第297話 悪役令嬢、鳥船(UFO)を衛星軌道に顕現させる(!?)
(悪役令嬢・プレイヤー視点)
悪役令嬢、鳥船(UFO)を衛星軌道に顕現させます(!?)
[『いいね』いただきました皆様方に心よりのお礼を申し上げます]
『言ってしまったものは仕方がない』
ということで、直径二十キロ、厚み五キロのシテ○・デス○ロイヤークラスのUFOをエルゲーナに出現させることになっちった。
そりゃさ、今からでもスケール調整前のちっちゃいUFOモデルに戻すこともできなくはないんだけれど、アレコレ言ってしまった手前、帝国を威圧できるであろうこのUFO出すしかなくなっちったのよねぇ。
取り合えず、現状、新たな神託があったということで情報共有。
ここ(砦)におわす王国、聖国の重鎮の方々が大パニックという訳。
結局、再度会議をして、銀髪聖女サラマちゃんとカーレ殿下の最終判断で、騎士の皆さんには(少数になっちゃうけど)聖国の聖騎士さんも付けて、近隣集落に派遣、地元民の皆さんには教会に避難してもらうことになった。
まあ、教会で聖教でそれなりの立場にある聖騎士さんがうまく執りなしてくれることだろう。
って、丸投げやないかいっ!?
「(はあ)」
で、わたしは、シテ○・デス○ロイヤーの出現位置の調整で、コンソール前でまた仕事をしている訳なのだが。
周囲には、神と……何だっけ、『鳥船』なるものを顕現させるための準備で、やり取りをしているということになっているらしい。
まあ、神=多嶋さんと直接交信している訳じゃないが、ゲームエンジン上でスクリプトぶち込んでいるのも『神との交信』と言えなくもないだろう。
しっかし、ヤバイなあ。
シテ○・デス○ロイヤーデカ過ぎる。
あのさ、前に羽田から那覇に(飛行機で)飛んだとき、富士山がよく見えたんだけどさあ、その向こうに山梨の甲府盆地が見えていた訳よ。
その甲府盆地が、確か、東西南北それぞれ二、三十キロくらいの大きさだったと思うから……シテ○・デス○ロイヤーってそこにスポッとハマるサイズな訳よね?
で、高さが……富士山の一・五倍いかないか、くらいだっけ?
あー、飛行機から見たら、どれくらいのサイズになるか、だいたい分かったわ。
分かんない『人』は、“Googol Earth”で甲府盆地を上から眺めて欲しい。
「(うーん、取り合えず、衛星軌道に出すだけ出してみるか?)」
高度二百キロの衛星軌道なら大気圏への影響もなかろうし、まあ良いのでは?
何かってときに、出せなくなっても困るしね。
多嶋さんからの干渉もあるかもしれないから、今の内にエルゲーナに出現させておいても悪くないだろう。
砦内のpin-idの一つから上空二百キロのワールド座標を算出。
matrixファイルに保存。
エンジンへのロード用クラウドスペースにアップ。
「(“Load temporary object-10 file-named ufo_huge.stl with ufo_huge.mtx”)」
ふぅ、小声でも、実行できたみたいね。
取り合えず、これで一安心。
あとは、“Translate”コマンドで移動させれば、いつでも地表面に降下させることができるわ。
もち、山とかあるから激突させないようにしないとね。
乗り込みはどうしよう?
二十世紀的SFアニメとかでよくある、(厚みのない)白い円盤に乗って上昇していくのが良い?
それとも、キャトルミューテーション的な……それはあかんか。
刺激が強過ぎる。
中身については良さげなテクスチャ画像を探し中。
って言っても、ネットに繋がらんから、選択肢がなさ過ぎて、困っているんだが。
うーん、やっぱり真っ白なフォグエフェクトのかかった謎世界で我慢してもらうかなあ?
「(………)」
……何か騒がしくない?
外がね、うん、何か騒いでるような?
しかも、誰か走ってきてる音が聞こえるんだが。
「……何でしょうか?」
「何か起きたのかしら?」
すぐ外で『ちょっと、アリッサ、何?』『と、通してください』とか女騎士さんたちが騒いでいるのが聞こえる。
どうやら、アリッサさんが駆け込んできたらしい。
バタンとここ最近あり得ない勢いで扉が開き、
「し、し、失礼いたします!!
