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悪役令嬢、母国を救う  作者: アンフィトリテ
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第48話 悪役令嬢、王女殿下の友人になる(!?)

(悪役令嬢・プレイヤー視点)

第一王女の寝室に招かれた悪役令嬢は、第一王女から大事な話を打ち明けられ、友人になってしまいます(!?)

 神がかり過ぎていたって言ってもいいくらいの晩餐会を終えて、わたしはいよいよメグウィン殿下に連れられて、殿下の寝室へと向かうことになった。


 これもまたゲーム本編では決してあり得なかった展開。


 ううん、ヒロインちゃん視点の展開ですら、王城でのお泊り会的なイベはなかったはずよね?

 つまり、今から見ることになるのは、エターナルカームとして初公開となるメグウィン殿下のお部屋ってこと!?

 あああ、なぜゲーム開始前に録画機能を実装しておかなかったのか、悔やまずにはいられない。


 ちなみに、このゲームリプレイできるのかしらん?


 多嶋さんは取り合えず最後までやってとしか言ってなかったし、セーブポイントもいまいち分かりづらいこのゲーム、一回やって終了ってこともあり得るかもしれない。

 う……もうそうなら、もっとゲームに集中しないといけないわよね?


「それにしても、リアリティ高っかいなあ」


 わたしの右斜め前を先導するように進まれていくメグウィン殿下。

 豪奢な王族専用階(?)の廊下を揺れる蜜蝋の灯りが照らし、やや薄暗い中も綺麗なメグウィン殿下の金髪が揺れ輝く。

 晩餐会用に着替えられたクリーム色の清楚かつフリルいっぱいでかわいらしさも兼ね備えたドレスはメグウィン殿下の歩みにあわせて、軽く布擦れ音すら聞こえてくる。

 白い肌の頬はやや朱色に染まり、ぱっちりとした瞳の長い睫が瞬きの度に弾けるように動くところまで見えるんだ。

 モデリングはもちろん、レンダリング負荷もマジで高そう……。


 いや、これだけでも、スチルとタメ張れるだけの描写になっている訳よ。

 (多分、メグウィン殿下にわたしのこの熱い視線は伝わらんと思うのだけれど)キモイとか思われたらどうしようと思いつつ、メグウィン殿下の横顔を凝視してしまっていた。


「……メリユ様、こちらがわたしの寝室になります」


 うおっ、ビビった。

 急に立ち止まったんで、メグウィン殿下にマジで勘付かれたかと思っちゃったわよ!


 って、こちらが、メグウィン殿下のお部屋!?

 あのメグウィン殿下とVRお泊り会とか最高過ぎん?

 お姉さん、ドキドキが止まらないんですが……わたしの心臓もつかな?


「そうなのでございますね」


「はい」


 照れたようにニコッと笑われるメグウィン殿下。

 この辺りは年相応って感じがして、すごくいい。

 十一歳か、日本だと小学五年から六年生くらいかな?

 わたしはその頃既にオタク化していたので、メグウィン殿下のようなかわいらしさは……なかったような気がする。


 ハナンさんたちがさささっと重厚そうな扉を開かれ、廊下よりも明るいメグウィン殿下のお部屋が目に入るのだ!


「……素敵なお部屋でございますね」


「ありがとう存じます」


 はわー……。

 応接室とか晩餐会のお部屋ほど大きくないとはいえ、立派な蜜蝋のシャンデリア。

 小さく揺れる光の描写が細かい。

 そして、さすがは王族のお部屋と思える広さと豪華さ。

 赤い壁にはパターン化された花柄の模様が広がり、油絵がいくつもが飾られている。

 窓の傍には、ゆったりお茶できそうなティーテーブルと二つの椅子。

 その隣にメグウィン殿下が勉強されるときに使われるのだろうか、立派な机もあって、うんテディベア的なぬいぐるみが数頭(?)のっていたりする。

 ぃ、いや、何よりインパクトがあるのが、天蓋付きベッドが二つもあるってところかしらん?


 うん、すごい!


