好きな人が幸せならそれでいい
「真美は好きな人いないの?」
授業が終わって弁当を食べているとき、私に突然そう聞いてきたのは親友の前田 優愛だ。
「う〜ん、、今はいないかな。」
嘘だ、私にはまだ好きな人がいる。
「そっか。私ね、今日告白しようと思うんだ。」
「え!急だね。誰にするの?」
「原園くん。」
私は動揺したが、うまく返せてたと思う。
「原園って、2組の原園 龍樹くんのこと?」
「うん、そうだよー。」
「そ、そっか〜。応援してるよ。」
「真美にお願いがあるんだけど付き添ってよ。ダメ?」
「しょうがないな〜。」
本当は居たくないけどここらで区切りをつけるべきだと思う。それに―――
その時、チャイムが鳴った。
「やばっ!次移動教室じゃない?」
「そうだね。急がないと。」
私は次の授業の準備をやり始めた。さっきの話を聞いて、気持ちは少し憂鬱だった。けど――
龍樹くんが幸せなら私はそれでいいかな。
2年くらい前まで私と龍樹くんはもともと付き合っていた。ただ、ちょっとしたすれ違いがあり、別れてしまった。だけど私はまだ龍樹くんのことが好きだ。想っているだけではしんどかったが、忘れることもできなかった。この想いを消したかった。
そして放課後になった。
あらかじめ誰も使ってない教室に龍樹くんを呼んでいたらしく、その教室の近くまで来た。
「よしっ!行ってくるね。」
「頑張ってね!」
「うん。ちゃんと見とくんだぞ。」
そう言うと優愛は龍樹くんがいる教室に入っていった。
やっとこの気持ちが終わると、嬉しいような悲しいような気持ちになった。
私は龍樹くんにバレないように教室の扉から様子を見た。
「前田さんだっけ?」
「そうだよ〜。いきなりだけど、原園くんていま好きな人とかいる?」
「いるよ。だから告白だったら気持ちは嬉しいけど、断るから」
龍樹くんがまだ誰のものでもないという喜びと、優愛が振られたことと龍樹くんに好きな人がいることの悲しさで複雑な気持ちになった。
「わ〜、言う前にフラレちゃった。」
「話がこれだけならもう行くよ。」
そう言って教室から龍樹くんが出ようとした。私が慌てて隠れようとしたとき、
「その好きな人って真美のこと?」
その言葉に私は固まった。正直に聞きたくない。すぐに逃げ出したかった。しかし、それは私に聞かせるような言い方だった。
「ちょっと噂を聞いてね。それで、好きなの?」
「好きだよ。」
私はそれを聞き涙を流した。嬉しい。まだ同じ気持ちだったんだ。
「本人には絶対に言うなよ。」
「う〜ん、それは無理かも。だって、、、」
私はそのタイミングで龍樹くんに抱きついた。
「私も龍樹くんのことがまだ好き。」
体に顔を埋めてたのでわからなかったが、彼は優しい声で言った。
「じゃぁ、もう一度付き合うか。」
私は嬉しくて何度も首を縦に振った。
「いやぁ~、ふたりともおめでと〜。」
祝福の言葉を言われたが、私は言わなくちゃいけないことがある。
「あのさ、優愛、、、」
私は言い淀んだ。優愛が好きだったのに申し訳ない、どんなふうに謝ろうか考えていた。
「なぁに、気にしないでよ。この前原園くんの好きな人、噂で聞いたからこんなことしたんだよ。そもそも私、原園くんが好きなんて一言も言ってないし、他に好きな人いるし。」
私はその言葉に嘘はないと不思議と確信した。
「ありがとうね、優愛。」
私はそう言って涙を流した。
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「ありがとうね、優愛。」
自分に対しての感謝の言葉を言い、涙を流した真美を見て、嬉しさと悲しさが入り混じった。
「それじゃ、邪魔者は帰りましょうかね。お幸せに〜。」
私はそう言って教室を出た。教室から出た瞬間に涙が出てきた。だめだ、すぐにここを離れなきゃ。そう思いその場から逃げるように走った。私はしんどくてもいい。ただ―――
真美が幸せならそれでいいから