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悪役令嬢、母国を救う  作者: アンフィトリテ
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第85話 悪役令嬢、ハラウェイン伯爵令嬢の部屋に戻り、天国と地獄を見る(!?)

(悪役令嬢・プレイヤー視点)

悪役令嬢は、ゴーテ辺境伯領での聖務を終え、ハラウェイン伯爵令嬢の部屋に戻り、天国と地獄を見ることとなってしまいます(!?)


[ご評価、『いいね』、ブックマーク登録いただきました皆様方に厚くお礼申し上げます]

 危ねーっ、未だに心臓がバクバクしているんだが。


 いや、マルカちゃんの暗殺一件だけでもマジ紙一重って感じだったんだけれど、今さっきのゴーテ辺境伯領城に“Translate”したヤツ、マジで紙一重だった。

 偽聖女見習い一味の足取りを軽く追おうとする前に、ゴーテ辺境伯領城の近くにまで飛べたついでにさ、『領城のワールド座標も記録取っておくか』って適当にテラスっぽいところを“Pick”したつもりだったのに、まさか領城内の廊下が“Pick”されていて、飛んでみればソルタ様が目の前にいらっしゃるじゃないのよ!?


 あれ、もしソルタ様と座標被っていたなら、どうなっていたんだろ?


 怖ぇ!

 モザイクかかって『お見せできませんわー』的な何かになってしまいそうで、怖ろし過ぎる。

 いや……VRMxファイルのアクター同士が被っても、そんなことにはならんか?

 タダ、ゲームエンジン的に何かのエラーにはなりそうよねー。


 はあ、次回からはちゃんと“Pick”できているか確認するようにしよう。

 反省反省。


「……にしても、廊下が“Pick”されてたとか、テラスのガラス窓が開いていて、その向こうの廊下の床が“Pick”されてたってことかなあ?」


 何にせよ、あの状況で、音声上では冷静っぽく振る舞えた自分自身を褒めてあげたいわ!

 だって、ソルタ様の背中がそこに見えていたのよ!

 ま、ヒロインちゃんと出会ったばかりのソルタ様は一般にも評価低めなんだけれど(プレイするのは女性プレイヤー・ユーザーばっかだしね)ヒロインちゃんの働きっぷりに考え方を改めてからは評価爆上がりだったするのよね。

 うん、わたしも『ヒロインちゃんと会って以降』のソルタ様は好き。


 ウェーブががったショコラブラウンの御髪と、(女性に興味なさげな)クールな細い目。

 真面目ぶっていて、めったに笑わないんだけれど、ヒロインちゃんに心許してからは、口元(主に口角)の変化が分かってドキドキするのよ!


 ううう、背中しか拝めなかったのが悔しいけれど、お声を拝聴できただけでも良しとしよう。


 どうせゴーテ辺境伯領には行くことにはなりそうだし、そのときにはご尊顔も拝めるだろうしね。


「さて」


 取り合えず、ワールドタイムインスタンスを停止(時間停止)させて、ハラウェイン伯爵家からの献金が収められた箱らしきものは回収済だし、ハードリーちゃんのお部屋に引き返すことにしようかな?


 うーん……最後は時間停止を使っていたとはいえ、マルカちゃんを助けるのに結構時間使っちゃったし、メグウィン殿下、ハードリーちゃんたちが戻ってきていないか、すごく心配。


「大丈夫……よね?」


 わたしは少し不安を抱えながらも、メリユ(大)からメリユ(小)アバターに切り替えると、ハラウェイン伯爵領城のハードリーちゃんのお部屋へと“Translate”したのだった。






「セーフ、ぎりセーフ!」


 時間停止状態のハードリーちゃんのお部屋では、何かの書類に目を通しているらしいハナンさんだけがいて、天蓋付きベッドが並んでいる辺りは、小さ目のシャンデリアも消されたままで、どうやらバレていなかったみたい。

 まあ、現代の夜に比べちゃ、やっぱり暗いしね、ベッドが膨らんでいれば、誤魔化せるものなのよ(ラッキー!)


「さて、ベッドに潜り込んで、メグウィン殿下とハードリーちゃんを待つとしましょうかね………」


 ベッドに潜り込もうとして、HMDに描画される視界の下の方にメリユが初日着ていたドレスが映り込んでいるのに気付いてしまうわたし。


 …………。


 ………。


 ……。


「ぐむむぅっ!!」


 わたしのお馬鹿ーっ!!


 なんで、メリユ(小)からメリユ(大)に変身するとき、メリユ(小)のマッパーデータのバックアップ取ってなかったし!

