第266話 悪役令嬢、再度悪役令嬢と邂逅する(!?)
(悪役令嬢・プレイヤー視点)
悪役令嬢は、再度悪役令嬢との邂逅を果たします(!?)
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再び訪れてしまった真っ暗闇の世界。
(多分、生理とは関係なく)頭がガンガンしてとても気持ち悪いのだけれど、さっきと同じ浮遊感に、ここが世界の狭間のようなところであるのは分かる。
そう、わたしがメリユに会っていたあの空間よね?
つまり、わたしのアニモ=魂と、メリユの身体との間のリンクが切れたってことで間違いないと思う。
にも関わらず、身体の感覚がメリユのままなのはどうしてなのか?
さっきまでもメリユの身体だったから、違和感は……まあないのだけれど、それよりもわたしの頭を割ろうとせんばかりの頭痛の大元、謎記憶がとかく気持ち悪い。
何せ、メリユですらないわたしがいて、そのわたしが……はっきりは思い出せないものの、二人の女の子たちと一緒にいた、そんな記憶があるのよ。
うう、拒み切れなかったか?
何なの、この喪失感!?
もう二度と会えない二人の女の子たち。
寂しい、悲しいって気持ちが溢れてくる!
これが、使徒ファウレーナの記憶だっていうの?
一体、使徒ファウレーナ=前世のわたしは、あの子たちとどんな関係にあったっていうのよ?
『麗奈様、もう呼び戻されるだなんて、早過ぎませんでしょうか?』
また、目の前の空間に、見覚えのあるドレス姿のメリユ本人がスポットライトを浴びたようにパッと現れる。
「うぅ、そうは言ってもさ、この謎記憶、マジ気持ち悪いの」
『ああ……ご記憶を、拒絶されたのでございますね?』
元は同じ、らしいけれどさ、なんか感じ悪いな、コイツ。
「はあ、あんたはよくファウレーナだか、わたしだかの記憶を受け入れられるわよね?
本当にわたしがわたしでなくなっちゃいそうで、気持ち悪くて仕方ないわ!」
本当よ!
あのまま全てを受け入れていたら、多分、わたしはわたしでなくなっていたんでしょ?
そんなのまっぴらごめんよ!
『さすがは、大天使ファウレーナの強い決意を引き継ぎしお方。
ですが、あなたからお別れを臭わされるのは困るとお伝えいたしましたでしょう?』
「何よ、何か悪い?
メグウィン殿下に、ハードリーちゃん、メルーちゃんたちとお話していて、はっきりと分かったわよ!
たとえ、あんた、あなたがわたしの前世様と同じ魂から派生した存在だとしても、メグウィン殿下たちには双子の別人と変わりないってさ!
わたしもそう思う。
あなたが代理してくれるって言っても、所詮は他人よ」
『ふふふふ、それで全てを明かされてしまわれたと?』
何がおかしい?
神=多嶋さんの命に従ってるらしい癖して、困り顔するどころか、何笑っているのよ、コイツ?
『本当に、本当に世界の因果を掻き乱されるのが得意でいらっしゃるのですから、笑いが止まりませんわ』
「な、何なのよ!
多嶋さんの言うがまま、悪役令嬢をやっていたあんたに言われたくはないわよ!」
『ぃ、いえ、神すら翻弄される麗奈様の振る舞われようが愉快と申しますか、あまりにおかしかったものですから』
どういう意味?
あんたはどっちの味方だって言うのよ?
『ふふ、もちろん、わたしは麗奈様の味方ですわよ?
何せ、あのタイミングで麗奈様をエルゲーナに引き込んだのは、わたしの提言もあったこそですもの』
あのタイミング?
つまり、テストプレイの始まった、メリユが王城を訪れたタイミングってこと?
『本当であれば、わたしの演じる悪役令嬢メリユは……続いていたはずだったのですわ。
メグウィン第一王女殿下も、ハードリー様も、悪役令嬢メリユと出会っていた確率だって高かったのですもの』
「確率?
