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悪役令嬢、母国を救う  作者: アンフィトリテ
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第70話 悪役令嬢、悪役令嬢イベを継続しながら現場に到着する

(悪役令嬢・プレイヤー視点)

軽食(昼食)を終えた悪役令嬢は、悪役令嬢イベントを継続させながら『土砂ダム』のある現場に到着します。


[ご評価、ブックマーク登録いただきました皆様方、心より感謝申し上げます]

 メグウィン殿下の馬車で『土砂ダム』によってキャンベーク川が堰き止められている災害現場まで向かうわたしたち。

 ハードリーちゃんは、伯爵家の馬車で向かわれるということで同乗されていない訳なのだが、これって完全に嫌われてしまっているということよね?

 なんか、メグウィン殿下まで巻き添えにしてしまって申し訳ない限りなのだが、マジで悪役令嬢イベ、半端ないっすわ。


 だって、あのハードリーちゃんに平手打ちを食らったのよ?


 せっかくの学院入学前シナリオだってのに、このタイミングでこの嫌われようとは、さすがは悪役令嬢メリユって感じよね。

 よほど相性が悪いのかしらん?

 まあ、メグウィン殿下といちゃいちゃできるようになっただけでも神展開過ぎて、先が怖いくらいなんで、まあハードリーちゃんは仕方あるまいと諦めますか。


 さて、現場に到着して、ハナンさんとセメラさんの手伝ってもらって馬車を下りると……なかなかにかっこいいおじ様がわたしたちを待ち受けていた。


「これはこれは、メグウィン第一王女殿下、遠いところを我が領の危機に駆け付けていただき、厚く御礼申し上げます。

 早馬でご来訪の報せは受けておりましたが、まさかこのような危険な現場までお越しいただけるとは」


 ライトブラウンの髪と髭、特徴的な垂れ目は……当然ハードリーちゃんのお父さんよね?

 つまりは、ハラウェイン伯爵様という訳か。

 『娘は父親に似る』とかいう話もあるけれど、ハードリーちゃんはまさにそのバターンなんだ!


 というか、本編でもハラウェイン伯爵様、出てこなかったから、公式イメージは初公開ってこと!?

 一般公開しないVRテスト版にしちゃ、豪華過ぎないかい、多嶋さん?


「いいえ、王族として当然のことでございます。

 ケラフォ・プレフェレ・ハラウェイン伯爵様」


 おお、ハラウェイン伯爵様のフルネームが今明らかに!?

 設定集でもそんな情報出ていなかったはずなのに、こんなVRテスト版でサービス大盤振る舞いしちゃって大丈夫なの!?

 わたしがそんな興奮をしていると、


「おや、そちらは?」


「はい、こちらはビアド辺境伯令嬢のメリユ様でございます。

 この度は救援隊の派遣にご協力いただいたのでございますわ」


 メグウィン殿下はすっかり公務モードに入っていらっしゃるみたいね。

 ご紹介いただいた以上、ハラウェイン伯爵様=ハードリーちゃんのお父さんにご挨拶せねば!


「お初にお目もじ仕ります。

 殿下よりご紹介に与りました、北の辺境伯家が第一子メリユ・マルグラフォ・ビアドでございます。

 どうぞメリユとお呼びくださいませ」


 タッチコントローラをそれっぽく動かすと、一応カーテシーできているようだ。


「おお、これはこれは、お初にお目にかかる、メリユ辺境伯令嬢」


 傍でよく見ると、ハラウェイン伯爵様は、土埃で少し汚れたご様子で、髪も若干乱れているよう。

 どうやら昨日からずっとこの現場に張り付かれているようだ。

 それでも(この緊急時に)にこやかに迎えてくださるだけ大人だと思う。


「それで、殿下とメリユ辺境伯令嬢のお二人は、視察のためにこちらにいらっしゃったという理解でよろしいでしょうか?」


 ハラウェイン伯爵様は、メグウィン殿下とわたしのドレス姿をチラリとご覧になられながら、そうおっしゃるのだ。

 もちろん、大人な伯爵様は嫌味な雰囲気を纏われてはおられなかったけれど、『どういうつもりなのか?』ということを言外に滲ませられているように感じる。


 うん、すごい……AI自動生成だけで、ここまでキャラの反応を作り出せるものなのね?


「いいえ、視察のためではございません。

 この場ではご紹介できませんが、後ほどハラウェイン伯爵様にもご紹介差し上げたいお方がいらっしゃいまして、そのお方がこの災厄の元を取り払ってくださることとなっております」


 メグウィン殿下が堂々とされながら、ハラウェイン伯爵様に告げられる。


「そのお方とは?」


「セラム聖国のサラマ聖女様より聖女認定を受けられた聖女様でございます」


「せ、セラム聖国の聖女様と!?」


 この災害前に献金を騙し取られたことがあっただけに、さすがのハラウェイン伯爵様も取り乱される。

 それでも、メグウィン殿下相手に怒声を発せられないだけでも、必死に理性で感情を抑制されているのが伝わってくる。


「ハードリー様よりハラウェイン伯爵家で何があったかは伺っております。

 ですので、ハラウェイン伯爵様が警戒されるのは無理ないことと存じますが、ここは聖女様にお任せいただければと存じます」


「殿下っ、そんなお方、一体どちらにいらっしゃるとおっしゃるのでしょうか!?」


 気が付けば、別のハラウェイン伯爵家の馬車から下りて近寄ってきていたらしいハードリー様が声を張り上げられる。


「ハードリーっ、殿下に対して何て不敬な!

