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悪役令嬢、母国を救う  作者: アンフィトリテ
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第49話 悪役令嬢、ヒロインちゃんの台詞をパクる(!?)

(悪役令嬢・プレイヤー視点)

第一王女の寝室に招かれた悪役令嬢は、第一王女との会話の流れで思わずエターナルカームヒロインの台詞をパクってしまいます(!?)

「(ぐすっ)メリユ様、何度もはしたない真似をいたしてしまい、申し訳ございません……」


 ようやく落ち着かれたメグウィン殿下は、身体を離された後、ご自分の椅子をわたしの隣にまでご自身で運んでこられ、わたしのすぐ隣に座られた!

 肩が当たるほど近いという訳でもないけれど、VRであってさえ、少し緊張感を覚えてしまう。


 だって、こんなに近いんだもの!!


 ゲーム本編と違って、金髪の前髪を下ろされ、同じ金色の睫毛を震わせていらっしゃるメグウィン殿下がすぐ傍に見えているのよ!?

 抱き付かれていたときは、すぐそこに頬が見えていて、長くてさらさらな金髪が目の前で揺れているのに(それはそれで)どうにかなってしまいそうだったけれど……HMDだと感触とか体温とか匂いとかはまるで分からなくて、しかもメグウィン殿下がよく見えないってのに気付いちゃうと物足りなくなっていた訳よ!

 でも、今のこの状況だと、ほどよくメグウィン殿下の顔とか、お身体とかがとにかく間近に見えてしまって……ううう、目のやり場に困ってしまいますわーって感じな訳!


 って、しっかりしろや、わたし。

 会話止まってんぞ!

 メグウィン殿下が上目遣いで心配そうにこっち見てきてるじゃん!


「いいえ、友人の一人として、メグウィン様のお気持ちを受け取ることができましたこと、大変光栄に存じますわ」


「メリユ様」


 わあ、メグウィン殿下、目真っ赤。

 この距離で見ていると、目の辺りが浮腫んでるっぽいのも分かるんだけれど……そこまでモデリングされているんだって感動すら覚えちゃう。


「重ね重ねありがとう存じます。

 は、恥ずかしながら本当のことを申し上げますと、わたしに、友人と言える存在は、今までハードリー様、お一人しかいなかったのです」


「ハードリー・プレフェレ・ハラウェイン伯爵令嬢でいらっしゃいますね?」


 本編じゃメグウィン殿下とヒロインちゃんの親友だったんだもの、当然フルネームで覚えているわよ。

 というか、今のわたしのメリユは、ハードリーをトレースしたものになっている訳だしね。


「はい、先ほどはハードリー様をお救いいただきたくて……お見苦しい姿をお見せしてしまい、改めてお詫びいたします。

 ですが、メリユ様ほどではなくとも、ハードリー様もご立派な貴族令嬢なんです。

 わたしがこれまで唯一心を通わせることができたと思えるご令嬢がハードリー様だったんです!」


 少しばかり年相応な表情をお見せになられるメグウィン殿下にドキドキしてくる。


「王女であるわたしがこのようなことを言うのはよろしくないことかとは存じますが……ハードリー様にお会いするまでに交流のあった貴族令嬢の皆様は、王家に近付きたい、お兄様に近付きたいというお気持ちを剥き出しにされた方々ばかりで、貴族令嬢としての責務を果たそうという気概をお持ちの方なんていらっしゃらなくて……わたし、ミスラク王国の貴族のあり方に気落ちしそうになっていたんです。

 そんなときに、たまたまハラウェイン伯爵領でお会いできたのが、領民に寄り添おうとされているハードリー様だったんですわ」


「それで、ハードリー様とご友人になられたのですね」


「はい、ハードリー様も王女であるわたしからの申し出に戸惑っていらっしゃったようでしたが、ハラウェイン伯爵領滞在中にわたしも同じ気持ちであるのをご理解いただけたようで、お受けいただけたんです。

 今でも手紙のやり取りをしておりまして、王都にいらっしゃった際は必ずお会いしております」


 ふーん、学院でも最初からメグウィン殿下とハードリーは親友関係であったけれど、こんな前から仲よかったんだなあ。

 立場上情報漏えいは絶対できないけれど、wikiに書き足したくなるような情報だよ!


「そうですか、わたしもぜひハードリー様と仲良くなりたく存じます」


「ええ、ぜひ! メリユ様ならハードリー様とも仲良くなっていただけるかと存じます。

 わたしは、この三人でご一緒にお茶できるような関係を築くことができればと考えていたのですわ!」


 おおう、メグウィン殿下、そんなに今のわたし=メリユとハードリー、ううん、ハードリーちゃんをくっ付けたがっているのかしらん?

 本来は、犬猿の仲って感じのはずなんだけどねー……本編じゃあり得ない、この三人が仲良くお茶しているスチルっていうのも悪くないかもって思ってしまうのは、わたしがメリユに感情移入し始めているから?


