表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢、母国を救う  作者: アンフィトリテ
41/322

第40話 悪役令嬢、超重要イベントに感極まる

(悪役令嬢・プレイヤー視点)

悪役令嬢は、聖国聖女猊下、第一王子、第一王女らとの会話に必死に付いていきながら、超重要イベントに立ち会っていることを実感します。

「サラマ聖女さ……猊下、兄はメリユ様の婚約者なのでございます」


「ブハァァァッ!!?」


 メグウィン殿下が突然言い出した話の内容に、わたしはストローで飲んでいたコーラを噴き出してしまった。

(HMDしている状態でペットボトル直飲みすると、頭の角度がおかしなことになっちゃうのよ)

 いや、ノートパソコンのキーボードに防水カバーしてなかったら、ノートパソコンが御釈迦になってしまいかねないところだったわ!

 ホントに何言い出すのよ、マジで!!


「げほっ、げほっ、げほっ」


 えっと、何、これベースシナリオ通りの展開ってこと?

 それとも、わたしの動きに合わせてイベント進行した結果、裏でわたしがカーレ殿下の婚約者候補に挙がるようなことが起きた?


 ううん、ホントに意味分かんない。

 そりゃ、カーレ殿下と婚約とか、ヒロインちゃん視点でゲームプレイするなら、第一目標ではあるだろうけれど、いきなり過ぎて『何起きたよ!?』という感覚しかないわ!

 しかも、悪役令嬢メリユがこのタイミングで婚約とか、完全に本編シナリオから外れてるわよね……。


「メリユ視点でプレイしている側としては、神展開なんだけど、素直に喜べねー。

 頭痛ぇー……」


 まあ、メリユが仮初の使徒様姿の聖女って受け入れられている時点で、頭おかしいって感じなんだけどさー。

 何気にこの状態で会話がAI自動生成でちゃんと進んでいっているのは、マジ神だと思う。


 このゲームエンジン、何気に優秀過ぎん?


 ただ、リアルタイム会話進行なんで、全く気が抜けないし、スキップもスピードアップもできないって意味ではかなりキツイ。

 というか、これ、アルファ版でこれなら、本編プレイとなったら、現実生活投げ捨てて、ゲームどっぷりになりそうで怖いわ!


 何より、殿下たちの反応がリアル過ぎて、『現実世界の友達要らね』って人たちが出てきそうなのは、危険度高いと思う。

 アルファ版テスターとしては、システム的に途中で強制終了させて、休憩させたり、現実世界に引き戻してあげないと危ないと思うわね。


 おっと、いけね。


 適当に相槌打っていたけれど、そろそろ会話に付いていけなくなりそうだわ。

 銀髪聖女サラマちゃんがまた何か言い出してる。


「一方的な通告?」


「はい、わたくしたちの使節団が通ってまいりましたキャンベーク街道は、セラム聖国から直接ミスラク王国に抜けておりますが、オドウェイン帝国との国境ともかなり近い位置にあるのはご存じの通りかと。

 そのオドウェイン帝国とセラム聖国の国境付近で大規模な演習を近々やる予定で、場合によっては越境もあるかもしれないが目を瞑って欲しいという一方的な通告でございました」


 西の辺境伯領って、お隣か。

 おい、ちょっと待て、西の辺境伯領と言えば、カーレ殿下の側近、ソルタ様の出身領じゃねーかよ!?


 ……うん、もしオドウェイン帝国の侵攻が西の辺境伯領経由で、カーレ殿下たちがソルタ様のところに向かうのだとしたら、普通に神展開よね!

 なるほど、これは多分ベースシナリオがそうなっているって訳ね!


 で、管理者権限保有メリユがそれを助けると。


 ふむ、普通にこれは頑張ろうと思っちゃいますわ!


「メグウィン?」


「メ、メリユ様は……その、西の辺境伯領での防備に、直接当たられるよう、此度ご来城を決意されたということなのでございましょうか?」


「なっ! 何だって!?」


 あれ?

 何か、ものすごく熱い視線を皆様から受けているような気がするんだけど、何?


「やはり、メリユ・サンクタ・マルグラフォ・ビアド聖女猊下は全てをご存じの上、動かれていたということでございましたか」


 銀髪聖女サラマちゃんも、口元を手で押さえながらまた目を潤ませているし、何この状況!?

 いや、カーレ殿下まで何目を真っ赤にされているの!?


