第253話 ハラウェイン伯爵令嬢、聖力残量管理が甘くなっていたのを悔やむも、悪役令嬢の言葉に救われる
(ハラウェイン伯爵令嬢視点)
ハラウェイン伯爵令嬢は、聖力残量管理が甘くなっていたのを悔やむも、悪役令嬢の言葉に救われます。
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アリッサさんにご連絡をお願いして、砦の王国側に設営された王族用の天幕内で湯浴みのご準備をしていただくことになりました。
それまでの間、メリユ様とメルー様には、ハーブティーでご休憩いただくことになります。
どうにもメルー様のご調子がお悪いようで、メルー様のご体温を確かめさせていただきましたところ、すごく冷たくなっていらっしゃって、わたしはとても嫌な予感がしたんです。
聖なるお力のお残り、今どうなっていらっしゃるのでしょう?
「メルー様、聖なるお力がどれほど残っていらっしゃるか、ご確認いただけますか?」
「はぁ、はぁ、はい。
ショウ エイチピー ステータス」
呼吸が少し浅く、ご意識も……先ほどより、こうぼんやりとされているように思えるんです。
考えてみれば、オドウェイン帝国軍後列を土砂崩れから護るためと、お怪我をされた方々のご救命で、当初に見積もられていたよりも多くの聖なるお力を使われていらっしゃったのですよね?
ああ、余力があるものとして、油断していたのがいけませんでした!
聖都ケレンでご救命された際、メリユ様がお使いになられたお力は六分ほどだったはず。
今回は、聖水を流しっぱなしで御手当に当たられていらっしゃいましたから……もしかしますとそれだけで一割を超えていらっしゃるのかもしれません!?
「ええっと?」
「メリユ様っ」
コンソールに聖なる文字で(メリユ様が残量の値とおっしゃられていたものが)記されているようですが、わたしたちでは読むことができないので、メリユ様をお呼びします。
振り返ると、すぐ傍にまでメリユ様が駆け付けてくださっていて、少しびっくりしてしまいました。
「メルー、大丈夫かしら?
コンソールを見せて頂戴ね?」
「はい、お姉ちゃん」
「……ェ、エッチピー、十九パーセント!?」
メルー様がコンソールをメリユ様にお見せになられて、それをご覧になられたメリユ様が目を見開かれて驚かれています。
十九パーセントとは?
それは、つまり、残り二割を切っているということなのでしょうか!?
「残量二割を切ってるいるわね。
わたしのも確認するわ」
「お姉ちゃん?」
「“Show HP status”」
メリユ様がメルー様のコンソールの横に、ご自身のコンソールも出されてご確認をなさいます。
ど、どうしましょう?
もしメルー様に何かあれば、きっとわたしの責任なんです!
聖なるお力の管理はわたしがするって決めていましたのに、バリアを張らされた際の衝撃やご救命の神聖さに心奪われてしまっていて、メリユ様とメルー様の聖なるお力の管理が疎かになってしまっていたんです!
「に、二十二パーセント。
これって、もしかして、メルーからわたしへの聖力譲渡が五割切った辺りから制限されて、ほぼ均等に消費するようになっているって言うの?」
後半におっしゃられたことの意味は分かりませんでしたけれど、前半は分かります。
つまりメリユ様も、二割二分までお力を減らされてしまっているってことですよね!?
「メリユ様っ!?
メリユ様も二割切りかけるところまで減っていらっしゃるんですか!?」
「え、ええ、そのようですわ。
張ったバリアの枚数が増えたこともございますし、救命作業で聖水を大盤振る舞いしてしまったのが原因なのでしょう。
わたしもうかつでございました」
「も、申し訳ございません!!
聖なるお力の管理を任されていながら、またもこのような失態を……」
わたしは頭から血が引いていくのを感じながら、必死に頭を下げました。
本当に、本当に、どうしてわたしはこうなのでしょうか?