 そりゃそうじゃん!

 メリユ(小)のVRMxファイルって初日のドレス姿のそれだし、そう、ドレスデータも含んでのアバターデータだし!


 さっき寝込んでいたときのメリユ(小)のデータなんて微塵も残っていない訳よ!


 ああああ、前にもやらかしていたのに、またもやってしまうとはお馬鹿過ぎる!


「そもそも、わたし、どんな寝巻着ていたんだっけ?」


 ネグリジェっぽいヤツだったっけ?

 うーん、さっきはハードリーちゃん、メグウィン殿下と色々あり過ぎて、自分の服装とか全然覚えとらん……。


 うろ覚えで再現できるものでもないしなあ。


 ネットのフリー素材拾ってきたとしても、多分、ハードリーちゃんやメグウィン殿下には速攻でバレそうだし。

 そもそも、あの寝巻、本編で一度出てきたことがないような……って、いや、今十一歳なんだし、本編で見ている訳がないだろうがよ、わたし!


「あー、これ、マジであかんヤツですわ、ははは。

 …………諦めて、首まで布団被ってよ」


 思わずエセ関西弁が口に出てしまうくらいにわたしは動揺してしまっていた。


 何にしても、ゲーム世界内での『今夜』、メリユ(小)が眠りにつくところまではやって、ワールドタイムインスタンスを停止させるつもりだったんだ。

 こんな中途半端なところで止めたまんまで寝るとか、眠ろうにも眠れないわよ!


 こうなったらアルファ版テスターの意地で、適当な言い訳でっち上げて乗り切ってみせますわよ!

 悪役令嬢メリユのど根性(?)を舐めんな(我ながら随分入れ込んでるなあ)!


「よし、“Move world time!”」


 そう、こんなところで止めていたって、リアルじゃ午前二時、三時と時間が進んでいっちゃうんだもの。

 どうせなら、気持ちよく眠りたいじゃないのよ!


 って、ワールドタイムインスタンスの停止を解除したのだけれど……。


 カチャリ、ギィ。


「っ!?」


 ぃ、いきなりかよ、おい!!


 ハードリーちゃんのお部屋の扉が開く音がした!

 いや、まあね、領城のメイドさんである可能性もあるっちゃあるんだけれど……状況的には、湯浴みから戻ってきたメグウィン殿下とハードリーちゃんの可能性が高いじゃない?


 リアルのベッドの中で、わたしは背筋にまで嫌な汗が滲み始めるのを感じていたのよ。


「……多嶋さんの悪意を感じる、シナリオライターさんの悪意を感じる。

 ぃ、いや、多嶋さん、わたしのログデータ見ながら、メグウィン殿下とハードリーちゃんを動かしていたりしないわよね?」


 ホントにね。

 マルカちゃんの暗殺未遂にしろ、ソルタ様激突寸前アクシデントにしろ、何かしら狙ってんじゃないのって思っちゃうじゃない。


 確かに、シナリオライターさん相手に(心の中で)もっと詰め込んでいいとは願ってしまったけれど、こういう心臓に悪いイベを詰め込んでいいとは全く思っていないのよ、わたしは!


 なんでこうも全てのイベがぎりぎりに進行しとるんだ!

 納得いかねーっ!


「ハナン、メリユ様は?」


 っ!

 きちゃーっ!


「まだお休みになられていらっしゃいますが」


「そう、よかった」


 ああ、湯浴み後のメグウィン殿下、見たい、超見たい!

 昨日の夜も見ちゃいるけれど、今夜はどんな寝巻を着ていらっしゃるのかしらん!?


「それでは、わたしがメリユ様のご体温を確かめますね」


 き、きちゃーっ!

 (小声ながら)ハードリーちゃんのお声も聞こえる!

 ハードリーちゃんの湯浴み後のお姿は初めて!

 ああ、お姉さん、ドキドキしちゃうよ?


「っ」


 って、おい!

 体温確かめるって、こっちに来るんかい!?

 ヤベェ、全然心の準備ができてない!?


 うぅ、お姉さん、ホントにどう振る舞ったらいいか分からないよ?


 いや、もうこうなったらむしろ『今目覚めました』って振る舞うのが正解だったりするのか!?

 誰か答えて、教えて、お願い!


「……メリユ様、まだお眠りになられていらっしゃいますか?」


 ち、近ひ!??

 あああ、何て優しいお声で話しかけてくるのよ、ハードリーちゃん!

 も、もうお耳がゾワゾワするの!


 まさか、これが本物のASMR!?