「ええ、わたしもメグウィン様、ハードリー様とお茶できますことを楽しみにしております」


 取り合えず、わたしがそう答えると、(それはメグウィン殿下にとって望んでいた通りのものだったんだろうか)随分とうれしそうな表情を浮かべられ………そして、急に顔色を悪くされる。


「あの、それでメリユ様、ハラウェイン伯爵領のことですが……」


 ああ、そうね。

 土砂ダムのせいで堰き止め湖がどんどん大きくなっていっているらしい今、ハードリーちゃんの地元は危機的状況にある訳で、喜んでもいられないわね。


「ご心配なさらないでくださいませ。

 わたしが今夜の内、一旦バリアを張っておきますから、当面は問題ないかと。

 その後の対処は、メグウィン様とご一緒に訪問してから対応する予定でございます」


 取り合えず土砂ダムの決壊だけは取り合えず防いで、今後の対応策は公式にハラウェイン伯爵領に訪問してから考えよう。

 一人だけで訪問しても、何だコイツみたいな扱いされそうだしなあ、まあ、辺境伯令嬢である以上、一応客人としては迎えられるだろうけれど……。


「こ、今夜の内……で、ございますか!?」


 うん?

 なんでメグウィン殿下、目を見開いていて驚いているの?

 というか、言葉遣い戻ってるし……。


「(ゴク)まさか、移動の命令で……そこまで遠くにまで赴かれることが可能なのでしょうか!?」


「ええ、それにわたし、飛べますから」


「そ、そうでございましたね」


 おう、メグウィン殿下、またお祈り始めそうな雰囲気を醸し出されているんだけど!?


「(なるほど、ご神託だけでなく、メリユ様ご自身で偵察なんかもされていらっしゃったんだわ……)」


 んん?

 今何て?


「あ、失礼いたしました!

 メリユ様、また使徒様のお姿でお飛びになられるのですね?」


「はい」


「使徒様のお姿を下賜される以前は……移動の命令だけで向かわれていたのでしょうか?」


「そ、そうでございますね。

 一応、“Translate”だけでも空中に留まることは可能でございましたので」


 危ね……ちょっと冷や汗掻きそうになったよ。

 うっかり『飛ぶ』とか言っちゃったけれど、天使形態は(ゲーム内の)今日の夕方多嶋さんからもらったところだからなあ。


「はあ、すごいです。

 まさに、転移の魔法、飛翔の魔法そのものでございますね……もちろん、魔法ではなく、神より賜られた聖なるお力ではありますが」


 うう、そんな憧れのお姉さんを見るような眼差しで見られちゃうと、お姉さん困っちゃうよ?


「それに引き替え、わたしは……本当にわたしは輝けるものを持っているのでしょうか?」


 また、急に顔色を曇らせられるメグウィン殿下。

 ……ああ、そうか、さっきのカミングアウトでもあったけれど、メグウィン殿下、まだこの時期って、自分に自信を持ち切れないままで、ヒロインちゃんとの出会いで救われたところもあったのよね?


「ご安心くださいませ。

 メグウィン様の中の輝けるものは、既に輝き始めておりますわ」


「ほ、本当ですか!?」


「ええ、他者の言葉に惑わされず、ご自身の目で真実を見抜かれるお力。

 他者の意見を公平に受け入れながら、ご自身としてのお考えをまとめることのできるお力。

 そして、何よりご自身の決められたことを貫き通すことのできるお力」


「メ、メリユ様……」


「そのお力はもうメグウィン様の中に既に芽生え、周囲の方々も、その輝きに気付き始めているはずですわ」


 あ……ヤベ、これってゲーム本編でのヒロインちゃんの言葉じゃね!?

 流れでつい自然に出てきちゃったけれど、これ、ヒロインちゃんがメグウィン殿下に伝えなきゃいけないヤツじゃん!?

 うっかりパクっちまったぞ!?


「うぅ、メリユ様ぁ」


 うわあ、またメグウィン殿下、泣かせちゃった!?

 うお、椅子から腰を上げられたメグウィン殿下が、近距離発射の砲弾のように、わたしの胸元にご自身の顔をぶつけてこられる!?

 いや、これ、マジで泣き付かれている状況じゃない!?


 さっきの真正面抱き付かれも尊かったけれど、これもまた尊い!


 だって、わたしの胸でメグウィン殿下がうれし泣き(?)されているんだもの。

 こんな最高のイベに、わたしはシナリオライターさんに心から感謝を捧げずにはいられなかった!

(お待たせいたしました、今週も振替休日活動中です)

メリユと第一王女メグウィン殿下、ハードリーちゃんが揃うと『ですわ』娘勢揃いになって、会話が訳分からなくなりそうな懸念が、、、

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