そ、空につ、月が……巨大な月が、あ、現れましたあっ!!」
ヤバ………。
うん、身に覚えがありまくりだわ。
シテ○・デス○ロイヤー風UFO、そんなにデカかったか。
せいぜい、昼間にうっすら浮かぶ月くらいにしか見えないと油断していたわ。
「「メリユ様」」
「お姉ちゃん」
「……どうやら、『鳥船』が出現したようでございますね」
「「「『鳥船』」」」
皆、絶句してる。
まあ、さっき会議したばっかでいきなり出現だもんねぇ。
ちなみに、騎士さんたちの派遣は普通に間に合っていないというか、これから出発だ。
あはは、やらかしちったよ!
「そ、側防塔に向かいましょう!
アリッサ、セメラ、皆も護衛をお願い」
「そうですね、わたしも『鳥船』拝見してみたいです」
「お姉ちゃん、『鳥船』もう来ちゃったの!?」
でも、メグウィン殿下やハードリーちゃん、メルーちゃんは回復早いなあ。
若いし、まあ、わたしのせいで色々見せられちゃってるもんねぇ。
今更か。
「き、危険では?」
「アリッサ、その『鳥船』には、帝国に赴く際、わたしたちが乗船するのよ?」
「た、確かに」
「アリッサ、しっかりなさい。
先触れ、あなたがまた拝命したのでしょう?」
「わ、分かりました。
お連れいたします」
セメラさんに、身体を揺すられて、アリッサさんも覚悟を決めたみたいね。
いやー、ゲーム本編じゃ、悪役令嬢メリユに塩対応していたメグウィン殿下近傍警護のお二人と、こんな状況になってしまっているのも笑えるわ。
って、笑っていられるような状況かっ!?
「行きましょう」
「メリユ様」
わたしはメグウィン殿下とハードリーちゃんに左右の手をそれぞれ握られて、部屋から連れ出されてしまったのだった。
でっ、きつい側防塔の階段を駆け上がり、そのてっぺんに上がってきたのだけれど。
はい、出現させた張本人であるわたしも絶句していた。
うん、あかん、デカ過ぎる……。
満月の十倍くらいある謎の白い物体が空に浮かんでるんだもん。
隠しようがないよ。
しかも、(昼間)ぼんやりとしたお月様と違って、思っていたよりくっきり白くギラついてやがる。
最悪だあ!
「……あ、あれが『鳥船』というものなのでしょうか?」
「はい」
「あ、あれが十三マイルもの大きさであると?」
「はい」
「はあ……て、天界のものとは、『人』の常識では測れないものなのでございますね」
さすがのメグウィン殿下も額に手の甲を当てられて、クラクラされていらっしゃる。
まあね、地表にはまだ下りてきていないけれど、直径二十キロとか、バリアなんて比較ならんサイズよ。
「あー、雲が吹き飛んでくぅ」
ははは、メルーちゃん、何言って、あれは衛星軌道上よ?
………。
あかんあかんあかん!!
成層圏下の雲にまで影響出ちゃってるじゃんかよ!?
あれか、高度二百キロでも完全な真空じゃないから……うん、薄いとはいえ『ある』空気分子を直径二十キロ厚み五キロの物体でいきなり押し退けたら、(時間差あるとはいえ)高層の巻雲にまで影響が出ちゃうのか!
あー、なんか、渦巻いちゃってるし!
頼む、地表面には影響せんでくれよぉ。
「(サブカルに毒され過ぎたか)」
マジ油断した。
アニメ、ゲーム、映画とかなら格好良いってシーンだが、リアルだと心臓に悪過ぎだわ!
……一応、バリア準備しておこう。
中層雲にまで影響出たら、その時点でバリアを発動できるよう、わたしはこっそりと準備し始めたのだった。
『いいね』、ご投票等で応援いただきました皆様方に心よりのお礼を申し上げます!
相変わらずぶっ飛んだことをしてくれていますね、さすが我らのメリユ=ファウレーナ=麗奈嬢。




