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悪役令嬢、母国を救う  作者: アンフィトリテ
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第45話 北の辺境伯閣下、国王陛下から悪役令嬢の秘密を知らされる

(北の辺境伯閣下視点)

北の辺境伯閣下は、国王陛下から悪役令嬢の真の姿についてお話を伺います。

 はあ、今日は厄日だ。

 王都騎士団長閣下と第一大隊の我が領への派遣について協議していれば、我が愚娘、メリユがなんと陛下のいらっしゃる席で不敬なことをし、騒ぎを起こしたとか何とか。

 こんなことならば、王都の屋敷に閉じ込めておくか、そもそも王都に連れて来なければよかったか。

 いや、しかし……なぜか近衛騎士団からは謝罪が届き、後ほど近衛騎士団長閣下からも直々に謝りに来られるとか。

 全くもって訳が分からぬな。

 それで、冷や汗を掻きながら、王都騎士団長閣下との協議を再開すれば、妙な破裂音の後、練兵場に鏡の柱が立ち上がり、王城内は大混乱。

 協議は打ち切りとなり、王都騎士団長閣下は、近衛騎士団長閣下に至急のお呼び出しを受け、飛んで行かれ、一体何が起きているというのか?


 それで、今こうして国王陛下からお呼び出しを受け、はせ参じた訳だが……本当に嫌な予感しかせぬわ。

 おそらくはメリユの件であろう。

 不敬罪には問われないとのことだが、わたしとの関係を気にされてのご温情をかけてくださったに決まっている!

 ここは親であるわたしが深く謝罪せねばならぬだろう。


 わたしは国王陛下の執務室で、跪きながら陛下のご来室を待っていた。


「おお、ビアド卿、いや、ワルデル、待たせてすまないな」


 扉の開く音と同時に息を切らして陛下がご来室される。

 いや、一体これはどうしたことなのか?

 いくら陛下とわたしの関係が親密なものであっても、執務室は公式の場だ。

 練兵場の鏡の柱の件といい、やはり、王城内で異常事態が起きているということなのだろうか?


「いえ、へ、陛下、まずは愚娘メリユの仕出かした件につきまして深くお詫び申し上げます!!

 本来であれば不敬罪で罰せられるべきところを……」


「いや、それはこちらの、近衛騎士団の不手際だ。

 かの近衛騎士には、中央教会で懺悔をしてもらうことになってる」


「はっ!?」


 わたしの言葉を急遽遮って、耳を疑うようなお話をおっしゃる陛下に、わたしは訊き返しかけて、凍り付いた。

 近衛騎士が教会で懺悔とは……近衛騎士に不手際があったとしても、近衛騎士団として処罰を行うはず、なぜ教会で懺悔などという話に!?


「ど、どういうことでございましょうか?」


「ワルデルよ、そなた、本当に知らぬのか?

 そなたの娘子、メリユ嬢の真の姿を。

 もし隠しているのであれば、あの通り、もう隠す必要はないのだぞ?」


「は……な、何のことだか分かりかねますが」


「ふぅむ、本当にワルデルは知らぬのだな……」


 メリユの真の姿とは!?

 一体あの愚娘は何を仕出かしたのだ!?

 ようやくできた第一子ゆえ、わたしが甘やかし過ぎたのが悪かったというのか、おお神よ!


「ワルデル、面を上げよ。

 ここは非公式の場とするゆえ、気を楽にしてくれ。

 何より、余からもそなたに詫びなければならぬことがある」


 まさか、陛下から詫びられることがあるとは。

 ……ま、まま、まさか、メリユが斬られ、命を落としたとか、そういうことなのか!?


「へ、陛下」


 わたしは唾を静かに飲み込みながら、顔を上げる。


「事後報告になってしまったが、メリユ嬢には王太子妃候補になってもらうこととした。

 ティティラの進言でな、候補とは言っても、ほぼ確実と言ってよいだろう」


 は………?


 陛下は今何と?

 我が娘メリユが王太子妃候補!?

 いやいやいや、親であるわたしから見ても、あり得ぬであろう。

 あの我儘娘を、陛下とわたしの間柄だけで王太子妃にするようなことがあれば、公爵家や他の辺境伯家からどんな目で見られることになるのやら!


「ご、ご冗談でございましょう、陛下?

 親目にもとても王太子妃、将来の国母を務められるような娘ではございませぬ」


「ふはは、メリユ嬢は、本当にワルデルに対しても真の姿を隠し切っていたようだの。

 余も、まさかイスクダー様から続く聖人の血がこのように受け継がれていようとは思いもよらなんだわ」


 イスクダー様から続く聖人の血?

 どういうことなのだ!?

 確かに先代、父上から分家筋の娘とイスクダー様が結ばれていたかもしれぬとは聞いてはいたが、ま、まさか!?


「そう、メリユ嬢は、聖人の血を発現させた、神に認められし聖女だ。

 ワルデルには立ち会わせなかったが、余も、この目で神の代行者たる聖なる力を拝見仕った。

 先ほど影から報告があったが、ご来城されたセラム聖国のサラマ・サンクタ・プレフェレ・セレンジェイ聖女猊下からセラム聖国中央教会としても聖女と認めるという言質を取っておる」


 我が愚娘メリユが……せ、せ、聖女!?


「そ、それこそ、ごじょ、ご冗談、なのでは!?」


「冗談などではない。

 ワルデルはその場におらなんだから、分からぬだろうが、あれは本物の神の奇跡だ。

 人の力では決して破ることのできる結界を張り、愚かな試しを仕出かした近衛騎士団第一中隊を天に召し、反省を促した後に地上に送り返す。

 そんなことをそなたの娘は易々とやって見せたのだからの」


「て、天に召す、とは!?」


 へ、陛下のおっしゃっておられることがまるで理解できん。

 一体メリユは何をしておるのだ!?


