9 カゴの中身
買い物カゴの中には、ハンカチやキーホルダー、ニット帽の他に、レジ袋が入っていた。
「かなり古いレジ袋だな」
期待を含んだ表情で岸本氏は言った。
「開けますよ」
経年劣化で今にも崩れそうな袋の結び目をほどいて、中を見た。
「これは……福本郁実のトランプじゃないですか?」
BICYCLEと書かれた大きなスペードがトレードマークのパッケージを岸本氏に手渡した。
「恐らくな。とにかく長居は無用。昼飯を買い込んで、市営団地で作戦会議だ」
岸本氏の自宅に戻り、早めの昼食を取った後、正方形のこたつ机を挟んで向かい合っていた。
天板にクラシックなデザインのトランプを置く。
「『ある囚人の独白』には、立山が内ポケットに入れたまま、その後トランプに関しての記述がありませんでしたね」
「革カバーに隠されていた手紙には、捜査の味方になると書いてあった。一度は確認しているはずだが。とにかく中身を見てみるか」
岸本氏はトランプを手に取り、パッケージを開けた。七並べの要領でマークと数字を並べていく。『ある囚人の独白』で記されてあった通り、数枚のカードにネームペンで走り書きがされてあった。
【♠A】○✓
【♠2】×
【♣3】○
【♣4】×
【♥5】○
【♦6】×
【♦7】○
【♦8】F
【♦9】○
【♣10】○
【JOKER】?
一応トランプの裏や箱を確認してみたが、書き込みや印のようなものは無かった。
「ある程度は、すぐにわかるな?」
岸本氏は試すように目を合わせた。
「こうすると、わかりやすいですよね?」
書き込みの無いカードを箱に戻し、テーブルの上で十一枚のカードを並べ替える。
一番右に【♠A】○✓
一番左に【♠2】×
真ん中にダイニングテーブルの代わりにテレビのリモコンを置いた。
奥の右から順に、
【♣3】○
【♣4】×
【♥5】○
【♦6】×
リモコンを挟んで左から順に、
【♦7】○
【♦8】F
【♦9】○
【♣10】○
そして、少し離して岸本氏の手前に、
【JOKER】?
を置いた。