 黙りなさい!」


 一度眉間に皺を寄せられていたハラウェイン伯爵様だけれど、ハードリーちゃんのあまりの言葉に、我に返ったかのように叱り付けられる。


「構いません。

 ですが、聖女様はお名乗りになられませんし、その御名を伺うことも認められません」


「み、御名……でございますか」


 ……えっと、これって、もしかしてメリユが嘘付けないとかいう変な設定がくっ付いちゃったせい?

 それで、メグウィン殿下、ご配慮くださったとか、そんなところなのかな?


 んで、一方のハラウェイン伯爵様だけれど、ものすごく警戒していらっしゃるよねー。


 まあ、『聖女見習い』の被害に遭ったばかりで、今度は名前を名乗れない『聖女様』

 そりゃ、怪しさ大爆発ってな感じですわー、あははは。


「それと、聖女様がなさることに対して質問を問いかけることも禁じます。

 また、聖女様のご指示は絶対でございますので、必ず従うようにお願いいたします。

 これは第一王女としての要請でございます」


 まだ目元に腫れの残るメグウィン殿下だけれど、何とも凛々しくてかわいらしい!

 やっぱり、こんなの動画保存しかあり得ないわよね……できないけど。


「で、殿下、そこまで……」


「殿下っ、お目をお覚ましくださいませ!

 そのような間者の言うことを真に受けてなりませんっ」


 ハードリーちゃんは必死にそう訴えるけれど、メグウィン殿下はそれを無視する。


「では、ハラウェイン伯爵様、現場がよく見えるところまでご案内いただけますでしょうか?」


 問答無用と言わんばかりに強気の笑みを零されるメグウィン殿下に、ハラウェイン伯爵様は複雑そうな表情を浮かべながら了承されたのだった。






 そして、ハラウェイン伯爵様に連れられて、キャンベーク街道から離れること、数分。

 木々の間から峡谷の災害現場=『土砂ダム』がよく見える場所にわたしたちは到着していた。

 昨日もすぐ傍で見ていたはずだけれど、こうして展望台的立ち位置から眺めると改めてその巨大さに目を見張ってしまう。


 ホントに、自室でゲーミングチェアに座ったまま、HMDを被っているだけだなんて信じられなくなってきそうなほど、下から上へと視線を走らせずにはいられないのよ。


「……本当に巨大でございますね」


 昨夜は上空から近付いていたせいか、スケール感が狂っていたけれど、この位置から見た感じ、高さ七十メートルは軽く超えているかしらん?

 超高層ビルとは言わないけれど、高層ビルレベルの高さなのよ。

 これが決壊したら……領都もタダでは済まないだろうなあ。


 ま、そんな災害シミュレーション的なものまで実装されているとは思えないけれどね。


「それがですな。

 昨夜轟音が発せられまして、アレが崩壊するのでないかとの急ぎの報せが入り、わたしも未明からこちらに詰めておるのですが、おかしいのです。

 どうも土砂崩れ現場の手前に透明な板のようなものがあって、漏れ出した水が堰き止められ始めているとの報告も入ってきております」


 メグウィン殿下がこちらをチラリとご覧になられ、わたしも頷き返す。


「お父様、それは一体?」


「ハードリーもあの下の方をよくご覧なさい。

 泥水が僅かだが、堰き止められ、溜まり始めているのが分かるだろう?」


 ハードリーちゃんが身を乗り出すようにして、食い入るように『土砂ダム』の下の方をご覧になっている。


「そんな……一体何が」


 動揺するハードリーちゃんやハラウェイン伯爵家の衛兵たち。

 そこに胸を張って、左手で透明なシリンダーバリアの方を指し示されながら、メグウィン殿下が


「あれこそが緊急的措置として昨夜聖女様が張られましたバリア、不可視の結界にございます。

 神命の代行者としての絶対的なお力でございますので、聖女様が解除されるまで破られることはございません」


 と説明に入られるのだ!!


「ま、まさか……殿下、それは、誠でございますか!?」


 ハラウェイン伯爵様ご自身も部下からの報告に疑念があったのだろう。

 そんな中、全て把握していると言わんばかりのメグウィン殿下のお言葉に、ハラウェイン伯爵様は驚愕の面持ちで殿下を見詰めておられる。


「はい、ハードリー様には信じていただけなかったようでございますが、全て真実でございます。

 そして、これから聖女様にはあの『土砂ダム』本体と泥水全てを取り払っていただくことになっております」


「殿下……とても、そんなこと、信じられません」


 ハードリーちゃんは頭を何度も左右に振って、受け入れ難いとばかりに訴える。


「ハードリー様、今は信じていただかなくても構いません。

 ですが、全て真実であるとご理解いただけたそのときには、聖女様に謝罪していただきたく存じます」


 そんなハードリーちゃんに、メグウィン殿下は『何の懸念もしていない』と言わんばかりの笑顔で答えられるのだった。

『土砂ダム』ですが、国内でも高さ百メートルを超えることがあるようで、本当に怖ろしいですね、、、

はたして、悪役令嬢メリユは解決することができるのでしょうか?

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