自分の気持ちを押し付けるだけ押し付けて、大好きな人のお役に立ちたいのに、実際は空回りしてばかり。
「ハードリー様」
涙が込み上げてきたところで、メリユ様がわたしを抱き締めてくださいます。
やはり……メリユ様のお身体も、こんなに冷えてきていて、相当なご負担になっていたのでしょう。
うう、本当に悔しさのあまり泣きそうです。
本当にお辛く、泣かれたいのは、メリユ様やメルー様なのは分かっていますのに、情けない限りです。
「メルーも、わたしも、これだけの聖力の行使、本当に初めてのことばかりでしたもの。
ご自身を責めないようになさってくださいませ。
わたしは、その、ハードリー様たちにいつも救われてきたのですから」
「メリユ様」
お優しいメリユ様のお言葉に、わたしは今にも号泣しそうになってしまいました。
本当でしたら、叱られて当然の身なんですよ、わたし。
いつもメリユ様にご迷惑ばかりかけてしまって、変わろう変わろうって思っても、それでもまだ未熟で、いつになったら、メグウィン様のようになれるのでしょうか?
「メリユ様っ!
セ、セメラはメルー様を、ハナンはメリユ様をお運びして!
湯浴みでお身体を温められたら、すぐに砦でご休養なさっていただくように!」
「手の空いている女騎士は、お二人の護衛を。
天幕には、絶対に男を近付けるな!」
「「はっ」」
そんなところに少し離れていらっしゃったメグウィン殿下が慌てて駆け付けられて、セメラ様とハナン様、他の護衛騎士の皆様方にご指示をなさいます。
本当にメグウィン様=メグウィン第一王女殿下には敵いません。
「ハードリー様、ほら」
メグウィン様に肩を軽く叩かれて、(名残惜しくも)メリユ様のご抱擁から解かれ、お二人の顔を交互に見てしまいます。
「もう、何てお顔をなさっていらっしゃるんですか、ハードリー様」
「で、ですが……」
わたしは頬がひくついてしまうのを感じながら、涙に歪む視界の中、メグウィン様を見詰めます。
「キャンベーク渓谷で、メリユ様が倒れられたとき、真っ先に飛び出していかれたのはハードリー様でしたでしょう?
わたしは、そのハードリー様の高い行動力を買っているのですから、少々のミスくらいで悩んで欲しくありませんわ」
「そうですわね」
メリユ様にまでご同意いただいて、わたしはひくついていた頬が熱くなってくるのを覚えてしまいます。
「メリユ聖女猊下。
失礼いたします」
「ハナンさん、どうぞよろしくお願いいたします」
「はい、承りました」
ハナン様に抱き上げられるメリユ様。
その隣では、既にセメラ様に抱き上げられたメルー様がいらっしゃって、天幕の方に一緒に向かわれるのを待っていらっしゃいます。
「では、皆様、後のことは何卒よろしくお願い申し上げます」
「メリユ様っ」
涙が一滴頬を伝っていくのを感じながら、わたしは抱き上げられたメリユ様のお顔に、自分の顔を近付け、その頬にキスさせていただきました。
だって、これくらいしかすることが思い浮かばなかったんですもの!
「……ハードリー様、ありがとうございます」
いつもの『ありがとう存じます』ではなく、少しくだけた感じのお礼をいただき、わたしはまた更に頬が熱くなってくるのを感じます。
ど、どうせなら、口付け、したかったんですけれど、ハナン様に抱き上げられたご姿勢的に、難しかったんです。
ですが、少し青褪め始めていたメリユ様の頬に僅かばかり血の気が戻られたようにも見えて、わたしはキスができて良かったと思えたのでした。
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このところ、お仕事で多忙な状態となっておりまして、更新頻度が下がり申し訳ございません。
もう暫くの間執筆が滞るかもしれませんが、ご容赦いただけますと幸いでございます。
エッチピー……どうにも紛らわしいのですが、ホーリーパワーポイントでございます。
MPは……どうもしっくりこなかったもので、(何度も書いておりますが)ご了承くださいませ。




