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悪役令嬢、母国を救う  作者: アンフィトリテ
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第270話 悪役令嬢、懐かしい顔ぶれ(?)との再会を実感する

(悪役令嬢・プレイヤー視点)

悪役令嬢は、懐かしい顔ぶれ(?)との再会を実感してしまいます。


[ブックマーク、『いいね』いただきました皆様方に厚くお礼申し上げます]

 大天使ファウレーナの魂を分割して生まれたのがエルゲーナのメリユと、テラのわたし。

 テラのわたしは、前世の記憶を何一つ思い出すことなく、それこそ神様との繋がりだってなかった(多嶋さんはわたしを監視していたのだろうけれど)。


 でも、メリユは違う。


 わたしがVR機器経由でメリユを遠隔操作しているのを知っていてフォローしてくれていた。

 それは、つまり、メリユは事前にわたしがメリユの身体を操作することを神様から知らされていて、その上でそれを受け入れていたということよね?

 何より、それまでも『神様のご指示のもと』悪役令嬢メリユらしい振舞いをしていたって、しかも『聖女』としてビアド辺境伯領を護っていたって言うのだから、随分と早い段階で神様と繋がっていたということなのだと思う。


 にも関わらず、神様を出し抜くような真似をしてまでして、わたしのサポートをしてくれるのはなぜ?


 わたしは、アドミニストラ システモ デ ダイバーサ モンドの概念を理解し、それを自在に扱えること……だけを求められていたという訳ではないと?

 半身であるはずのわたしに割り当てられていた役目って何なんだろう?

 乙女ゲーオタであり、エルゲーナを引っ掻き回し、世界の命運すらも書き換えてしまうくらいのハチャメチャな存在だからっていうのはあるのかもしれないけれど……多分、それだけじゃない。

 まるで、大天使ファウレーナに愛された二人の生まれ変わりと、再び出会い、再び愛を育むことまで委ねられていたようにすら、思えてくるのよね?


 そう、今度こそは、幸せな結末になるようにって、わたし、お願いされているみたいに感じたわ。


 このタイミングで入れ替わって、わたしが前世の記憶を思い出しかけたのも、メリユがきっとタイミングを見計らって動いてくれたのよね?

 多分、彼女たちとの関係の深まり度合と、神様のシナリオの進行度合も考慮して、『今だ』と思ってわたしをエルゲーナのメリユに繋げてくれたのだと思う。


 なら、わたしも彼女たちとちゃんと向き合わなきゃいけないのわよね?


「リーラ」


「ファウレーナ様ぁ」


 わたしは(今もわたしの胸に顔を擦りつけている)リーラ=ハードリーちゃんの頭を撫で上げながら、この運命的な出会いに感謝するの。

 エターナルカームの本編のテスターをしていたとき、メグウィン殿下とハードリーちゃんと友情を深めていくシナリオはとてもお気に入りで、テスター業務以上に繰り返しプレイしていたのよね。

 まさか、その二人が自分の前世で愛し合っていた相手だったなんて思わなかったけれど……ね。


 う……何というか、その……テスターをしていたときのわたし、乙女ゲーの本質であるカーレ殿下やヒーロー面々より、彼女たちと仲良くなるのにウキウキしていたような気がするわ。

 いや、学校でもトキメク男子もいなかったしなあ、あれって単に王子様的男子がいなかったってだけでなく……もしかして、わたしが元々女の子ラヴだったのかしらん??


 前世のわたし=ファウレーナは、間違いなく、彼女たちを愛していた訳だし、多分、そうなのよね?


 んん?

 ちょっと待って、ハードリーちゃんがリーラの生まれ変わりだとすると……メグウィン殿下は?


 バン!