 ぃ、いや、ASMRは、と、ともかく、ヒロインちゃん相手でもこんなに優しく接してくるシーンあったか!?

 まさか、エターナルカームにおける『世話好きキャラ』の真骨頂、ハードリーちゃんのこんなお声を聞ける日が来るなんて!


 ああああ、なんで録音してなかったしっ!!


 わたしはリアルのベッドの中で必死に目を瞑りながら(意味あるのか?)、悶絶しそうになっていた。


「メ、リ、ユ様?」


 うぉうぉうぉ、ゾワゾワするぅ!?

 こ、こんな状況でウソ寝なんてできる訳じゃん!


 わたしが思わず、目を開けると……なぜかHMDの有機ELパネルも、瞼を開いていくエフェクトと同時に視界が開けていくところで……すぐ傍でわたしを覗き込むハードリーちゃんがいて……。


 えっ、髪下ろしてるっ!?


 ぃ、いや、湯浴みしたところなんだから、そりゃそうかもしれんけど、え?

 キッ、キャー、髪下ろしたロング(湯浴み直後)ハードリーちゃんも超絶かわゆい!!

 三つ編みシニヨンのハードリーちゃんもめちゃ尊いけど、これも最高に尊いわ!

 え、もしかして……こんなハードリーちゃんとお泊り会できんの!?


 ちょ、超絶神展開またきちゃーっ!!


「ハ、ハードリー様」


 わわっ!

 思ったほどには声が震えなかったわたしを褒めてもらいたい。


 いや、だって、こんなの生唾飲んじゃうわよ!

 だって、こちとらベッドに寝ていて、これ以上は引き下がれないんだし、それなのに、ハードリーちゃんは顔を近付けてくるんだし!


「起こしてしまいましたでしょうか?

 お休みのところ、申し訳ございません」


 えっ、えっ、何!?


 ハードリーちゃんの顔、ポリゴン細か過ぎん!?

 なんか、お疲れな感じの少し充血した目だとか、小さな吹き出物(わたしのせいで徹夜したせいか!?)とか、目の下のクマ(これもか!?)だとか。

 あー、マルカちゃんとは別の意味でリアリティーがすごい。


 うぅ、ごめんね、わたしのせいで、気苦労かけちゃったのよね?


 なのに、そんな優しく微笑まれちゃったら、お姉さん、マジでどうにかなっちゃうから、うぅぅ、勘弁してぇ!!


「あの、メリユ様、少しお熱を測らせてくださいましね」


 えっ!


 えっ!?


 何、キ(ス)……じゃないわ、お顔とお顔が、ううん、おでことおでこが、く、くっついて、キャー、すごいことになっちゃってるぅ!??

 あああああ、プレイヤー昇天レベルのイベ、きちゃーったーっ!!


 ああ、もう、HMDがないとハードリーちゃんを見られないって分かっていても、HMD取っ払ってハードリーちゃんと直接おでこをごっつんこしたいんだが!?


 シナリオライターさん、『悪意を感じる』とか言ってしまってごめん!

 あなたが神か!?

 もはや本編の『女子同士イベ』が霞むレベルで、超絶神展開が更にパワーアップしているんだが!


「……あら?」


 息がかかりそう、かかってそう?


 いや、マジごめん、ハードリーちゃん。

 うう、そろそろオタ人格を完全開放してしまいそうなんで、そろそろ離れてもらえると助かるんだけど。


「メリユ様のお肌が……スベスベに?」


 ……ん?

 ありゃ?


 あー……、メリユ(大)に一度変身して、メリユ(小)に変身し直してるから、もしかしてお肌コンディション(?)にリセットかかった?

 あれ? これ、もしかしてまずくね?


 んん、背後のメグウィン殿下の背後にヤバげなオーラを感じるんだが。

 あのー、メグウィン殿下、どうかなさいましたか!?


「メリユ様、少しばかりよろしいでしょうか?」


 はい……正直に言おう、何か怖ろしいものを見た、とだけ。

※休日ストック分の平日更新です。

『いいね』をまたもいただきまして、アンフィトリテは大変感激しております!!

本当に大変励みになっております!

また、新規にご評価、ブックマーク登録いただきました皆様方にも心からの感謝を!


師走ということもあり、本業の方もなかなか厳しい状況になってきておりますが、皆様の応援、ご支援のおかげで、何とか頑張れそうでございます!


さて、マルカちゃん、ハードリーちゃんとも距離を縮めることのできた悪役令嬢メリユですが、次回メグウィン殿下とも何かありそうです。

何しろ正さ……ぃえ、何でもございません、、、

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