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悪役令嬢、母国を救う  作者: アンフィトリテ
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第314話 王女殿下、バフェタ騎士爵令嬢の尋問に立ち会う

(第一王女視点)

第一王女は、バフェタ騎士爵令嬢の尋問に立ち会います。


[『いいね』いただきました皆様方に厚くお礼申し上げます]

「おお、ハラウェイン伯爵令嬢が聖女様のお姿でご復活されるとは!

 神は、その御前を血で穢されることを良しとはされなかったか。

 何というご奇跡だ!」


 気が付けば(普段であればあり得ないことに)涙が流しながら、近衛騎士団長が近付いて来られていた。

 本当に良いところで水を差すのだから。

 わたしが不満を抱きながらもハードリー様との抱擁を解いていると、近衛騎士団長がその場で片膝をつく。


「聖女様、いえ、聖女猊下。

 此度は、猊下らの護衛の任を負っておりましたにも関わらず、このような失態、面目次第もございませぬ!

 特使の任を全うし次第、職を辞するものでございまする」


「お顔をお上げくださいませ」


 使徒様のお姿になられたメリユ様がそのお翼を小さく羽ばたかれ、静かにエレヴェティング・プレーンに降り立たれる。

 聖なる光の粒が周囲に舞い散り、その神々しい光景に(騒がれていた)特使の騎士たちも次々と片膝をつかれていく。


「し、しかし……」


 下を向かれつつ、汗と涙と涙を拭われながら、近衛騎士団長がゆっくりと顔を上げられる。


「構いません。

 まずはことの全てをつまびらかにいたしまょう」


「はっ、承知いたしました」


 相変わらず落ち着かれたご様子のメリユ様のお言葉に、近衛騎士団長が頷かれると、傍で取り押さえられているメルカの方を向かれる。


「メルカ・メイゾ・バフェタ、なぜだ、なぜ聖女猊下に剣を向けた?

 そもそも、おまえは、皇后陛下を、王家の方々をお護りするために剣を取ったのではなかったのか?」


「………」


 何も言葉を発しないメルカに、そのメルカを取り押さえている騎士が上から押さえ付ける力を強めたように見えた。


「はあ、だんまりか?

 神の御前、聖女猊下の御前でよくもそのような態度を取れるものだ!

 では、訊き方を変えよう、おまえはいつから王国を裏切っていた?

 まさか……近衛に叙されたときには、帝国と内通しておったのかっ!?」


 近衛騎士団長の語気もまた強まるのが分かる。

 メリユ様と初めてお会いしたときはあのような態度だったとはいえ、近衛騎士団長もまた忠誠心だけは人一倍強かったのだから、その怒りは当然だと言えよう。


「………」


「言え、言わんかっ!

 おまえのしたことはセラム聖国との協定にもとづき裁かれ、必ずや大逆罪に処されよう!

 しかも、神に近しい方々を害そうとし、神の御前を血で穢そうとしたことは『人』として許されることではないぞ!」


 次第に顔を真っ赤にされていく近衛騎士団長。


「はあ、何も言わんと言うことは、バフェタ家が関わっておるということだな。

 おまえのしたことは王命にも逆らっておるのだ!

 王国側の裁きとして、バフェタ家の一族郎党、連座で斬首となるのは間違いなかろう!」


 近衛騎士団長がそこまで声を荒らげたところで、メルカが身体を激しく震わせ始めるのが見えた。

 やはり、メルカも自身の家族が連座で斬首となるのは耐え難いことなのだろう。


 ……しかし、近衛の彼女は、それくらい分かっていたはず。


 どうしてこのような大逆を犯したのか?

