●空白の時間『ある囚人の独白』⑦
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●空白の時間
状況の変化はまもなく始まった。飲食をしていた参加者たちが、次々に眠りに落ちていったのだ。
私は警戒しながらも、眠った振りをした。砂場の大親友は、どこからか監視している可能性がある。
水元が倒れた後、タイミングの良い放送が、それを物語っていた。
私は嘘寝を悟られないよう俯せに寝転んでいた。室内が静かになって、もどかしい時間が流れた。そして中央のドアが開いた音がして、複数の足跡が聞こえた。目を開ける誘惑に負けそうになったが、必死に堪え状況に身を任せた。
参加者それぞれが、どこかへ運ばれているようだった。ドアに近い者から順に運ばれて行き、私の番が回って来た。手拭のようなもので目隠しをされ、負ぶるような形で運ばれて行く。薄目を開けてみたが、目隠しで負ぶっている者の姿は見えなかった。
ドアを出た後、五メートルほど廊下を歩き、右手のドアを開けた。部屋に入り、ゆっくりと床に下ろされた。運んだ人物は無言で出て行き、ドアを施錠した。
ポケットに入れていた携帯電話や財布、時計や護身用の小型ナイフなども取り上げられていた。
準備していた様々なものは、ダイニングルームの荷物籠の中に残してきた。相手が一枚上手だったという事か。
私は目隠しを外した。窓はどこにも無く、物置部屋のようで、広さは二畳ほどだった。暗闇の中手探りで様子を確かめたが、全くと言っていいほど何もない。電灯のスイッチは部屋の外側についているようだった。
ここにどれくらい閉じ込められるのだろうか? いざとなったらドアを蹴り飛ばしても脱出するつもりだが。他の参加者たちはどのような待遇を受けているのだろうか。この真っ暗な狭い部屋でじっとしていると精神的にやられる。思考を止めないよう、様々な考えを巡らせていった。
私は気疲れからか眠ってしまっていたようだ。暗闇に加えて時計が無いので、時間の感覚はとうに無くなっていた。ここに閉じ込められてからどれくらい経ったのだろう。
ドアノブを回すと、驚いた事に抵抗なくドアが開いた。廊下は薄暗かったので、眩しいほどではない。警戒しながら、まずは記憶を頼りに左手のダイニングルームへ向かった。自分の手荷物を確認するためでもあったが、水元の様子も気懸りだった。
ドアを開けると、ダイニングテーブルを挟んで真正面にドアがあり、その真上に振り子時計が見えた。
時刻はまもなく六時に指しかかるところだ。夕方の六時であれば、四時間近く眠っていた事になる。朝であればそれ以上だが、肌感覚で夕方だと判断した。
テーブル下を確認すると、荷物はそのままにしてあり、水元は仰向けのまま放置されていた。テーブルのナフキンを顔にかぶせ、手を合わせた。
水元は誰に、どのように脅されて、砂場の復讐劇の片棒を担いだのだろうか。毒は自覚して飲んだのか、飲まされたのか。水元の服やズボンのポケットを調べてみたが、メモや書き置きは見つからなかった。
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