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悪役令嬢、母国を救う  作者: アンフィトリテ
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第7話 悪役令嬢、王子殿下・王女殿下と朝食を共にする

(悪役令嬢・プレイヤー視点)

広間での朝食に呼ばれ、王族の方々との挨拶のあと、王子殿下、王女殿下と朝食を共にします。


[投稿したてですのに、早速ご評価、ブックマーク登録いただきました皆様方、心よりお礼申し上げます]

 ああああ、神過ぎる!

 昨日お世話になったアメラさんに連れられて朝食会場の広間まで来たのだけれど、マジで神だ。

 あとからいらっしゃった国王陛下、王妃陛下、側妃殿下、第一王子殿下、第一王女殿下と間近で挨拶する機会を得たのだけれど、すぐ傍で生きて動いているように見える王家の方々に『尊い』の一言しか出てこない。

 まず第一に、カーレ第一王子殿下の笑顔。

 マジ尊い。

 王妃陛下似の甘いフェイスに浮かべられる笑みは、十代女子のハートを一瞬で射抜いてしまうことだろう。

 いや、国王陛下も超イケ面だし、髪を上げた王妃陛下や側妃殿下も、超美人さんだったけれど、カーレ殿下の3D化の作り込みは半端なかった。

 第二に、メグウィン第一王女殿下。

 メリユと同い年の彼女は、国王陛下の血筋といった感じの顔立ちだけれど、雰囲気がこう柔らかく、年相応のかわいらしさがあるのだ。

 王妃陛下、側妃殿下、他のメイドさん方は皆前髪を下ろされてはいないのだけれど、メグウィン殿下だけ下ろされているその前髪の感じがまた日本人好みで尊い。

 学院入学後は、ハードリーに続いてヒロインに絡んでくるメグウィン殿下だが、これまたよい子なのだ。

 こんな子とお友達になれた日には、何と恵まれた人生かと思い至ってしまうに違いない。


 わたしの席は、最初少しお二人から離された位置にあったのだけれど、メグウィン殿下が『これでは失礼です』と言って、隣の席にまで寄ってきてくださったのだ。

 メグウィン殿下、マジ天使!

 うん……カーレ殿下が睨んできたけれど、まあそれは仕方あるまい。

 何せ、こちらは見た目悪役令嬢ですからな。


 さて、朝食だけれど、食器は超一流。

 されど、内容は結構質素ってな感じだ。

 まあ中世ヨーロッパの朝食って、王族、貴族でも、それほど豪華ではなかったらしいからね。

 炭水化物はオートミールとパン、タンパク質はベーコン、飲み物はミルクと。

 あと、デザートにリンゴがあるくらい。


 コントローラで手を動かすと、それなりに食べている感は出せるけれど、口には当然何も入って来ない。

 まあ所詮はHMDなので、雰囲気を楽しむだけだ。


 オートミールを食べる振り?をしていると、お隣のメグウィン殿下が話しかけてこられる。


「メリユ様、昨日の夜はゆっくりお休みになられましたか?」


「ええ、おかげさまで。

 色々ご配慮いただき感謝しております」


「それはよかったです」


 貴賓室付けのメイドさんとかミューラとの会話でも思ったけれど、何気なくわたしが話した内容に即した反応をしてくれるAIがまた尊い。

 これ、本当にどこまで本編ルートから離れて行けるんだろうと思ってしまう。


 そんなわたしだったけれど、


「……メグウィン第一王女殿下、昨夜何かあったのでしょうか?」


 ふと、開花したばかりのヒマワリのようなメグウィン殿下の目元がやや腫れているような気がして、つい尋ねてしまった。


「っ」


 すると、メグウィン殿下はハッとしたようにわたしを見詰めて、


「やはり、メリユ様は全てをお見通しでいらっしゃるのですね。

 後ほど、兄とわたしとの席を設けますので、その際にお話させていただければと存じます」


 と小声で告げられた。

 うん……訳が分からない。

 ついにAIが変な台詞を生成し始めてしまったのか、何か強制イベントの台詞を吐かされる状況に突入して、メグウィン殿下はそう言わざるを得なかったのか?


