DESIRE
蝶になる夢を、私は見た。
青白く燦めく月に照らされた
私の小さな身体はともに光り輝き
深く静かな夜にはばたいた。
いくつもの街の空を舞い
地上に散りばめられたネオンの星空を眺め
やがて私は
夜空を貫く高層ビルのてっぺんで羽根を休めた。
私の瞳に映る
眠ることを忘れた街の姿は
それはそれは酷く歪んでいるように見えた。
自分がこんなにも醜い世界に存在する理由
それさえも無意味で
私は泪を浮かべながら
目が覚めても自分は蝶でありますように、と祈った。
刹那の生命でも美しく燃やし尽くして果てる
有意義な存在でありたいと。
祈りは虚しく
自分の身体の一部である
一片の光り輝く羽根は剥がれ
夜の空に螺旋を描きながら堕ちていった。
粉々になった羽根は
もはや私の一部ではなく
鱗粉のひと破片さえも所有することを許してはくれなかった。
そして飛べなくなった私はひとり
その場所に残された。
目が覚めると
私は私であって
決して蝶などではなかった。
蝶になる夢を、私は見た。
明日はいったいどんな願望を見るのだろう……
読んで頂き、ありがとうございました。
あなたの心に出逢えたことを感謝します。