第337話 悪役令嬢、オドウェイン帝国皇帝、大司教に神よりの警告を発することを突き付ける
(悪役令嬢・プレイヤー視点)
悪役令嬢は、オドウェイン帝国皇帝陛下、大司教猊下に神よりの警告を発することを突き付けます
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「あれは……旗艦、バーデール!
出航準備を進めていたバーデールがなぜここに!?」
「バーデールより灯火による救援要請を確認!
ま、間違いなく、旗艦バーデールが救援を求めております!」
「世界屈指の巨船がなぜ、なぜ宙に浮いておるのだ!?」
「バーデールの右隣は、投石器を搭載した最新鋭艦、アガバーであることを確認!」
帝城の広い敷地内に、軍艦……いや、軍船(?)
いや、旗艦とか最新鋭艦とか、そっちは『艦』って日本語訳が適当過ぎだろ!?
一部直訳になってるっぽい用語が、いまいちなんだよなあ、この翻訳システム。
まあ、何でも良いけどさ、さすがの帝国貴族の皆さんも帝国の誇る軍船(?)が空中に浮かんでいる光景には度胆を抜かれたみたいね?
現代テラだってそう、圧倒的軍事力をもってすれば、国際法的に許されないようなことだって権力者はできてしまうのよねぇ。
こっちはよりその傾向が顕著ってだけでね?
まあ、管理者権限を持っているわたしに楯突こうとしたのだもの、人道に反することはするつもりもないけれど、軍事力はしっかり削ぎ落とさせてもらうからね、覚悟しな!
「(しかし、エルゲーナはまだ火薬がなくて、大砲とかが装備されていないような年代なのねぇ)」
中程度のものは帆船かつガレー船の大きいのみたいのがあるけれど、大型の軍船は本格的な帆船と言って良いものがあるみたい。
ガレー船から帆船に移行しかけている時代って言って良いのかな?
大砲がない代わりに、大型の軍船からは投石器で攻撃する手段があるのね!
エルゲーナはエルゲーナならではの技術革新が進んでいるのが面白いわ。
「(まっ、全て処分させてもらいますけれどねぇ)」
多分オドウェイン帝国の海軍力は、エルゲーナでも最強と言えるものなんだろうと思う。
出航準備を進めていたということは海の上でも戦争をしかける気満々だったのね?
ミスラク王国を軽々と落として、ミスラク王国の拠点から陸上攻撃をしかけて、混乱に陥ってる最中に海からもということなのかしらん?
つまり、本気でオドウェイン帝国は、世界征服をするつもりだった訳か。
本当に権力者の欲望って怖いわね。
前線でどれだけの兵士の皆さんが命を落とそうと、そして、戦争に巻き込まれた街や村でどれだけ悲惨なことが起きようと、権力者には関係ないんだわ。
こちらの世界にも、聖教が説く聖なる秩序なるものはあるみたいだけれど、皇帝陛下には何も響かないんだと思う。
皇帝陛下にとっての『正義』は、オドウェイン帝国が世界征服することなんだろう。
まあ、お灸を据えてやんないとね?
わたしの大好きな『人』たちが不幸になるのは見過ごせないわ。
まだ自分が大天使ファウレーナだったっていう自覚は薄いけれど、前世でメルカ、リーラ、メルサたちと過ごした記憶だけは思い出しちゃっているだもの。
「(この世界には神がいて、元大天使たるわたしがいて、世界の秩序の崩壊には介入するんだっていうのをしっかり示してあげないとね?)」
それにしても、低空飛行はすっかり自分の手や腕を動かすような感覚で、翼を動かせるようになったのが不思議な感じ。
上空はねぇ、まだ自力で飛べる気がしないのよ。
下手すると、真っ逆さまに墜落しちゃいそうな気もするしね。
音声コマンドで飛ぶのが安全だと思えちゃう。
そういうところは、麗奈のまま、なのね?
さて、麗奈の倫理観に従って、軍船の皆さんを退避させてもらいましょ?