 そう考えかけたとき、お部屋の扉がいきおい良く開けられ、そこには、酷い顔をしたメグウィン殿下が立っていたの。

 まるで悪夢を見て、泣いてしまった可哀そうな女の子のよう。

 今も頬を伝う涙に、充血した目、かわいらしいお鼻から少し鼻水が垂れてきてしまわれている。

 見ただけで、胸がキュッて締め付けられるような気持ちになったわ。


「『ファウレーナ様』、『リーラ』って……どういうこと、ぐすっ、なの、でしょうか?」


 どうやら、扉のところでメグウィン殿下はハードリーちゃん=リーラとわたしがそう呼び合うのを聞いてしまったらしい。

 どう説明したら……と思いつつ、メグウィン殿下の泣き顔とその口調が気になったの。


 今もゴロゴロと鳴っている雷。


 わたしがファウレーナの記憶に繋がっている間、ハードリーちゃんもまたリーラの記憶に繋がっているのだとしたら……お部屋の外にいたメグウィン殿下だって、前世の記憶を一時的に取り戻していてもおかしくはない。


「うっ、頭が……割れるよう……わたしは、一体……」


「姫様っ」


「入って来ないで!

 入って来ないで頂戴っ、今は部屋に誰も入れないで」


 メグウィン殿下は左手を側頭部に当てて、頭痛に耐えていらっしゃるような苦痛に満ちた表情をされつつ、今まで聞いたことのにないような悲痛な声でそう叫ばれるの。


「「は」」


 メグウィン殿下を追いかけてきたらしい近傍警護のアリッサさんたちは、戸惑いながらもそれに従い、静かに扉を閉めていく。

 その間にも俯かれたメグウィン殿下の頬には涙が幾筋も流れ、顎からピトッ、ピトッと滴となって床に落ちていくのが見える。


 そんなメグウィン殿下の姿は、わたしの中の眠る記憶にあった誰と重なるように思えたのよ。


 金髪碧眼の甘えん坊な女の子。

 普段は凛々しいクセに、二人きりになればわたしを姉のように慕い、抱き付いてくるかわいらしい女の子。

 わたしが天界に戻されてからも、そのきっかけを作ってしまったリーラを責めることなく、失意の底に沈んだリーラを支えた女の子。


「メルカ……?」


 わたしは脳裏に蘇った、メグウィン殿下と少し面影が重なる女の子がメルカという名前だったのを思い出していた。

 雷はまたゴロゴロズズンなんて鳴っているし、生理の酷いときみたいに頭痛もしてくるのだけれど……そんなこと程度で泣き言なんかを言っていられないわ。


 わたしの愛したメルカがそこにいるのだから。


「ファウレーナお姉様?」


 そして、わたしがメルカの名前を呼んだ途端、俯いていたメグウィン殿下はハッとしたように顔を上げて、目を見開いて、聞き覚えのある呼び名でわたしを呼ぶの。

 そして、さっきのリーラのように、顔をくしゃっとして、うれし泣きのような表情を浮かべて抱き付いてくるの。


「ファウレーナお姉様っ!!」


 ああ、なんて懐かしい光景。


 そんな風にわたしは思ってしまった。

 どうしてこんな大事なことに気付くまでに時間がかかってしまったのかしらね。

 王女殿下であるメグウィン殿下があんなにすぐにわたしに抱き付いてくるようになるとか、何かあるって思わない?

 リーラと同じく、大事な友人になれたから……とかそんなレベルじゃ、あんなに自然に抱き付いてきたりしないでしょうよ!


「ぐにゅっ」


 リーラの上に乗っかるようにして、わたしの胸元に抱き付いてくるメグウィン殿下=メルカ。


 前世のメルカのことを思い出していなくても、メグウィン殿下は直感的にわたしが抱き付いて良い対象なんだって理解していたのよ。

 そう、それくらい心を許して良い相手だと分かっていたのね。


 本当に信じられない……このテストプレイだと思っていたものは、こんなにも奇跡の連続だったのね?

 数百年ぶりにわたしたちは会うべくして再会したってことなんでしょう?

