第87話 悪役令嬢、王女殿下に秘密の一つを明かし、キマシタワーしてしまう(!?)
(悪役令嬢・プレイヤー視点)
悪役令嬢は、王女殿下からの質問を受け、自身の秘密の一つを明かしてしまいます。
くあーっ、疲れたーっ!
まさか、このタイミングでここまでアドリブ力を問われる展開になるとか、想定外よ。
いずれバレるだろうなとは思っていたけれど、速攻でメグウィン殿下に見抜かれてしまうとは。
まあ、でも……マルカちゃんのこと、打ち明けたのは正解だったかな?
ゴーテ辺境伯領に行けば、いずれ分かっちゃうことなんだし、下手にウソ付いたりするよりかはずっとよかった、わよね?
うん……(結果的にまたメグウィン殿下を泣かせちゃったけれど)そう思いたい。
少なくともメグウィン殿下を本気で怒らせることにならなかったのだから、結果オーライってヤツよ!
「……」
で、今もわたし、メグウィン殿下に手を握られてしまっている訳なのだが。
うぅ(触覚がないから、いまいち実感に乏しいとはいえ)冷静になってみると、この光景もたまんないですわーっ!
涙を零すメグウィン殿下に手を両手でギュッとされている悪役令嬢メリユ。
今HМDに見えている光景だけでも、十分神スチルに匹敵する光景よ!
「……それで、そのメリユ様、お身体のお加減はいかがでしょうか?」
「そ、そうでございますね。
今夜一晩ぐっすり休めば回復するかと思いますわ」
上目遣いでそんなことを尋ねてこられるメグウィン殿下に更にドキリとさせられながらも、わたしはかろうじて平静を装って答える。
危ねーっ、今のメグウィン殿下の表情、めちゃ破壊力あったわーっ!
「……メリユ様、補佐役であるわたしには、本当のことをお教えくださいませ!
聖なるお力のご行使で、どれほどのメリユ様のお力を消耗されてしまうのか、わたしは知っておく必要があるかと存じます」
うっ、メグウィン殿下、急にずいずい来るな!?
お姉さん、臨界点突破しちゃうよ!
「……メグウィン殿下」
「ゴーテ辺境伯領へのご移動と、マルカ様のご救出には、ご移動のご命令をご使用になられたかと存じます。
それで、どれほどのお力を消耗されたのでしょう?」
うーん、メリユアバター的には、そういうパラメータはないはずなのだけれど……こればかりは後で辻褄が合わなくならないよう気を付けながら答えるしかないよね?
あ、でも、コンソール弄っていると顔が青褪めてきていたとか言っていたし、コーディング作業量に合わせて、メリユの疲労度パラメータ的なものが変化していたりするのかしらん?
МPにHP、LPとかない世界のはずなんだけれど、これも付随エフェクト的なものなのかなー?
また、多嶋さんに訊いてみるしかないか、はあ。
ま、それはさておき、どれくらいの力の消耗になっているか、か。
少なくとも二日前、護衛隊の皆様を移動させちゃってるからな。
移動に関してはさほど大きな力は使っていないということにしないといけない?
計算上は、一パーセントくらいにしておくのがいいか?
多分二日前、シリンダークリッパーを行使したヤツの消耗量をかなり大き目に設定しておかないと辻褄が合わなくなっちゃうだろうかなあ。
シリンダークリッパーは、例えばあれで五十パーセント消耗くらいがよろし?
アバターデータ変更=変身は、二パーセントくらいかなあ。
マルカちゃん救出で使ったワールドタイムインスタンスへの介入は三パーセントとか?
あー、面倒臭ぇ、こうなったら、自前でメリユのМP設定して、数値化できるようにしておくか?
「メリユ様?」
うひゃ、メグウィン殿下も近ひよー!?
ハードリーちゃんもそうだけれど、この二人、メリユに対しての距離感バグってね!?
「は、はい、そうでございますね。
力が完全に満たされているときでいえば、一割ほどでございましょうか?」
うう、思考力低下するぅ。
「……先ほどお目覚めになられたときのお力は、いかほどでしたのでしょうか?」
「三割ほどでございますね」
あひゃ、ミスった!?
三割は少な過ぎか?
「……で、では、今は二割か、それ以下と!?
マルカ様のご救出が至急のご聖務だったということは理解できましたけれど、やはり相当ご無理をなさっているではないですか!?」
う、メグウィン殿下の顔色がちょっと悪くなっちった。
いや、まあね、現状メリユの場合、МP=LPみたいになってるしなあ。
二割切りそうって、また倒れそうじゃんか?
「メグウィン殿下」
「メリユ様、動かないでくださいませ」
うあああ、なんかわたし、メグウィン殿下に両手で両頬押さえられて、お顔をめちゃ近付けられてるんだが!