 あっちには、両脇に燭台の付いた鏡台があって、アンティーク感たっぷりの化粧道具とかも置かれているし、うん、春先ということもあってか、暖炉には火が点っている。

 ここまで作り込みしておいて、非売品化とかさすがにないよって思うのだけれど、多分、この辺は他のゲームに流用するつもりなのかなー?


「お茶のご用意をいたしますね?」


「ええ、お願いね」


 ハナンさんたちが手際よくティーテーブルに二人分のお茶の用意をしてくれる。


 えっと、これってアフターディナーティーってヤツ?


 テーブル中央に置かれた花柄の白磁のお皿には、一口サイズのケーキっぽいのが載っていて、お揃いティーカップには(今まさにメイドさんによって)紅茶が注がれていく。

 はあ、ノベルゲーだった本編でもファンタジー(ただし魔法はない)中世(一部近代混じってる?)ヨーロッパ世界を堪能していたけれど、メイドさんがこうやってお茶の準備をしてくれているところまで『動き』ありで見られるとか……どれだけお金かけてんのよ!?


「うわ」


 先に置かれていたガラスの花瓶に活けられたスイートピー(?)の花がメイドさんの作業にあわせて、微妙に揺れているみたいで……リアリティ高過ぎだろ?

 ハナンさんが椅子を少し引くと、メグウィン殿下が(それが当たり前のように)王女らしくティーテーブル横の椅子に可憐にお座りになられる。

 もう一人のメイドさんもわたしの方に回り込んで、椅子を引いてくれていて、わたしも座れってことか。


 まあ、わたしがティーテーブルの方に『進め』ってすると、あとはAIが勝手にメリユのムーブを作ってくれるんだけれどね。

 気分的にはよいしょっと!


「他にご用意するものはございますでしょうか?」


「いいえ、これで大丈夫よ」


 うん?

 今メグウィン殿下が軽くハナンさんに目配せされたような?


「承知いたしました。

 それでは、何かございましたら、そちらの鈴でお知らせくださいませ」


 ハナンさんしか名前分からんのだけれど、メイドさんたちが頭を下げて部屋から出ていく。


 目の前には、薄く湯気が立ち上る紅茶、そして……その向こうには、少し緊張していらっしゃるのか、上目遣いでこちらを覗き見られるメグウィン殿下。


 うわー、録画したい録画したい!!


「あ、あの、此度は急なお誘いとなってしまい、本当に失礼いたしました。

 我儘なお願いであると自覚はしているのですが、わたしは……どうしてもメリユ様と一度じっくりお話をさせていただきたく……その、お誘い申し上げることになった次第でございます」


 また、目がウルウル状態になってきているメグウィン殿下。

 緊張のあまり、口調が硬くなっているのもまた良き!


「メグウィン様、どうぞお気になさらないでくださいませ。

 そもそも、わたしは一辺境伯家の娘に過ぎませんので、どうぞ口調を崩してくださって構いません」


「何をおっしゃるのですか!?

 メリユ様は、神に認められし聖女様でいらっしゃるのでしょう!?」


「いいえ、本来わたしの立場は秘匿されるべきもので、公にすべきものではございませんでした」


「そんな……」


 おおう、そんなに食い付いてこられなくても?

 まあ、わたしは設定に忠実に演技するだけで……いいのよね?


「セラム聖国の聖人、聖女様は、他人の王族同等にもてなせと伺っております。

 既にサラマ聖女様からも『聖女猊下』とご認定されておられる以上、メリユ様はそういうお立場にあられるべきと存じ上げます」


「……確かに、今後、公式の場ではそうすべきなのかもしれません。

 ですが、私的な場でまでそうした立場に縛られるのは、わたしの望むところではございません」


「っ」


 若干涙に濡れた瞳は大きく見開かれてわたしの方を見詰めてこられるメグウィン殿下に、わたしはまた生唾を飲み込みそうになってしまう。


「ずるいです、ずるいですわ、メリユ様。

 私的な場として、わたしをタダ、メグウィンとお呼びくださるのでしたら、メリユ様の方こそ砕けた口調でお話になってくださいませ!」


「よろしいのでしょうか?」


「もちろんですわ!

 そもそも、わたしはメリユ様の素のお姿も拝見させていただいておりますもの、そちらで振る舞っていただいても構いませんのに」


 素………?