 わたしも怒りを抱きながら、メルカを睨み付けていると……驚いたことに、そこへ(聖騎士の方々に伴われ)アレム第二皇子殿下とテーナ第二皇女殿下が近付いてこられたのだ。


「ミスラク王国近衛騎士団長閣下、捕虜の身で言葉を挟むことをお許し願いたい」


「何卒よろしくお願い申し上げます」


「はっ、帝国の第二皇子殿下と第二皇女殿下が何用かな?」


 近衛騎士団長、機嫌の悪さが帝国皇族のお二人への言葉にも現れている。

 通常であれば、外交上許されないことではあるけれど、まあ、良しとしましょう。


「許します」


 わたしが機先を制してそう告げると、近衛騎士団長も黙ったわ。

 そこでアレム第二皇子殿下より前に一歩、テーナ第二皇女殿下が出てこられるとその場で跪かれるの。


「メグウィン・レガー・ミスラク第一王女殿下に深謝申し上げます。

 それでは、申し上げます。

 我が帝国の工作活動ゆえ、メルカ殿は何も言えなかったのでございましょう。

 オドウェイン帝国皇帝陛下の名代として、わたくしが全てをつまびらかにすることを許します」


 なるほど(やはり)帝国の命によって、メルカは何も告げることができなかったのね。

 理由は……家族に害が及ぶといったところかしら?

 まあ、工作活動としてはよくある話なのだけれど、数年前にはバフェタ家が裏切っていたということになる訳で、王家の影が事前に察知できなかったという点では衝撃が大きい。


「……で、殿下」


 蚊の鳴くようなメルカの声がようやく聞こえる。


「大方、ブラオ卿に唆されたのでしょう?

 貴女のご家族が人質になっていて断れなかった、そうでなくて?」


「そ、その通りで、ございます」


 メルカが認めた以上、これは確定ね。

 本当にテーナ第二皇女殿下が動いてくださったことには感謝しかないわ。


「ブラオ卿だと!?

 メルカ、貴様っ、砦内で卿に接触を図ったな!?」


「はい、影の交代時を狙って接触いたしました」


「はあ、何ということだ!

 王家の影が出し抜かれるなど!

 バフェタ家は、影の運用について情報を仕入れ、これまでも王国の情報を帝国に流していた訳か!?」


「はい、その通りでございます」


 これは……王家の影の方にも内通者がいるわね。

 そうでなければ、各貴族に配している影の運用を知られる訳がない。

 そして、砦内での影の運用についてもね。

 本当に頭の痛いこと!


「ぐぬぬ、もはや連座とかいう話ではない!

 バフェタ家は揃いも揃って逆賊ではないか!?

 全員が大逆罪を免れまいぞ!」


「そ、それはだけは……姉は、何も知らず巻き込まれただけでございます。

 何卒何卒お赦しを……」


 メルカの姉、お姉様がいらしたのね。

 その方が人質になっていて、メルカは逆らえなかったと。

 まあ、よくある話ね。


 だからと言って赦されることではないわ。

 メリユ様を害そうとされただけでなく、ハードリー様は命を落とされるところだったのだから。


 今でも、何も映しておられなかったハードリー様のあの瞳が忘れられないもの。

 たとえ、メリユ様が赦され……ても?


「よろしいでしょうか?」


「せ、聖女猊下」


 ふわりとメルカたちの周囲に近寄られるメリユ様に皆が首を垂れる。

 使徒様のお姿のメリユ様に顔を上げていられるのは、ハードリー様とメルー様、わたしくらいね。


「そのメルカ様のご令姉様をお救いすれば、全ては丸く収まることでしょう。

 ご令姉様を砦へと瞬間移動させますので、メルカ様も砦にお戻りになるということでいかがでしょう?」


 お命を狙われたというのに、本当に使徒様そのもののお優しいメリユ様のお言葉に、わたしは、涙が込み上げてくるのを抑えられなかった。

 そうね、こういうお方だったからこそ、わたしは添い遂げたいと思っていたのだわ。


「し、しかし、聖なるお力を無駄にお使いいただく訳には」


「ご安心くださいまし!

 そのために、わたしもメリユ様と同じお力を授かることができたのですから!」


 ハードリー様!?

 まさか、お姿だけではなく、メリユ様と同じお力を神より下賜されたと!?


 いいえ、ハードリー様はメリユ様をお身体を盾してまでお救いされたのだもの、神は……そのご貢献を認められて、メリユ様の同じお姿とお力を下賜されたということなのね。

 わたしはそんなハードリー様をとても誇らしく思いながらも、少しばかりの嫉妬を抱いてしまったのだった。

『いいね』、ご投票等で応援いただきました皆様方に厚くお礼申し上げます!

久々の連続更新でございます。

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