ハードリーちゃんのときの再現みたく、あれなの、あれよね?
いやいやいや、近過ぎるから!
そんな真顔でお顔をお寄せにならないでーっ!
きちゃーっ!
「……やはり、ご体温下がっていらっしゃるではないですか!」
おうふ、また、いや今度はメグウィン殿下とおでこごっつんこしちゃったよ。
……お姉さん、もう今夜眠れないかも。
「もう、こんなにもご無理をなさって!」
メグウィン殿下が頬を膨らませて、ちょぴっと怒りアピールされていらっしゃる!
かわゆす、かわゆす!
お姉さんの頭、バグっちゃうぅぅ!
……。
ああああああ、なんでスクショできんのよーっ!
「あの、メリユ様、ち、ちなみに、キャンベーク川でのご奇跡では、どれほどのお力をご行使されたのでしょうか?」
ってなことを思っていると、メグウィン殿下に場所を譲っていたハードリーちゃんが、いや、ハードリーちゃんも顔を青褪めさせている!?
「ええと、五割ほどでございますね」
「「「五割!?」」」
あれ、メグウィン殿下にハナンさんまですっごく驚かれているんだが?
ああ、そうか……お二人はハラウェイン伯爵領への護衛隊の移動で力を使ったのも知っているものね。
「メ、メリユ様……あの日は、ハラウェイン伯爵領へのご移動だけでも結構お力を消耗されていらっしゃったかと思いますけれど……はあ、それはお力を使い果たされるのもご無理ございませんわね」
う、メグウィン殿下、ベッド脇に腰を下されているんだが。
「メリユ様、本当に申し訳ございません。
わたしが素直にメリユ様のお言葉を受け止めていれば、お力を使い果たされることもなかったでしょうに」
えええ、またハードリーちゃんも泣き出しちゃってるし!
カオス過ぎるわ!
「いえ、先ほども申しました通り、ハードリー様はどうか謝らないでくださいませ」
「ですがっ」
「ハードリー様、メリユ様はこういうお方なのですから、感謝の気持ちだけお伝えすれば良いのだと思いますわ。
ですが、メリユ様、今夜はこれ以上、お力のご行使は絶対に禁止ですから!
補佐役として、今夜は一晩このお手を離しませんから!」
……はい? 今、何と?
ぉ、お姉さん、とんでもないことを聞いてしまったような気が!?
「……メグウィン殿下?」
「お手を離せば、いつお力をご行使されるか分からないのですもの、今夜はご一緒に寝かせていただきますね」
ええええ、何笑顔でとんでもないことをおっしゃってるの!?
メグウィン殿下と悪役令嬢メリユがいきなり同衾ですとぉぉ!?
「分かりました。
それでは、わたしもおそれながら、ご一緒させていただければと。
それに……元々わたしの寝台ですし」
おいぃ、ハードリーちゃんも何使命感に目覚めたかのように、言っちゃってんの!?
……いや、考えてみれば、わたし今ハードリーちゃんのベッドお借りしているのよね。
そこに三人で仲睦まじく寝ると、うん。
キマシタワー!
って、古のオタ知識が溢れ出てきちゃうのーっ!?
「はあ、マイクオフ、はあ、はあ。
もうオタ人格を押さえきれないよぉ」
配信系のおかげでここ二十、三十年くらいのオタ知識はしっかりと頭にインプットしているわたし。
そのおかげで、多嶋さんとも会話が弾んでしまうくらいのオタ女子を舐めるな!
これはわたしの百合センサーがビンビンに反応している!
そう、エターナルカームの王子様陣と合わせての醍醐味である女子間の好感度管理。
もちろんエターナルカームは百合ゲーではないのだけれど、どの女子と仲良しグループになるかは好感度管理されているのだ!
「ううう、シナリオライターさん、分かって過ぎ!」
まさかのメグウィン殿下、ハードリーちゃん、悪役令嬢メリユで仲良しグループを作ってしまえるとは!
これはもう今夜は寝かせない的展開なのでは……?
(いや、メグウィン殿下、ハードリーちゃんたちは寝るだろうけれど、わたしが寝れん、というか、わたしを『寝かせないぞ』的なヤツでは?)
「よ、よし、受けて立とうじゃないのよ!」
そうよ、シナリオライターさんがそのつもりだというなら、わたしだって徹夜だろうが何だろうがやってやろうじゃないのよ!
わたしは、完徹を覚悟の上で、お泊り会イベに備えるのだった。
先週末は仕事が入ってしまいましたため、遅くなり申し訳ございません、、、
相変わらず酷いタイトル、、、まあファウレーナらしいですが。




