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ムス川くんとナイ山さん


 昨日の雷雨が嘘のような、本日快晴なり。


 多少の湿気は気になるけれど、青空がきれいだ。

 部活を終えて、お昼を食べて、教室で勉強中。


 メンバーはいつもの4人。

 もちろん当たり前にウザ川くんも含まれている。


 口を滑らせた私が悪いのだけれど、ウザ川くんは藤宮さんから完全にウザ川呼びで固定化されてしまった。


 さすがに罪悪感でもうウザ川くんとは呼びづらい。

 人が呼んでいるのを聞くと、なかなかにひどい呼び方をしてしまっていたことに申し訳なくなる。反省……。


 でも当のウザ川くんは全然気にしていない。さすがはツヨ川くんだ。


 そんなツヨ川くんが、なにやらカバンをゴソゴソしだし、財布を持って教室の外に出ていく。どうやら飲み物を買いに行くようだ。


 ほんの少しだけタイミングをずらし、私も財布を持って教室を出た。


 先に歩いていた宇佐川くんが、私に気づいて振り返る。


「キリ山さんジュース?」


「ううん、お茶にしようと思って……」


「じゃあ体育館のとこの自販機おすすめ。お茶の種類1番充実してるかも」


「詳しいね」


「暇なとき、学校中の自販機の品揃えチェックして回ってるから」


「そこまで暇なことってある?」


 結局宇佐川くんおすすめの体育館の自販機まで来てしまった。

 緑茶、ウーロン茶、ジャスミン茶……バリエーションが他の自販機より豊富だ。


 ちょっと珍しいそば茶のペットボトルを購入し、ふと昨日のことを思い出した。


「そういえばさ、昨日海でなんて言ってたの?」


 私がその話題を始めた途端、さっきまで普通だった宇佐川くんの顔が不機嫌になった。


「ここでその話はしませーん」


「え? なんで? ここならちゃんと聞こえるからさ。昨日なんて言ってたのか教えてよ」


「雷に夢中で俺の話を聞いてくれないピカ山さんには秘密でーす」


「ちょっと。ピカ山って誰。もうかすってすらいないんだけど」


「そんなに知りたいなら今日海で言うよ」


「え? なにそれ。海で言うなら今言ったっていいじゃん」


「全然よくない。キリ山さん全然分かってない。ナイ山さんだよそれじゃあ」


「もう山さえつければ何でもいいと思ってるでしょ。気になるから。今言ってよ」


 宇佐川くんはムスッとした顔で、乱暴に自販機のボタンを押した。

 取り出し口からカプチーノの缶コーヒーを取り出すと、大きなため息をついて一人で歩き出した。


「告白は海でするって決めてんの!」






 私はその場でどのくらい立ち尽くしていただろう。



 ねえちょっと……宇佐川くん……。



 ねえ、それって……。



 それってさ。






 今、告ったんじゃね?

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