神様はサイコロを振らないとか、そういうヤツ?」
『まあ、そうですわね。
あなたがそのサイコロの目を狂わされたのでしてよ?』
何そのいかにも悪役令嬢っぽい笑い方。
お手本にでもしろって言うの?
「狂わせたって、引き込んだのはあんたなんでしょ?」
『ええ、わたしの中に残るファウレーナが、わたしに囁いたのですわ。
今こそ、テラのわたしを呼び戻せ、とね』
「何じゃ、それ?
そういうスピリチュアル系の話って苦手なんだけれど」
本当よ。
どこかのアニメじゃあるまいし!
『ふふふふっ、そうでしょうとも。
あなたはそのままでよろしいかと』
ああ、もうカチンってくるなあ。
馬鹿にしてるのかな、コイツ!
「それで、あんたがわたしの代わりをやってくれているのよね?
テラの麗奈を」
『ええ、もちろんですわ』
「本当に、わたしの、麗奈の記憶を受け入れたって言うの?」
『当然でございましょう?
そうでなければ麗奈様の代わりは務まりませんもの』
コイツはコイツでどうかしてるわね?
わたしは、謎記憶を必死に拒んでこの様だって言うのに、そのまま流し込まれた記憶を受け入れたって言うの?
正気?
『構いませんことよ?
わたしのお役目はそういうものなのですもの』
おい、そこで影のある笑みを浮かべるな!
色々邪推しちゃうだろうが!
まさか、これも演技で、わたしをおちょくろうって言うんじゃないわよね?
『麗奈様。
スマホも、PCも、ネットもない世界でも平気でいらっしゃいます?』
「どういう意味?」
『ちょっとした確認ですわ。
メリユライフをちゃんと送っていただけていらっしゃるかしらと思いまして』
ああ、この子、オタ化していたんだっけ?
わたしのオタ知識までインストールされちまっているのなら、まあ、ネット接続できない世界とか地獄よね?
趣味って意味だけでも、ネトゲ、電子書籍にスブスクのネット動画配信も見られないとか、ゾッとなるのは分かる。
『エルゲーナは、麗奈様が思っていらっしゃるよりもハードな異世界でしてよ?
エターナルカームというゲームでプレイなさっていた際は、すぐ傍でネット接続されていらっしゃいましたから、そういう実感はなかったかと存じますけれど』
んー、まあ、よくなる異世界系でなくて、ガチ系の中世っぽさに拘っていたからねぇ。
いや、ゲームじゃなくて、ガチのガチのリアルだったんだが!?
本物の異世界とは、普通は思わんやん!!
「あまり舐めないで欲しいわね?
これでもわたしはテスターよ?
外部の余計な情報を遮断して、何十時間プレイし続けていたって思う?
どっぷりとエターナルカームの世界に浸かっていたわたしには侮辱も同然だわ」
いや、わたしの言葉に一々反応して、そういう笑みされるの、マジで嫌なんだけれど。
言質取ったりみたいに不気味に笑うのは本当に止めて!
『ふふふっ、では、そろそろお戻りいただきましょうか?
あなたの愛する大事な方々でお待ちでいらしてよ?』
「どういう意味よ?」
わたしがそう言い返すと、メリユは意味深な、いい笑顔を返してくる。
『麗奈様。
あなたがどのような選択をされようと、わたしは尊重いたしますわ。
ですから、どうか、正しいご選択を』
あなた、泣いているの?
ああ、もう、この子、マジで分からないー!
「ちょっと、メリユ」
『それでは、良きメリユライフを』
そういうとメリユは右手を軽く振って、別れを告げて、暗闇の中に消えて行ったのよ。
『いいね』、ご投票等で応援いただきました皆様方に深く感謝いたします!
さて、本当にメリユは麗奈の味方なのでございましょうか?