「メ、メリユ様」


「メ、メリユ嬢……」


「猊下」


 うわー、ここに集う主要キャラ+メイドさんたちまで、わたしを涙ぐんだ目で見てくる。

 HMDで首を軽く左右に振っても、視界に映る全ての人たちがわたしを見てる!

 ええっ、何この状況!?


「メリユ嬢、あなたは、本当に西の辺境伯領で王国の防備に当たられるために、そして、王国の民の命を救うために、これまで動かれてきたのか?」


 んん?

 カーレ殿下のこんな熱の籠った台詞……ヒロインちゃんと恋仲になって以降しか聞いたことないんですけど!?


 いや、これはドキドキしますわ!

 はわわ!

 暫く、状況分析で精神がゲーム世界から離れかけていたけれど、戻ってきてみると、頭の中真っ白になりそう!


 う、いや、防備に当たるってのは、その通りだし、取り合えず頷いておけばよろし?


「ああ」


 ヤベェ!

 カーレ殿下がいよいよ目に涙を浮かべられているような気が!

 ちょっ、さすがにそれは反則ですわ!

 くあぁぁ、スクショ機能くれ、いや、動画キャプチャしてぇですわー!


「げ、猊下、どうかわたくしもご同道させていただくことをお許しいただけますでしょうか?」


 そんなカーレ殿下にドキマギしていると、今度はまた銀髪聖女サラマちゃんが膝を付いてお祈りポーズをしてくる!?


「「聖女様!?」」


 お付きのお二人もびっくりしてる、そりゃそうよね!

 うーん、ゲーム本編には出てこない銀髪聖女サラマちゃんだけれど、このアルファ版では主要キャラの一人ってことでいいのかしらん?


「もし本当に半月ほどでオドウェイン帝国が侵攻してくるようでしたら、わたくしたちが聖国に戻って聖騎士団を編成し、貴国に派遣する時間的余裕ないものと存じます。

 人数が少なくなり恐縮ではございますが、現在滞在中の使節団から聖騎士団を編成し、わたくしが指揮を取らせていただきたく存じますが、いかがでしょう?」


 せ、聖騎士団の指揮を銀髪聖女サラマちゃんが取るんだ。

 いや、見た目こんなかわいい子が聖騎士団を統率するのかと思うと、すごいことになってるなと思ってしまうわ。

 日本の乙女ゲーだからいいものの、洋画実写にしたら、かなり違和感のある絵面になりそう。


「お申し出、大変ありがたく存じます。

 ご同道いただけますこと、大変喜ばしく存じます」


 取り合えず、銀髪聖女サラマちゃんの話を受けると、カーレ殿下とメグウィン殿下がやけに盛り上がっているご様子。


「おお、聖騎士団を派遣していただけると!」


「サラマ聖女様、本当にありがとう存じます!!」


「いえ、使節団の人数はご存じでいらっしゃるかと存じますが、本当に監視のためだけの軍事力がほぼない聖騎士団にしかならないかと。

 その点、ご助力になれず申し訳ございません」


「そんなことはございません!

 影響力のお強いセラム聖国の聖騎士団がご同行いただけるだけで、大変心強く存じます」


 メグウィン殿下が両手を合わせて、また目尻から涙を零されている。

 いやー、これはVRゲームじゃなければ、スチル必須の光景ですわ!


 尊過ぎる!


 主要キャラが喜びにうれし涙を零している、超重要イベントが今ここに起きているじゃないのよ!


「メリユ嬢に、サラマ聖女、セラム聖国の聖騎士団まで揃うとなると……うぅ、我が王国は本当に救われるのだな」


 デビュタントは済まされているとはいえ、まだ学生であるカーレ殿下の年相応の反応に、女子大生としては、もうほっこりしてしまう訳よ!

 かはー、もう最高過ぎますわ!


「お兄様!」


「メグウィン」


 感情が高ぶり過ぎたご様子のメグウィン殿下がカーレ殿下に、とうとう抱き付かれる。

 何、この兄妹愛!

 カーレ殿下とメグウィン殿下がこんなに仲良かったなんて、本編でもそこまで描かれていなかっただけに貴重過ぎますわ!


 わたしがうっとりとその何とも微笑ましい光景を味わっていると、


 バァン!


 またいきなり扉が開いたのだった!

ゲームプレイ二日目にして、どんどん重要イベントが発生していますね。

展開速過ぎ……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