 素って何だ!?

 え、あれ……もしかして、あれか?

 昨日、貴賓室でコンソール弄ってたときのあれか!?


「さ、さすがに、それは……」


 わたしが少し困っていると、メグウィン殿下が急にクスクスとお笑いになられる。

 素を出し切れないわたしが、そんなにおかしかったのかしらん?


 いや、さすがに完全な素は出せないよ? 出せないよね?


 オタク女子大生丸出しとか、わたしとしても普通に嫌だから!


「はあ、分かりました、ハナンさんたちがいらっしゃらない場でのみ、多少崩させていただきますね」


「ええ、ぜひ、そうしていただけますとうれしいですわ!」


 堪えきれない笑いに肩を震わせられながら、メグウィン殿下は目尻に溜まった涙を拭われる。


「本当に……メリユ様には、色々な意味で泣かされてばかりです。

 昨日の夜から、そして今も、こんなに感情を揺すぶられたことは今までの人生で一度もありませんでした」


「あの、それは……申し訳ございません」


「いいえ、昨日の夜のことを除けば、全ていい意味で、ですから。

 はあ、昨日の夜は、メリユ様の秘密を知ったわたしを消すという意味で、警告されたのでは……と、まるで寝付けなかったのですから!」


 珍しくおどけたご様子でおっしゃるメグウィン殿下。


「いえ、あれはそういう意味では……」


「ええ、今では分かっておりますわ。

 聖なるお力のささやかなご行使に、わたしが驚き過ぎただけですから。

 あのときは、メリユ様のお力が本当に超越者たるものだなんて、あのときは想像もできませんでしたから、ティーカップが消えただけで腰が抜けそうでした、ふふふ」


 メグウィン殿下は、紅茶にミルクを少し注がれながら、笑い声を零される。

 けれど、すぐ真面目な顔をされて、わたしの方を見てこられるのだ。


「本当に、あれほどまでのお力で、王国をお救いいただけるなんて。

 今でも少し信じられないほどなのです。

 メリユ様がいらっしゃらなければ、王国は帝国の魔の手によって間違いなく滅び、わたしたち王族は全員処刑されてしまうことになったでしょうから」


「メグウィン様……」


「わたしも王族、王女ですから、そうした可能性がいつか現実になるかもしれないということくらい、覚悟はしていたつもりでした。

 通商上の要所であり、周囲の大国にとってはある意味緩衝地帯とも言えるミスラク王国は、他国を狙う大国にとってまず押さえなければならない地ですもの、特にきな臭い帝国が王国を侵攻することはいずれあり得るのではと思っていたのですわ」


 少しばかりお辛そうなメグウィン殿下。

 こんなご表情もたまらないわー。


「ですが……いざ帝国が攻めてくる気配が濃厚となったとき、わたしは、怖くて仕方がなかったのです。

 あと、半月、一月後には、王都の平穏は奪われ、王城は焼け落ち、わたしの人生もそれでお仕舞いになってしまうのだと……そう考えると、本当に怖ろしくて……どうにかなってしまいそうだったのですわ」


 紅茶を混ぜるティースプーンがカタカタと小刻みに震え、メグウィン殿下のご心情を露わにしていく。


「それが、まさか神に認められしメリユ様のバリアで、王国を護っていただけることになるなんて!

 天空に届くバリアを拝見した際に感じた、あの安堵と、あの高揚感は……一生忘れられないものと存じます」


「……!」


 スプーンを置かれたメグウィン殿下が、また涙を零されてる!


「メリユ様、このような場で、このような形でお礼を申し上げたところで、何も残らないかとは存じますが、ミスラク王国第一王女として、心より感謝申し上げます。

 お兄様、兄との婚姻もメリユ様の望まれるものではないのかもしれませんが、妹として、いずれメリユ様に何かしらお返しいきたく存じますので、何卒王国をよろしくお願い申し上げます!!」


 両手をドレスの上に重ねて置かれて、頭を下げられるメグウィン殿下!

 いやいや、王女殿下がそんなことされるのは、さすがにまずいのでは!?