「ワルデルもあの鏡の柱は見たであろう?

 あれは天界にまで繋がっていたらしくてな、もう少しで近衛騎士団第一中隊は、経典にある、使徒に手出しして天に召された愚か者共と同じ目に遭うところであったようだぞ」


「し、信じられませぬ!」


「はあ、実際にメリユ嬢が結界を張るところを見ていた余ですらそうよ。

 しかもな、今も次々に王城内で奇跡が起きておるようで、つい今しがた影が応接室に白き翼の使徒が降臨されたとか報告をしてきたところよ」


 わたしの驚く姿を笑いながら見られていた陛下は、急に疲れたような言葉を漏らされ、溜息まで吐かれる。


「その使徒がメリユ嬢だったのだがな」


「はあっ!? 真でございますか!?」


 メリユが使徒様!?

 わたしの娘は一体どうなっておるのだ!?


「はあ、涙ながらに影が報告してきたのはこれが初めてよの。

 まあ、おかげで、セラム聖国を味方に付けることはできたようだ」


「ま、まさか、そんなことが」


「それでだ、ワルデル。

 これも事後承諾になってしまうが、メリユ嬢を国防の要として派遣することを許して欲しい。

 知っての通り、ミスラク王国にとってこれは最大の危機であり、最前線にはカーレやメグウィンも派遣する予定だ」


 メリユが……国防の要。

 もはや、わたしの頭では何も理解できぬわ!

 十一の我が愚娘が国防の要とは!?


「後で近衛騎士団長と、王都騎士団長からも説明させることになるかと思うが、メリユ嬢には結界でオドウェイン帝国軍を閉じ込めてもらうことになっている」


「結界でございますか。

 はあ、メリユにそんなことができるとは到底思えまぬが」


「近衛騎士団第一中隊を閉じ込め、天に召した鏡の柱がその結界よ。

 攻城兵器ですら打ち破れず、損壊してしまうほどの強度。

 そして、内部には外からの光も音も入って来ぬらしい」


 な、何ということだ。

 陛下が直接結界を張るところをご覧になられたということは、本当にメリユがそんな結界を張れるというのか!?


 一体いつ我が娘は、そんなことを覚えていたというのだ!?


「本当にの、此度の国難で表舞台に立つことを決意するまでも、密かに聖女としての聖務をこなしてきたであろうメリユ嬢は、人知れずどれほど国に尽くしてくれていたのか」


「はあ、カーレ第一王子殿下を一目見たいと騒いでおったあのメリユが……」


「ふふ、それですら、偽の姿だったとはな。

 メリユ嬢を聖女として教育したのは、おそらく先代のビアド卿であろう。

 よほどのことが起きぬ限り、聖女であることを隠し通せと命ぜられていたのであろうな」


「そ、そんな父上が……い、今となってはもう分かりませぬが」


 くっ、そう言えば、父上が幾度となくメリユを連れ出しておったのは知っていたが。

 帝国とのいざこざの耐えぬ土地柄ゆえ、父上に預けることは仕方のないことと思っておったが、裏でメリユは聖人、聖女の教えを受けておったというのか!

 ただ甘やかされているだけかと思ったが、真逆であったとは!


「ぐぅ、わ、わたしが聖人の血を発現させておれば、娘にそんな苦労をさせずに済んだものを」


「言うな、ワルデル。

 メリユ嬢は本当にできた令嬢だ。

 王家としても、メリユ嬢を王太子妃として迎えることができれば、ミスラク王国の未来は安泰であろう」


「へ、陛下!」


 そう、そういうことであるのか。

 聖女の力を発現させ、国に尽くしてきたからこそ、メリユは王太子妃に押されていると。

 まさか、そこまで育ってくれていたとは!

 男親ながら、涙が滲んできてしまうわ!


「本当にの、この国難を無事乗り越え、そなたと余の子が結ばれてくれれば、どれほどうれしいことか」


「陛下」


「このような状況下ではあるがな、今夜はカーレとメリユ嬢の祝い席を設けるゆえ、そなたもぜひ出席してもらいたい」


「陛下、ありがたき幸せ」


 学院時代から親友関係にある陛下のお子であられるカーレ第一王子殿下とメリユが結ばれ、この国が発展するのであれば、わたしとしてもどれほどうれしいことだろう。

 昨日、オドウェイン帝国の侵攻について協議していたときには考えられもしなかった空気に、わたしは陛下と(久々に)友人同士として見詰め合ってしまう。


「っ」


 そんなところにわたしも知っている影が陛下の執務室に入ってくる。

 今度は一体何が起きたというのか?


「失礼いたします、陛下に至急のご報告が」


「よい、ビアド卿にも聞いてもらおう」


 陛下、よろしいので?


「はっ、では、応接室で再び神の奇跡が起こり、メリユ聖女猊下がご成長されたお姿になられたとのことでございます」


「「はっ!?」」


 いや、使徒様というのもよく分からなかったのだが、メリユが成長したとは!?

 わたしの耳の聞き間違えか?


「せ、成長したとは?」


「デビュタントを済まされた齢十六、十七ほどのお姿になられたとのことでございます……」


「「……」」


 影からの信じ難い報告に、陛下とわたしは思わず無言で顔を見合わせたのだった。

お待たせいたしました、ついにメリユの父親の登場です、、、

前にも書きました通り、魔法少女の『大人に変身』、『お姉さんに変身』はよくあることですが、やはり悪役令嬢がやっちゃまずいでしょう、、、

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