レイクの実力
俺はルドルフと正面から対峙をする。やはり、最初会った時とは比べ物にならないくらい強くなっているのがわかった。
「レイク、僕の本気を受け止めてくれ!」
「勿論だ。全力で来い!」
ルドルフが槍を構えるのと同時に目つきが変わった。人が本気で集中している時の目だ。そして、全身に闘気を纏った。
試合開始と共にルドルフは他のクラスメイトより数段速い速度で接近した。
その勢いのまま、俺の体の中心である鳩尾を狙ってきた。
俺はそれまでずっと下げていた剣で槍を右に流しながら左に動いた。
ルドルフは俺に流されたのを利用して半回転し、石突で突きを入れてきた。
俺はそれを後ろに下がって避けた。避けた後すぐに攻撃できたが、まだ一連と動きの先があると感じたためやめておいた。
ルドルフは逆に半回転しながら槍をふりおろしてきたが、それを受け止めた。俺の剣がびくとも動かない事を確認したらバックステップで下がった。
「は〜。やっぱりレイクには全く敵わないね。降参するよ」
そう言って槍を離した。試合終了の合図がかかると俺はルドルフに近づいた。
「落ち込むな。前よりずっと動きが良くなってる。
この年でそれだけ動けたら十分すぎるだろ」
「いつかレイクの全力を相手できるように
なりたいんだけどね」
「それは難しいな。世界最強の俺に本気を出させるなら
相手もそれに近くなきゃいけない。
それには多くの物が不足している」
「不可能って言われないだけマシかな。相手してくれて
ありがとう」
「いつでも相手するぞ」
―<ニコラウス・メルケル>―
俺は今、衝撃を受けていた。何故なら、目の前の戦いが入学したての者達の戦いではなかったのだ。
ルドルフは、スピードと技術は大人の冒険者と同等だった。だが俺は、王都の騎士団に居た事もあるくらいの強さだからまだ勝てる。
しかし、レイクに至っては底が見えなかった。
身体のそれぞれの部位全ての動きが洗練されていた。その強さは王都騎士団の団長クラスでも相手にならない事は予想できた。
昨日、朝礼の後校長に呼び出されて、生徒にレベルが違うのが混じっていると言われた時は、せいぜい「生徒」の枠での話だと思っていた。だが、違う事に今気がついた。どんな手練れでも勝てないと思わせる動き、それは「人間」としての枠から外れているのだと分かった。
俺は、これから3年間で教える事があるのだろうか?
むしろ、俺が教わる側に回るのではないか?
そんな想像が容易にできた。
これからの授業を校長とレイクを交えて相談しないといけなさそうだ…
とりあえず、この授業を乗り越えるか。
―<レイク・ジルドール>―
俺とルドルフの試合が終わった後、先生が1人1人に対して強化すべき点を話して、課題を与えていった。
それが終わるとなんと、俺VSクラスメイトで模擬戦をすることになった。なぜか俺とルドルフ以外、全員がやる気だった。
試合開始の合図で突撃してきたのはジャックとカズハだった。
右からはカズハの居合切りが、左からはジャックの斧の縦振りが迫ってきた。正面からはエレナの魔法、後ろからはライムの魔法、上からはヤルミラの魔法。
全方位固められてしまった。この連携は会って2日と言われても信じられないものだった。
だが、俺には効かなかった。
まず、カズハの刀を剣で受け止め、ジャックの斧は柄の部分を掴んで止めた。それと並行してサンダーボールを発動させ、飛んできた魔法にぶつける。
魔法が消えたのを確認すると、カズハを弾いて空いた剣でジャックを切る。
カズハが再び接近していた。今度はカズハの刀を流してから切った。さっきからエマが矢を何本も放っているが戦闘スピードのついていけず、当たらない。
次に、前線に出ていない7人にサンダーボールを放った。
ルドルフとルフィーロは回避した。クリスは魔法で防御したようだ。だが、他の4人は防ごうとするも、俺の魔法の威力にやられてしまった。
これで残るは、ルドルフ、クリス、ルフィーロだけとなった。
ルドルフが高速で突きを連打してくるが全てを流す。
その間にルフィーロが後ろから足を狙って切ろうとしてきたが、飛んで避ける。空中でルフィーロに蹴りを入れて吹き飛ばす。そんな中でも、ルドルフの正確な槍を弾く。着地と同時に魔法が着弾しそうになったが、サンダーボールで相殺する。
安全を確保した所で、ルドルフの槍を叩き落とす。そこに出来た隙に首に攻撃を入れると、ルドルフは転移された。
直後に魔法が来たがサンダーバレットで魔法ごとクリスを攻撃する。
すると、立っているのは俺だけになった。
全員が復活するが、今日は疲れただろうから、と解散になった。