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悪役令嬢、母国を救う  作者: アンフィトリテ
303/322

第302話 悪役令嬢、砦に戻り、お説教を食らう

(悪役令嬢・プレイヤー視点)

悪役令嬢は、砦に戻り、お説教を食らいます。


[『いいね』いただきました皆様方に深く感謝申し上げます]

 オドウェイン帝国で少し時間がかかり過ぎたせいで、砦に戻った途端にハードリーちゃんのお説教を食らうことになったわたし。


 いや、もはやこれ、タダのご褒美なのでは?


 ハードリーちゃんのお説教シーンなんて、ゲーム本編でもなかったからなあ。

 あちらが別世界線の未来……そのシミュレーションだったとしても、ハードリーちゃんがヒロインちゃんにこういう態度を取ることは全くなかったのよね?

 それって、つまり、ハードリーちゃんとわたしは、多嶋さんたちのシミュレーションでは成り得なかった関係になったということではなかろうか?


「メリユ様、お聞きになられていますかっ!?」


「……はい」


 ぷんぷんされているロ○ハードリーちゃん、マジてぇてぇ!

 尊死してしまいますわ!

 写真に取ってSNSにアップして、エターナルカームファンたちにこの感動を伝えたい!


 って……もちろん、そんな気持ちはおくびも出さないように気を付けているけれどね。


「それで、聖なるお力の残量には問題ないんですよね?」


「ええ、『鳥船』の制御には、わたしの聖力が一切使われていないのは確認できておりますわ」


「それなら、よろしいんですが」


 そうなのだ。

 調子に乗ってエルゲーナに出現させてしまったUFO=シテ○・デストロ○ヤーだが、それにかかる操作ではHPホーリーパワーポイントが全く減っていなかったのよね。

 うん、マジありがたひ。


 まっ、正直謎過ぎるんだけれど、ネット遮断のタイミングからしても、多嶋さん=神様が監視していて、ネット遮断と引き換えにHP消費を肩代わりしてくれているのでは? と思っている。


 さすがに、あの巨艦を動かして、HPをごりごり削られたりしたら目も当てられないことになっちゃうんでねぇ?

 エレベーター代わりのシリン……いや、もうエレベーターでいいや、そちらの方は、メルーちゃんに操作を伝授済。

 HPは、メルーちゃんとわたしの負担が均等になるようにして、余力を残してあるって訳。

 オドウェイン帝国っていう敵国に向かうんだから、いつ何どきHPを使いまくらなきゃならん事態が発生しないとも限らないじゃない?


「まあまあ、ハードリー様、お説教もその辺りで。

 メリユ様には、メリユ様のお考えもありますでしょうから」


「そ、そうですね。

 良いですか、メリユ様? 本当に隠し事はなしなんですからね!

 言えないことなら言えないことで、そういうことがあるってちゃんとおっしゃってくださいね!」


「ええ、もちろんですわ」


 ……ああ、なんてかわゆす!

 やっぱり、メグウィン殿下とハードリーちゃんしか勝たん!!

 (メルーちゃんはヒロインとしての操作対象なんで、特殊な立ち位置なのよね)


「それにしましても、明日には出発とは。

 たとえ、聖国から帝国への緊急の特使だとしても、通常であれば、半月以上の準備期間が必要になるところなのですが」


「わたしからしましたら、あの帝国相手にそこまで礼を尽くす必要も感じませんし、そのまま向かっても構わないように思うんですが」


「ハードリー様、さすがにそういう訳にはまいりませんわよ」


 ハラウェイン伯爵領に行って十一歳バージョン・ハードリーちゃんに出会ったときから思っていたけれど、やはり、まだ口調が『ですわ』娘に染まる前なんで、ものすごく新鮮なのよねぇ。

 ゲーム本編だと、メグウィン殿下の話し方の影響受けてまくってた感じだったもの。


「ふふ、先日は非公式ながらセラム聖国を訪問してしまいましたから、明日オドウェイン帝国に赴けば、これが二か国目ということになりますわね?」


「確かに、今度は公式に……ということになるんですか?」


「ええ、公式に、特使の一員として、帝国に赴くということになりますわ。

 はあ、聖国国境を越えることすらまだ数年は先と考えておりましたのに」


 『公式に』『特使の一員として』というところを強調しておっしゃるメグウィン殿下。

 第一王女殿下というお立ち場を考えれば、今日明日に急に他国に行くなんてあり得ないし、本来であれば、十分な教育を受けて国王陛下のokが出てからって感じだったのかな?


「ふふ、齢十一でこんな大役を任せていただけるとは!

 補佐役として当然とはいえ、メリユ様には深く感謝しておりますわ」


 いやいやいや、大袈裟だってば!

 ん……でも、まあ……そりゃ、メグウィン殿下としては(第一王女という立場もあって)こういうお仕事がまわされるなんてことはあり得なかったのだものね。

 そんな風に喜ぶのも分かる気はするわ。


「それにしましても、お兄様のお気の毒なこと。

 せっかくゴーテ辺境伯領までお越しくださったというのにお留守番とは!」


 いや、カーレ殿下は、王位継承権第一位で、王太子確実な状況なのよね?