対象の軍船内に全アクターをリスト化、そして、さっきの前院の広場にでも下ろしてあげるの。
これで軍船を原子レベルで消滅させても、命を落とす『人』は誰一人出ないって訳よ。
「大型の旗艦、攻撃艦を含む十隻、中ガレーが三十隻ほど、ほぼ帝港で出航予定だった軍船全てが空に捕らわれております!」
「何だと!?」
「馬鹿なっ」
中ガレー……三十隻、そんなにいたっけな?
いや、いたような気も?
え……今空にそんなにたくさんの船浮いているんだっけ?
神の目がないとよく分からん!
えっと、クリッパーの使用は結構力使っちゃうんよね?
四十隻の軍船を消滅させると、ちょっちきついかもしんない。
でも、ここで引く訳にもいかないのよね?
「はあ……使徒殿、一体これはどういうおつもりか?」
相変わらずの落ち着いたダンディーボイスだけれど、未だ反省の色が全く見えない皇帝陛下。
それでも、状況が良くないということは理解していただけたみたいね?
「あくまでご警告として、貴国の軍船を消滅させると申したはずでございますが?」
本当にね、健忘症じゃないのって思う。
わたしが軍船を残らず消滅させるって確かに言ったのよ?
どういうつもりも何も、態度が変わらないんだったら、警告として海軍力をゼロにしてあげるって言ってるの?
エルゲーナのためにはその方が良いでしょう?
「は!
大司教からは、幻術だと聞いておるが……この程度で騙されると思うな?」
なるほどねぇ、まだ幻だと思っているんだ?
別に良いけれどね?
帝国の皆さんが誇る軍船は(少なくとも帝都の港にあるものは)完全消滅させるだけだし。
「この期に及んで、幻術だと信じていらっしゃるのでしょうか?」
「当然だ。
エルゲーナは『人』の統べる領域、神の干渉などあってはならない。
そうであろう、キーディー大司教?」
「そ、それは……はあ、そうでございますな」
ふぅ~ん、そんな傲慢なことを言っちゃって良いんだ?
しかも、オドウェイン帝国の中央教会の大司教様までそれに同意されていると?
一言言ってやろうかと思っていると、サラマちゃんがわたしの方を見てきて、発言の許可を求めてくる。
もちろん、良いよ。
むしろ、その辺りはサラマちゃんの管轄だと思うしね?
「キーディー・エピスコーポ・ダハクール大司教猊下。
聖教の教えに背かれるおつもりなのでしょうか?」
「いえ、あ、それは」
「よろしいでしょう。
それでは、神よりのご警告がどれほどのものか見極めていただいてから、後ほど審問をさせていただくことにいたしましょう」
「ひぃ」
ははーん、皇帝陛下は大司教様をファーストネーム呼びなのねぇ。
政治と宗教の癒着を感じるわ!
大司教様は、神よりの神罰なんてあり得ないと思っているからそんなことが言えちゃったのよねぇ?
じゃあ、神のお力がどれほどのものか(まあ、警告なんだけれど)とくとご覧あれ!
「特使の皆様、ものを消滅させるご命令を執行いたします。
バリアで護られてはおりますが、耳を塞ぎ、軍船の消失に備えてくださいませ」
わたしは翼をパタパタさせて、特使の皆の方を向くと、そう告げる。
まあ、これまでも散々やらかしてきただけに皆さん、慣れたものよね。
ただ、わたしの姿のハードリーちゃんがすごく心配そうにしている?
「メリユ様、わたしの方は、いつでも聖力をお渡しできる状態ですので」
「メルーも!」
「ありがとう、二人とも」
本当にハードリーちゃんも聖力持ちの管理者になってくれたのが本当にありがたい。
警告って言ってもクリッパーを使うとなると、HP管理がなかなか難しいしね。
「“Play warning-sound-2 with volume 100.0 at pin-id 105”
“Execute batch for all_actors_tranlation with cylinder5.conf”
“Execute batch for preparation-clipping with cylinder5.conf”」
わたしはダム放流時のサイレンを再び流すと同時に、クリッパーの実行準備を行うのだった。
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