「そんな、頭をお上げください」


「いいえ、王国を他国の侵攻から護るのは、本来王家の責務のはず。

 それをまだデビュタントすらお済になられていない、わたしと同い年のメリユ様にお願いすることになってしまうなんて、王族として恥じるべきところでしょう」


「メグウィン様、それは辺境伯家にとっても同じ責務のはずでは?」


 そう、メリユは北の辺境伯家の悪役令嬢なのだから。


「たとえそうであっても、デビュタント前のご令嬢のなさることではないかと存じますわ」


 んん、いや、そう言われると、そうなんだけどね。

 でも、それだとメグウィン殿下も同じなのよねぇ?


「本当に、本当に、近衛騎士団の心を動かされ、お父様たちの心を動かされ、サラマ聖女様の心を動かされ、今のこの状況を作り出されたメリユ様がどれほど神経を擦り減らされ、ご尽力されてきたのか……考えただけでも胸が張り付けそうに感じますわ。

 聖なるお力は別としましても、ご成人された殿方でさえ同じように振る舞われるのは、難しいのではと思ってしまいますもの」


 えぇぇ……何か勘違いされてないかなー?

 そりゃあ、わたしが動いてそうなったところもあるけれど、たまたまだったり、暴走した結果そうなったりしただけだったりするしね。


「……メグウィン殿下」


「メリユ様、メリユ様はどうしてそんなにお強くいられるのでしょうか?」


 う、そんな風に見詰められてしまうと、どう答えていいか悩んじゃうよ、お姉さん。


 これはあくまで虚構。


 悪役令嬢メリユがゲームの管理者権限を使って、バッドエンドを回避するためだけのアルファ版VRゲームのはず、よね?

 だから、わたしは今のメリユの立場に立って、答えればいいはずよね?


「そうですね、わたしにしかできないことがそこあって、わたしならそれができると確信をもっているからでしょうか?」


「っ」


 メグウィン殿下に、息を呑むような気配があったあと、両手でご自身の口元を押さえられる。


「メリユ様にしかできないと分かっていることがそこにあり、メリユ様ご自身でならそれを解決できるという確信をお持ちだからと?

 はあ、すごいです、すごいですわ、メリユ様」


 う、結構適当に喋った感、あったんだけど、今のを深読みしてくるとか、賢いAIだなあ……。


「あの、メリユ様、少しばかり、わたしの話を聞いてくださいますでしょうか?」


「ええ」


 何だろう、このしっとりとした雰囲気。

 メグウィン殿下の表情も、口調も、仕草も、今から大事なことを打ち明けようとしているような感じが伝わってくる。


「ご存じの通り、わたしはお兄様に次ぐ王位継承権第二位の立ち位置にあります。

 もしお兄様に何かあった場合に、王位を継ぐスペアということになるのですが、わたし自身は王位に興味はなく、タダお兄様の政務を補佐できる立ち位置に立って、王国を支えていければいいなと考えていたのです」


「メグウィン様」


 こんなカミングアウト、本編であったかしらん?

 ううん、なかったはず……じゃあ、このメリユスピンオフ的アルファ版だけの仕様!?

 うわー、わたし、すごい話聞いちゃっているんだわ!


「ですが、お兄様の立太子が近付き、わたしのスペアとしてのお役目も終わりが近付こうとしている今、わたしには政務の補佐なんて期待されていないこと、他国との政略結婚の駒になる可能性が極めて高いことなども分かるようになってしまって、王女としての気概を持ち続けることも苦しくなってきていたのですわ」


 メグウィン殿下、そんなことお考えになっていらっしゃったんだ!

 いや、メリユスピンオフ的アルファ版だけの設定だけかもしれないけど、かなり重要な話じゃない!?


