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悪役令嬢、母国を救う  作者: アンフィトリテ
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第335話 王女殿下、帝城にてオドウェイン帝国皇帝に謁見する

(第一王女視点)

第一王女は、オドウェイン帝国帝城にてオドウェイン帝国皇帝に謁見します。


[新規にブックマーク、『いいね』いただきました皆様方に厚くお礼申し上げます]

 使徒様のお姿をされたメリユ様が特使の最前で進まれたことで混乱に陥った帝城ではあったものの、それでもさすがはオドウェイン帝国と言うべきか、謁見の間の扉は(待たされることなく)開かれたの。


 高いに天井に吊り下げられた立派なシャンデリア。

 重く垂れ下がる緋色の帳。

 壁に掲げられた帝国の紋章。


 そして、わたしの真正面には帝国皇帝陛下の玉座があったわ。


「あれが……」


 そこに座されるは、ザアクシー・インペリエストロ・オドウェイン皇帝陛下。

 もちろん、初めてお目にかかるのだけれど、エルゲーナで最も偉大にして辣腕な皇帝と言われるだけのことはあると感じられる、目つきの鋭い厳しそうなお方だった。


 本来であれば、わたしは(許しを得るまで)視線を上げることは許されない立場。


 けれど、メリユ様の補佐役である今は、許しを得るまでもないと思ってしまえる。

 何せ、今のメリユ様はエルゲーナ=この地上において、最も神聖にして尊きお方なのよ。

 元は神のご眷属であらせられ、今もご神命の代行者として、使徒様のお姿を下賜されている時点、エルゲーナの全ての『人』はメリユ様に祈りを捧げるべきと思えるくらいだもの。


「ぉ、おぉ、な、何と……」


 玉座の傍で唐突に言葉を発せられたのは、白と金の法衣をまとった(おそらくはオドウェイン帝国中央教会の)大司教猊下。


 身動ぎ一つされない皇帝陛下に対して、その動揺っぷりが小悪党であるのを物語っている。


 帝室と結託し、我がミスラク王国に工作のための聖女習いを送られ、更には先遣軍においても開戦の手伝いをしたオドウェイン帝国中央教会がご神意に背くことをしたのは明白だもの。

 神が使徒様のお姿のメリユ様を遣わされたことで、怯えを抱いたのでしょうね?