 これが運命じゃないとしたら、何だって言うのよって思ってしまうくらい、運命的な再会だったのね。


 ええ、多分、セッティングされていたことも……確かだと思う。

 多嶋さん=神様か、まだ見ぬシナリオライターさんか、メリユか。


「メルカ様、重い……です」


「リーラ様、交代してくださいませ」


「ああ、もう、そういうところ、メルカ様ですわね」


 おそらく多嶋さん=神様は、前世そのまま関係を取り戻すことは望んでいなかったのだろう。

 それでも、表面的にはこの三人の関係性があの頃と同じに戻るようにセッティングはしてくれた。


 そして、それを出し抜いたのはきっとメリユね。


「んふ、ファウレーナ姉様、わたし、神の試練に打ち勝ちましたわ。

 わたし、メルカ、だったみたいです、ファウレーナ姉様」


 涙声ながらも、うれしそうにそう告げ、わたしの胸元に顔を擦り付けてくるメグウィン殿下=メルカ。

 もう、お二人の涙と鼻水で、ネグリジェが大変なことになっちゃっているけれど、これはこれでうれしいものね。


 あれ……待って、何か違和感が……?


 さっきから誰かが気配を断っているというか、消しているような?

 まさか、メルーちゃん?

 わたしはハッとなって、まずいことをしてしまったような気になってしまう。


 だって、前世の立場でこうして再会を喜び合っているとか、メルーちゃんには訳が分からないでしょう?


「ふふふ、お姉ちゃんたち、無事再会を分かち合えられましたようで、よろしゅうございましたわ」


 ひぇっ!?

 そんなわたしの動きを察知したかのように、ベッド脇に気配を復活させるメルーちゃん。

 正直、思わずゾクッとなって、鳥肌が立ちそうになったわよ!

 だって、あの妹成分百パーセントな子が、いきなりどうしたって思うじゃないのよ?


「メ、メルー?」


「ふふふ、あたし、メルサだよ?」


 んんん?

 何、何だって!?

 メルーちゃんがメルサ……多分、前世の名前、だよね?

 女の子の名前の流行り的なものがあってかどうか知らんけれど、色々被り過ぎて混乱するわ!!

 メルカが“L”の方で、メルサが“R”の方っぽいのは何とか分かったけれどね!


「まさか……メ、メルサ聖女猊下!?」


「当たり……ですわ、メルカ様」


 ああああああああああ(納得)!!

 もしかして、メルカとリーラを見守ってくれていたらしいあのメルサ!?

 メルーちゃんも何かあるとは思っていたけれど、まさか、メルサの生まれ変わりなのぉぉ!?


「はい、『ウヌ・クン・エンジェロ』を教皇猊下に認めていただくために頑張っちゃいました!」


「ははあ、メルサ聖女猊下、その節は大変お世話になり、感謝申し上げますわ」


「ありがとう存じます、メルサ聖女猊下」


「………」


 えっと……よくは分からないけれど、わたし、メルカとリーラのためにご尽力してくださったメルサ聖女猊下が現生でメルーちゃんとして生まれ変わったと?


 あー……、メルーちゃんがエターナルカームでヒロインちゃんに抜擢されたのは、その活躍もあってなのかなあ?

 なんか、色々納得しちゃったわ!


「あの、お姉ちゃん、あたしもせっかく生まれ変わったので……妹分として、これからもかわいがっていただけるとうれしいです」


「ぁ、ありがとう、メルサ」


「うんっ!」


 うん……はい、そういうことね。

 メルーちゃんは……メルサは、前世で(わたしにとって特別だった)メルカとリーラからは少し距離も取りつつも、わたしたちを支えるために影ながら色々動いてくれていたんだ。

 それでも、本音を言えば、メルカとリーラのことが羨ましかったのも、事実なのね。


 だから、現生ではそのポジションになったって訳かぁ!


 わたしはそろそろ雷がまた落ちそうな気配を感じつつも、懐かしい顔ぶれが数百年ぶりに揃ったことに泣きそうになってしまっていた。

新年明けましておめでとうございます!

本年も何卒よろしくお願い申し上げます!!


旧年中は、皆様には大変お世話になりました。

ご評価、ブックマーク、『いいね』、ご投票等で応援いただきました皆様方に厚くお礼申し上げます!


年末年始で多忙であったこともそうなのですが、新年にハッピーエンド的な雰囲気のある本話をアップいたしたく存じまして、遅くなりまして申し訳ございません。


メグウィン殿下メルカ、ハードリーちゃん(リーラ)もそうですが、メルーちゃん(メルサ)も現生では報われたようで、本当にようございましたね!

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