 そりゃ、敵国のオドウェイン帝国になんか行けないよ!

 たとえ、わたしのバリアがあるとは言ってもね?


 そもそも、ゴーテ辺境伯領という最前線まで来られたのも、ここで食い止められなきゃ、王国滅亡の危機だったからで……あと、わたしのバリア発動を国王陛下の名代として見届ける必要があったからなのよね?


 ある程度、余裕ができた今、そんなリンクを冒す訳にはいかんでしょ?


「メグウィン、わたしに、そんなに嫌味を言いたいのか?」


 およ、ベストタイミングでカーレ殿下が!?

 もしや聞き耳を立てられていたとか……そんな訳ないか?


「いいえ、本当に、本心からそう申し上げているのですわ。

 ふふふ、『鳥船』に乗船できるという栄誉、しっかり噛み締めてまいりますわ」


「くっ、わたしもできることなら『鳥船』に乗りたかったのだが……はあ、第一王子という立場ゆえ、そういう訳にもいかないのだ」


「ええ、スペアのわたしがしっかりミスラク王国として主張すべきことをオドウェイン帝国皇帝陛下にお伝えしてまいりますわ!」


「……メグウィン、わたしに何か恨みでもあるのか?」


「いえいえ、タダ、すべきことを先送りされ続けていらっしゃるお兄様に怒りを抑え切れなくなってきているだけですわ」


 メグウィン殿下が目を細められてそうおっしゃると、カーレ殿下が珍しくも『うぐ』という顔になる。

 そして、わたしの方を見るのだ。


「カーレ第一王子殿下、何かございましたでしょうか?」


 いや、近い近い。

 そんなにイケメン、傾国顔を近付けられたら、ヤバいって!

 何やら憂い顔なのが更に尊過ぎて危険なのだが……本当に何かあったっけ?


「すまない、メリユ嬢。

 いや、メリユ聖女猊下」


「……はい?」


 いや、マジで分からん。

 これ何のイベントだ!?


「無神経にも猊下のお気持ちを傷付けるようなことを申してしまい本当にすまなかったと思っている。

 第一王子という立場があってのものとはいえ、礼節を欠いた言動を重ねてしまったことも深く謝罪する」


「殿下、どうぞご尊顔をお上げください」


 えええ、そこまで気になることとかなかったってば!?

 婚約者騒動とかもあったけれどさ、むしろ、メリユの立場なら歓喜するところよね?

 ……ま、今は歓喜するほどでもないが?


「いや、猊下の御立場、なされてきたことを鑑みれば、あり得ないほどの不敬。

 猊下だけでなく、サラマ殿や聖国の方々からすれば、許されざることを重ねてきてしまったと自覚している。

 本当に申し訳ない」


「……許します」


 いや、こんなの『気にするな』というよりは『許す』って言っちゃった方が早いでしょ?

 だから、つい言ってしまったのだが。


「いや、しかし……そんなに簡単に許されて良いものなのだろうか?」


「ええ、殿下からすれば、わたしなど年下の、物事の道理も分かっていない小娘でしょうし」


 あれ、言葉選び間違えた?

 カーレ殿下が真っ青になっているのだが……。


「やはり、お怒りであらせられるのだな。

 猊下からすれば、わたしなど、年端もいかぬ赤子同然で、一体何生意気を言っているのかと……」


 待って待って待って!

 わたし、年上だけれど、そんな年上じゃないから!

 ファウレーナの記憶は食い止めているし、実質JDだから!

 ほんの数歳上なだけなんだから……って、そもそも、赤子同前って何なのよ?!


「殿下、どうぞ誤解なきようにお願いいたしますわ。

 わたしは、今の自身の在り様を受け止めておりますもの。

 確かに、わたしの知識は、歳相応のものではございません。

 ですが、殿下に、その、以前、あのような恥ずかしき演技をお見せしてしまったような、歳相応の娘でもあるのですわ」


「猊下……」


 いや、待って?

 そこ、顔を赤らめるところ? 違うでしょ?

 何やら、メグウィン殿下とハードリーちゃんのご機嫌が一気に悪化しているような気がするし、ここいらで手を打ちましょうや!


「どうか、わたしのことは、今後もカーレとだけ呼んでいただきたい」


「お兄様!

 あまりにお戯れが過ぎますと、どうなるか、お分かりでございましょう?」


 あっかーん!

 メグウィン殿下、ブチキレやないかいっ!

 こちらから見ていても、笑みが怖い。

 アニメなら、笑顔の上半分が暗く処理されるところでしょ、これ?


「っ! 痛いぞ、メグウィン?」


「当然の報いですわ」


 おおう、カーレ殿下、背中を引っ叩かれたみたいだぜ。

 今回は全責任をカーレ殿下に押し付けて、なかったことにしよう、そうしよう。


 うん、くれぐれもメグウィン殿下を怒らないように気を付けないとね、ははははは。


 わたしは今後メグウィン殿下の前で決して失言とかしないようにしようと心に決めたのだった。

『いいね』、ご投票等で応援いただきました皆様方に深く感謝申し上げます!

次話では、いよいよ翌日の出発になる予定でございます。

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