「使徒……本物の使徒なのか?」


「一体、何が起きておるのだ!?」


 謁見の間に留まっていたらしい帝室関係者や高位貴族からも驚きの声が漏れる。

 この状況に至っても逃げ出さないだけマシと言えるのかもしれないわね。


 そんな中、メリユ様は白く輝くお翼を広げられ、軽く羽ばたかれるとゆっくりと玉座の正面の床へ下り立たれる。

 お翼からは神聖なる光の粒が周囲に散り、その神々しさに、ざわりと空気が揺れた。


「陛下、お久しぶりでございます」


 事前の打合せ通り、サラマ様が地上に立たれたメリユ様のお傍に並ばれ、皇帝陛下に声をかけられる。

 これが通常のセラム聖国の特使であったなら、サラマ様が立ったまま声をかけられるなんてことはあり得なかったことだろう。


 全てが本来の謁見のやり方とは異なっているのは誰の目にも明らか。

 そして、これまで身動ぎ一つされなかった皇帝陛下の指先が玉座の肘掛を僅かに強く握られるのが見えたの。


「セラム聖国よりの尊き御客人よ。

 我がオドウェイン帝国へようこそお越しくださった」


 まるでメリユ様など眼中にないといった態度で、あくまで聖国からの特使を迎えているのだというのをその言葉から滲まされる皇帝陛下。

 あまりの事態に、大司教猊下が混乱しているのが見えたわ。


「へ、陛下、お立ちになられるのがよろしいかと」


 その言葉に、皇帝陛下は玉座から立ち上がられ、帝室、帝国貴族の方々が膝を突かれる。

 けれど、特使一向は誰一人として膝を突くことはなかった。


 事前に決まっていたこととはいえ、帝国視点では不敬極まりないことなのだろう。


 一方で、聖国・王国視点で見れば、聖教上の序列でも最上位にいらっしゃるメリユ様を無視されること自体があり得ないほどの不敬になる。


「陛下、ご紹介申し上げます。

 こちらにおわせられますは、神よりご神命の代行者に任じられていらっしゃいます、メリユ・サンクタ・マルグラフォ・ビアド聖女猊下でございます」


「げ、げほっ、げほっ」


 大司教猊下が『ご神命の代行者』というサラマ様のご紹介に咳き込まれるのが見える。

 見た目は使徒様、それでいて、辺境伯令嬢の聖女猊下。

 きっとあまりにも理解不能な内容に、混乱のあまり、気管に唾が入ったりでもされたのだろう。


「ほう、それは奇術か、幻術か?

 聖国の大道芸は、布教のために手が込んでいると見受けられる」


「お初にお目にかかります、オドウェイン帝国の皇帝陛下。

 わたしは、かつて神より遣わされし使徒、ファウレーナであり、今はメリユ・サンクタ・マルグラフォ・ビアドとしてこのエルゲーナに『人』としての生を賜りし者でございます」


 その言葉に、大司教猊下や帝国貴族の方々からは抑えきれない息が漏れるのが分かった。

 皇帝陛下の御前であるゆえ、どよめきこそ起きなかったものの、メリユ様の自己紹介は、衝撃的なものだったのだろう。


 とはいえ、それを明かして良かったのだろうか、と思うのはわたしだけではあるまい。


 わたしは思わずハードリー様と目を合わせてしまっていた。


「ははははは、元は使徒ファウレーナであったと申すか、また大言壮語も甚だしい」


 それでも、皇帝陛下はメリユ様に頭を垂れるどころか、笑い飛ばされたのよ。


 これがオドウェイン帝国の皇帝陛下。

 『鳥船』の出現と、それに伴う衝撃波、日食と続いても、意に介さないほどのご胆力。


 いえ、神経が図太いと言った方が良いのかもしれない。 


「陛下、いくら陛下でもそれは……」


「御客人、聖国は戦を望むか?

 どのような幻術、もしくは新兵器との組み合わせであろうが、我が帝国は誤魔化されんぞ。

 聖国は聖教の布教だけを行っておれば良いのだ」


 なるほど、このようなお方だからこそ、帝国はエルゲーナの全てを総べようとされたのだろう。

 神のご奇跡など、このお方は考えられたこともないのに違いない。

 ご自身の、帝国の力こそが絶大で、絶対のものであるという自信があり、メリユ様のご奇跡すらも眉唾物とお考えになられているのに違いないわ。


 もはや、怒りよりも呆れが先に立ってしまう。


 このお方なら、聖なる秩序など、帝国の秩序に置き換えてしまえとお考えになっておられてもおかしくないだろう。


「(………)」


 そう思ったとき、メリユ様が小さく唇を動かされて、聖なるご命令を発せられたのが分かった。

 一度目のご警告は既に発せられ、おそらく次は……。


 わたしはハードリー様ともう一度目を合わせて、雷に備え、目と耳を防ぐ。

 その直後、瞼越しにも世界は一度真っ白になり、直後今までに聞いたことのないような雷鳴が鳴り響き、全身が震えたわ。

 ガラスの割れる音、悲鳴が聞こえ、バリアの外で混乱が広がっていくのが分かるの。


 ピシャンピシャン、バリバリバリ、ゴゴゴゴン


 敢えて表現するならそれくらいの雷鳴が連続して響き、落雷を傍に感じたのよ。

 そして、静まり返る、謁見の間。


 間もなく、大粒の雨が降り出し、神の怒りはこれ以上ないほど示されたわ。


「(ゴクリ)」


 きっと、今皇帝陛下には、穏やか過ぎるメリユ様の笑みが何とも不気味に見えたことだろうと思う。

 つい先ほどまでは笑い声を上げられるほどの余裕をお持ちだったお方ですら、黙って唾を飲み込まざるを得なくなるほどの、メリユ様の威圧だった。

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何気にファウレーナ=メリユ、挨拶の時点でも若干塩対応しているようでございますね?

それにしましても、オドウェイン帝国皇帝の神経の図太そうなこと……。

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