「それにしましても、メリユ様がお兄様から伺っていたお人柄とはまるで違っていらっしゃったのでホッといたしましたわ」


「カーレ第一王子殿下からでございますか?」


「ええ、わたし、お兄様は女性を見る目をお持ちではないのではないかと今回の件で思いましたもの」


「メグウィン」


 カーレ殿下に一睨みされ、わたしは苦笑いする。

 まあ、カーレ殿下のわたし=メリユ・マルグラフォ・ビアド辺境伯令嬢の第一印象はゲーム開始前時点の我儘令嬢だったときのものであるだろうから、仕方のないことだろう。

 そもそもわたしが勝手し始めたのは、昨日の夕方以降からなのだ。

 まるで別人のようなわたしに警戒されるのも当然のことだろう。


「はあ、メリユ嬢。

 妹が騒がしくしてすまない。

 急に王族と朝食を共にすることになって驚いただろう?」


「いえ、まだデビュタントも済ませていない未熟なわたしに王族の方々と同席させていただく機会をお与えいただけるなんて、大変に光栄なことと存じております」


「ふむ、メリユ嬢は随分と落ち着いているな。

 普通のデビュタント前の貴族令嬢なら浮かれ上がるか、緊張し過ぎて何も話せなるかのどちらかだと言うのに」


「ご過分なお言葉を賜り恐悦至極でございます」


 ふぅ、乙女ゲームをやり込んでいる分、この程度の会話くらい読み(聞き)慣れてはいるものの、自分がいざ話す側になるとどうにも緊張する。

 それにしても、(今は自分が来客であるとはいえ)カーレ殿下がこれほど積極的に話しかけてくれるとは、まさに神展開だ。

 まだ悪役令嬢固定化ルートに入っていないおかげと言えるだろうか?


「以前、メリユ嬢にお会いしたのは一年ほど前のことだったか?

 それにしても、たったの一年で随分と印象が変わったものだ」


 なるほど、メリユ嬢が初めてカーレ殿下にお会いしたのは一年前、十歳のときだったかあ。

 そりゃあ、悪役令嬢だもの、カーレ殿下にウザがられるほど猛烈アタックしたんだろうなあ。


「それはお兄様がメリユ様の心根をしっかりと推し量ることが叶わなかったからでしょう?

 心の成長の速い年頃とはいえ、心根がそんなに急に変わったりするとは思えませんわ」


 おうふ、メグウィン殿下が味方にまわってくださるとか、神展開が更に神がかってきているではないの!?


「ははは、メグウィンは手痛いことを言う。

 しかし、一年前のメリユ嬢が自由奔放な令嬢として振る舞われていたことは確かだ。

 あれは一体何だったのかな?」


「お兄様、メリユ様に失礼です」


 まあ、こればかりは不思議に思われても仕方がないだろう。

 (一年前の)悪役令嬢メリユの素を知っているならば、当然の質問とも言える。

 だから、わたしは、


「構いません。

 その節はカーレ第一王子殿下に対して大変失礼なことをいたしてしまい、本当に申し訳ございませんでした」


 取り合えず謝罪の言葉を口にした。

 これこそ、メリユの悪役令嬢固定化ルートから抜け出すためには絶対に必要なことだと思ったからだ。


「ふむ、貴族令嬢でそう素直に謝罪できることは美徳だと言える。

 メリユ嬢には何か自身を変えるきっかけのようなものがあったのだろうか?」


 爽やかに褒めつつも再度掘り返してこられるカーレ殿下……やはり、謝罪だけでは誤魔化しきれないか。

 さて、どう答える?

 ある程度、真実を交えながら、答えてしまうより他にないよね?


「………そうでございますね。

 きっかけと言えば昨日の出来事で、そうせざるを得ない段階、に入ったためでございます」


 ………ん?

 って、なぜにメグウィン殿下が目をキラキラさせながらにこちらを見ておられるの!?


「や、やはり、そうだったのですね!

 メリユ様、わたしにお手伝いできることがあれば、何なりとおっしゃってくださいませ」


 またメグウィン殿下の謎台詞が……やっぱり、何らかの強制イベントが発生していると見ていいのかしらん?

 いや、でも、知り合ったばかりの王女殿下が吐く台詞としてはまずいのでは……と、汗をタラーッとさせながら思っていると、


「メグウィン、お前、一体何を……。

 王族がそのようなことを軽々しく言うものではないぞ」


 カーレ殿下の叱責が飛んだ。

 うんうん、そうだよね……って、メグウィン殿下、またどしたの!?


「お兄様は黙っていてくださいませ。

 お兄様はまずメリユ様のお力をしっかりと見極めてから、その口をお開きになるよう具申いたします!」


「………」


 あまりのメグウィン殿下の迫力に、あのカーレ殿下が(にこやかな笑みを顔に貼り付けながらも)押し黙られたのに驚いてしまった。

 いや、わたしも思わず黙り込んでしまったのだけれどね。


 まあ何にしても、カーレ殿下、メグウィン殿下とこうも間近で絡める展開があるだなんて、このデモ版マジで神過ぎて、本気で痺れてしまった。

 強制イベントでこれから何が起こるのか、それとも何かがバグってしまっているのかは分からないけれど、ひとまずデモプレイが一段落したら、多嶋さんにはお礼のメールを送っておかねば!

第一王女の様子がおかしいようですが、悪役令嬢はその原因に気付いていないようですね(汗

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