛けの灰色の瞳。

 髪色や瞳の色こそ違えど、その冒険者は十二歳の頃の俺と瓜二つの相貌で。


 とりあえず彼を応接室に通して、再確認するように名前を尋ねた。


「もしかしてマキナティアか?」

「さよう、儂はマキナティアじゃ」


 横に座っていたニーアが、お知り合いですか? と尋ねる。


「マキナティアは、俺が魔法研究所にいた頃に作り上げた魔法の機械人形で。俺が魔法を使えなくなったと同時に動かなくなって、王国の倉庫で埋蔵されていたはずなんだ」


 マキナティアは今、かつての機能を取り戻しているようだった。

 神童だった頃の俺が作り上げたものの一つとは言え、肌が粟立つ。


「儂を主のクランメンバーに入れてくれ」

「お、おう、それはいいんだけど」

「なんじゃ?」

「お前、いつから冒険者になってたんだ?」


 そこからマキナティアの長話が始まったので、彼の面接は割愛しよう。

 一つ言えることがあるとすれば、マキナティアの戦力は一国を相手取れる。


 戦闘という面だけで考えれば素晴らしい能力の持ち主だ。


 マキナティアを相手にして生き残った他の冒険者の幸運を讃えたいと思った。


 次にやって来たのは二番と三番の札を手にした双子の冒険者だった。


「名前と年齢、できれば冒険者階級をお教えください」

「俺の名前はグリム、弟はアンデルセン、二人とも十四歳で六つ星」


 十四歳で六つ星か、将来はニーア同様七つ星冒険者になれる逸材なんだろう。


「何故俺たちのクランに入りたいんだ? 動機を聞かせてくれ」

「正直に言えば、このクランに入らなくても俺たちの将来は明るい」


 答えてくれたのは兄のグリムだった。

 弟のアンデルセンは兄グリムに一任して、動機を答えさせていた。


「俺たちはニーアさんを具体的な目標として目指していた、ニーアさんがここにいるのは街でも有名だったし、ひょっとしたらこのクランは前人未到の超大手のクランに成長するかもしれないって考えたんだ。そう言った大きなクランのスタートアップメンバーに居られるのなら、今まで以上に安定した収入が得られる」


「確かに大きなクランになれれば、冒険者ギルドは率先して美味しいクエストを回してくれるしな」


「動機は以上、俺たちの母親は歩けなくなってて、何するにもお金がいるんだ」


「わかったよ、しっかりとした考えをはっきりと聞かせてくれて理解がいった」


 俺は二人をメンバーに入れていいと思うけど、ニーアはどう思う?

 隣にいたニーアに視線を投げかけると、彼女は優しい声音で言っていた。


「もし私たちのクランに入ったら、こき使うけどいい?」

「対価にもよるよ」

「わかりました、二人のメンバー入りを認めます」


 二人が応接室から立ち去ると、ニーアはこう評価していた。


「あの二人は物事の道理に長けている感じがする」

「そうだな、大乱闘を勝ち抜くあたり実力も申し分ないだろ」


 その後も、俺とニーアの目に適うような粒ぞろいの冒険者が面接を受けて。


 今回の募集で俺たちは総勢で五名の冒険者を新たなメンバーに迎えた。





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