013:俺と一緒に返り咲こう
キメラシティを騒がせたジャックザリッパーであるガンマを捕まえ。
亜空間に置いて来た、あそこで半永久的に一人で懺悔していてくれ。
ガンマの主人だったニーアさんにとってその真実はショックだったようだ。
彼女は俺の自室から抜け出して王都を目指して街道を歩いていた。
雪が降る中、急いで追いかけ彼女の姿を見つけて叫んだ。
「ニーアさん! 駄目だ!」
俺の叫び声に彼女は肩を震わせて振り返る。
「……私には今回の責任を取る必要が」
「ゴザの所に行ったらまた同じことの繰り返しなんですよ」
ゴザは自分が仄めかした発言を一転させ、彼女を責めるだろう。
しまいにはあることないこと言って、彼女を俺に仕向けさせる。
となるのが見え透いてて、とてもじゃないが彼女を一人にしておけなかった。
心的な負担からだったのか、彼女は痛そうに右手を押さえる。
「大丈夫ですか?」
「いいの、これは無敵の魔法使いだと盲目していた私への罰です」
「貴方の魔法は事実それに近い」
「私をあっさりと倒しておいて、嫌味のつもりですか?」
「とにかく、ゴザ将軍の、兄弟子の所に行くのだけは薦められない」
「誤解しないでください、私もあの人のことは嫌いです、もう信用もしてない」
じゃあ、王都へは何しに?
問うと、彼女は兄弟子よりも厄介な魔法使いの名前を口にした。
「ヴェノマス、あの人であれば私を有効活用してくれる」
「そんなわけないだろ、ゴザより酷い」
「知ってるのですか?」
「ゴザと共に俺を追いやった師の一人ですよ」
強引に彼女の左手を取り引っ張って、彼女に言葉を掛けた。
「ニーアさん、俺と一緒に見返してやろう」
「見返す?」
「今まで貴方を騙した連中や、貴方を裏切った連中や、貴方を傷つけた連中を」
「……そんなことしても妹は戻らないのにですか?」
「妹さんが戻らないことに変わりはありませんが、これ以上悲しむこともありません。貴方の悲しみはいずれ誰かを悲しませます。俺はそういった光景をいくつも見て来たから、なら――俺と一緒に人生を返り咲かせてみませんか」
傷ついた心に絶対諦めない精神を説くように、俺はその言葉を送った。
すると彼女は救われた心地になれたのか。
氷の結晶のように綺麗だった相貌を崩して、涙を流しながら微笑んでいた。
◇ ◇ ◇
翌日、熟睡していたグレイシアが起きて来た。
グレイシアに昨日起こった騒動のてんまつを話す。
「という訳で、今日からニーアさんも俺たちのパーティーに入ってくれることになった」
「よろしくお願いします」
寝ぼけまなこだったグレイシアは片手を上げて応答する。
「それよりもおじさん、洗濯物やってくれた?」
「したさ」
「家の掃除もよろしくね、あと今朝の朝食はパンをトーストした何かがいい」
「オーライだ、今日も腕によりをかけて作ってやる、もちろんニーアさんの分もね」
ワイシャツの裾をまくってキッチンに向かうと、ニーアが俺の手を取った。
「一緒にやりましょう」
「ですね、俺たちが手を取り合えば出来ないことはないですよ」
俺の台詞に彼女はまた微笑んでいた。
居間で傍から見ていたグレイシアは俺を取り巻く光景に文句する。
「どうでもいいけど、惚気始めたりしないでね」
「しないよ」
「本当かな」
「本当だよ」
グレイシアに本当本当と反論するも、ニーアは俺の手を引っ張って顔を接近させ。
俺の頬に、雪解けのようなキスをしていた。




