表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黎明館殺人事件  作者: シッポキャット


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

32/45

16 場所を変えて

「立ち入った話もあるから、場所を変えようか」

荒川は『ある囚人の独白』を東風(こち)に手渡すと、席を立った。

「後ろの探偵さん? も、ご一緒にどうぞ」

岸本氏は気まずそうな表情をして顔を出した。


 レジで勘定を済ませ、領収書をもらった。支払いは編集部持ちだ。

アルトラパンの後部座席に岸本氏と荒川が乗り、東風が助手席に座る。荒川の指示に従い、徒歩で十分ほどのアパートに車で向かった。


 荒川が住むアパートは、二階建ての古ぼけた外観だったが、部屋の中は現代風にリノベーションされ、合理的でまとまりのある部屋だった。

「狭い所だが、まぁ楽にして下さい」

荒川は丸いテーブルに小さな座布団を三つ並べ、冷蔵庫から缶コーヒーを取り出した。

「毒入りじゃ無いから、遠慮なくどうぞ」

東風の顔色を読み取って、苦笑(にがわら)いした荒川が言った。


「さて、話は砂場秀樹(すなばひでき)の死因が自殺ではなく、自宅の階段から落ちた事故だったという所で止まっていたかな?」

荒川の確認に、三人はゆっくりと(うなず)いた。


「私は葬儀場で母親に、砂場の死因をそれとなく訊いた。すると自殺の話が出た。その話をそのまま立山に伝えた。だからその本に書かれている事は本当の話だ。だが、私はその時、違和感を感じた。

風呂に入るのも億劫(おっくう)(ヤツ)が、外に出て、自転車に乗り、車道に飛び出して、自分を痛い目に遭わすかと……」

淡々と話す荒川に、三人とも息を呑んで聞き入っていた。


「しばらく()って母親に、花を手向(たむ)けたいから事故現場を知りたいと問い掛けたが、悲劇を思い出すと言われ拒否された。他人の家の事をコソコソ(さぐ)るのは気が引けたが、あのノートパソコンのメッセージも気になっていたから、地域周辺の交通事故情報を調べたんだ。案の定、砂場が死んだ月の死亡事故は無かった」 

荒川は灰皿と煙草を取り出して(すす)めた。岸本氏は遠慮して、自分の煙草を(くわ)えた。


「どうして砂場秀樹の本当の死因がわかったんですか?」

東風が質問をすると、荒川は卓上の空気清浄機のスイッチを押した。


「砂場の近所には野田(のだ)という話好きの老人がいてね、近所を通りがかった時、聞きもしないのに教えてくれたんだ。夜中に怒鳴り声が聞こえて、またいつもの喧嘩騒ぎかと思ったら救急車が止まったので、慌てて見に行ったらしい。体の大きな息子が担架で運ばれていたから隊員に聞くと、階段から落ちて意識不明の重体だ、邪魔(じゃま)だから退()いてくれと怒られたと言っていた」

心の中で、先日訪れた砂場邸の向かいに住む、農家の老人を思い出していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