「そんな中、帝国侵攻の可能性が示され、恐怖を覚えつつも……わたしにも何かできないかと考え始めていたのです。

 そこで降って湧いたお役目が影の代わりにメリユ様のお部屋に見張るということ、そして、覗き孔からメリユ様のお力を目の当たりして、わたし、わたしは……」


「メグウィン様!」


「……ええ、もちろん、帝国との交渉にしろ戦闘にしろ、わたしが非力で大したことができないのも分かっているのですわ。

 女騎士の皆様方でさえ、女性王族の警護はともかく、戦闘となれば力不足になることを嘆かれているのを聞いてしまっておりましたもの。

 女性に生まれてしまったから、お兄様のように政務の実力を期待されない、騎士団の殿方のようなご活躍を期待されない、これが女性の運命なのかと、鬱屈してしまっていたのです」


 うん、まあそうだよね。

 エターナルカーム自体、男尊女卑を強く感じるシーンを表立って出していた訳ではないけれど、女子学生が男子学生を勉学や戦闘訓練で打ち負かすような、流行りのパワー系女子が出てくるお話ではないもの。

 ま、お姫様的な存在、ううん、王太子妃になってちやほやされるってのがハッピーエンドな訳だしね。


 メグウィン殿下がそういうお考えだったなら、鬱屈しそうになってしまうのも分かるかな。


「しかし、今は違うのですわ。

 性別に関係なく、メリユ様はメリユ様としてご活躍されていて、神にすらお認めになられているというのを知って、わたしの考えがいかに視野狭窄したものであったのか突き付けられてしまったのですもの」


 んんん、わたしのせいで、メグウィン殿下、何かに目覚めちゃったってこと!?


「あの、メリユ様、一人の王女に過ぎないわたしであっても、王国のために働き続けることはできるとお思いになられますでしょうか?」


 これは……


「ええ、女性男性、性別に関係なく、メグウィン様ご自身にしかない何か輝けるものをお持ちになられれば、どなた様もメグウィン様を軽んじられるようなことはなくなるかと存じますわ。

 そして、それは必ずメグウィン様の中にあると、わたしは確信しております」


 うーん、サブカル広く浅く拾っているわたし程度では、これくらいの言葉しか出てこないけれど、大丈夫かしらん?


「メ、メリユ様、大変ありがとう存じますっ!」


 えええ……メグウィン殿下、大粒の涙を零されているんだけど!?

 そんな感激されるようなこと言ってないよね、わたし?


「はあ、本当に神がメリユ様にあの素敵なお姿をお与えになられたのもよく分かりますわ。

 同い年でいらっしゃるのに、そんなご成人されたご令嬢の方々ですらお持ちでないご見識を備えていらっしゃるのですもの」


 いやいやいや、わたし、そんな大した人間じゃありませんから!

 って、何!?


 メグウィン殿下がものすごくまっすぐにわたしの方を見詰めてこられてる!?


「メリユ様、わたしは、同じ十一歳の一女性として、メリユ様を心から尊敬申し上げております。

 こんなこと、本来は今申し上げるべきことではないと存じておりますが……そ、その、もしよろしければ、わたしの、いえ、わたしと友人になっていただけないでしょうか?」


 スギューン!

 ぐむぅ、ハートを打ち抜かれるとは、このことかっ!

 まさか、メグウィン殿下の方から、悪役令嬢メリユに『友達になって欲しい』って言ってこられるなんて!?

 こんなの断れる訳がないでしょうがよっ!


 わたしは立ち上がって、カーテシーをしながら


「こちらこそ、喜んで……」


 と言いかけた途端、感極まったご様子のメグウィン殿下も立ち上がられて、こちらに向かってこられる!?


 って、抱き付かれた!??


「メリユ様、メリユ様、メリユ様ぁっ!!」


 ふわーっ、近い近い!!

 すぐそこにメグウィン殿下の頬があるよぉ!?

 あああ、これが現実なら、ふわりとメグウィン殿下のいい匂いがして、メグウィン殿下の体温や柔らかさなんかも感じられるんだろうか!?


 ああああ、お姉さんの脳みそ、蕩け落ちてしまいそうですぅぅ!!


 ……そんな感じで、(ただのVRゲームのはずなのに)わたしは完全にエターナルカームの世界に没入してしまっていたのだった。

(お待たせいたしました、振替休日活動中です)

ヒロインちゃんより先に第一王女メグウィン殿下と友人関係になったらしいメリユ。

本編シナリオを考えると、とんでも展開ですが、まあ、うまくやったと言っていいでしょうか?

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