表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢、母国を救う  作者: アンフィトリテ
240/322

第239話 悪役令嬢、聖国聖女猊下の手助けのために歌う(!?)

第239話 悪役令嬢、聖国聖女猊下の手助けのために歌う(!?)


(悪役令嬢・プレイヤー視点)

悪役令嬢は、悪魔呼ばわりされ、言葉詰まる聖国聖女猊下の手助けのために歌います(!?)


[新規にブックマークいただきました皆様方に深く感謝申し上げます]

 ヤバイ。

 いきなり数千人はいそうな敵さんの視線を浴びると、HMD越しでも、鳥肌が立つような感覚を覚えてしまう。

 嫌な緊張感を解きほぐそうと、(さっきから)心の中で軽口をたたいていたわたしでも、さすがに顔が引き攣りそうになるわ。


 さっきのブラオ卿を笑ってなんていられないわね。


「サラマ様」


 わたしは、タッチコントローラーでメリユの手を動かして、淡く輝く銀髪聖女サラマちゃんの手を離さないように気を付けつつ、彼女に近付く。

 少し青褪め、硬い表情を浮かべているサラマちゃん。

 今まで聖国の聖女として、表立って批判にさらされるようなことのなかった彼女にとって、いきなり悪魔呼ばわりされるのはきつかったみたいね。


 どうせなら、わたしの手で直接握ってあげたかったけれど。


 まあ、今はこうするしかないんだから、仕方ない。

 今のわたしにできるのは、彼女を応援することだけ。

 一応いざというときの代役(?)にはなっているけれど、彼女はまだ折れてはいない、わよね?


 だから、少しばかりの時間稼ぎをしようかなって思う。


 それくらいなら、わたしが干渉しても問題ないでしょう?

 相手が悪魔というのなら、それを打ち消せるくらいの清らかさを示せばいいのだわ。

 敵さんを煙に巻くってほどじゃないけれど、こういうときはヒロインの歌って相場が決まっている。


 いや、何のアニメ、見てるんだって言われそうだけれど、わたしの親の代から、ヒロインは歌で宇宙艦隊ですら蹴散らしてきたんだから、ここでその伝統の技を繰り出しても怒られないでしょ?


 で、何を歌うかって。


 レパートリー的には厳しいっちゃ厳しいんだけれど、アニソンは世界観的に違うかなって思うし、歌える中でそれっぽいのって言やあ、『アヴェ・マリア』かな?

 ラテン語のカタカナ読みでしか歌えんけれど、まあ、雰囲気的には合っているでしょうよ!


「……」


 HMDをずらして、コンソールによる介入実行を行う。


 “LoudSpeaker ${avatar_${admin_meliyu_id}}”


 メリユのアバターに拡声器バッチを適用。

 一、二、三。

 サラマちゃんと同じく、わたしの手、ううん、身体も淡い光に包まれる。

 BGMはないけれど、ぎり音程は取れると思う。

 向こうの世界はラテン語じゃないから、意味は分かんないよね?

 まあ、コンソールの英語が理解されないんだし、ラテン語も意味不明だから、独特の雰囲気が出ていいんじゃないかな?


「「『メリユ様?』」」


 目の前のサラマちゃんが目を見開いて驚くのが分かる。

 まあ、こっちのノートPCでバッチ実行したから、突然なんか命令実行したように見えるし、そりゃびっくりするかな?


 わたしはサラマちゃんに微笑んでみせると、すぅっと息を吸って、『アヴェ・マリア』を歌い出すのだった。






 いやー、頭が痒くなってくるわね。

 大音響で数千人の敵さんに自分の歌を聞かせるとか、(正気か?)って今更ながらに思う。

 まあ、でも、サラマちゃんには最後まで口上を続けて欲しかったし、サラマちゃんが納得できる形で、この場を収めたかったから、まあ良いわよね?

 それに、久々にこの部屋の性能を活かせるし、思い切り歌い切りたい気分。


「メリユ様……」


 メルーちゃんの声に自動変換されているんだけれど、ハモってて何かこう気持ち良い。


 正ヒロインのメルーちゃんと一緒に歌っているような気分になるわね。

 それにしても、何……だろう?

 身体が輝いているのは意図通りだから、ま、良いとして、どうして変身のときのような光の粒子が散り出しているのが気になる。


 雰囲気は出ているから、良いのか?


 何かまたアップデートされたような気がするのだけれど、多嶋さん、何かした?

 まあ、サラマちゃんが妙に感激してくれているから、文句は言わないこととする。

 って、両腕、メグウィン殿下とハードリーちゃんにがっちりホールドされているっぽいのは、なぜ?


 タダ歌っているだけで、わたしが消えてなくなるとか、そういうことはないんだけれど?


 ま、その内、いなくなることだけは確定しているんだけどね。

 ああ、こういう曲、歌っていると、ちょっとしんみりしちゃうよ。

 わたしはいつ皆に真実を告げれば良いんだろう?

 そして、多嶋さんの後始末に抗うことはできるんだろうか?

 そんなことを考えてしまう。


 せめて、わたしがここで『アヴェ・マリア』を歌ったことの記憶は残ってくれると良いなと思うわよね。


 少しゆっくり目に歌って僅か四分半ほど。


 わたしは何とか歌い終えることができたのだった。






 目の前には、涙を零すサラマちゃん。

 ううん、両脇のメグウィン殿下もハードリーちゃんも、目を真っ赤してくれている。

 もちろん、敵さんも静まり返って、ブラオ卿も何も言ってこない。

 いやー、音痴ってことはないはずだし、内容がイミフ過ぎて、静まり返っちゃったとかないよね?


『サラマ様』


 サラマちゃんは、涙を目尻からポロポロと零しながら、わたしの手をギュッとして、グッグッグッと小刻みに震わせてくれている?

 どういうアレで、泣かせちゃったのか、分からんけれども……元気付けになってくれていると幸いだわ。


『はあ、皆様、ただ今、神への賛歌をお歌い賜りましたのは、メリユ・サンクタ・マルグラフォ・ビアド聖女猊下でございます。

 この聖なるお光とお声を前に、我々が悪魔に加担しているとお疑いになられる方はいらっしゃますでしょうか?』


 あー、神への賛歌ってことにされちゃったのか?

 なんか、これはこれでまずい気がしなくもないけれど、異世界だから、お許し願おう。


 何にせよ、サラマちゃんが(涙声ながら)復活してくれたのは何よりだわ。


 ……いや、聖なるお声とは何ぞ?


『お初に御目文字いたします。

 メリユ・サンクタ・マルグラフォ・ビアドでございます』


 ……何、その妙に揃った『はあ』とかいう溜息は!?

 突然歌い出した娘に呆れ果てた溜息とかじゃ、ないよね?


 今メルーちゃんの姿だから、下手すると、メルーちゃんに迷惑かけちゃうことになっちゃうじゃないのよ?


『深謝申し上げます、メリユ・サンクタ・マルグラフォ・ビアド聖女猊下。

 ……皆様、聖国聖女として改めてご警告申し上げます。

 既に神より幾度とご警告が皆様のもとに届けられたかと存じます。

 『星落とし』と『雷』いずれも神より此度の戦を止めるよう、ご警告賜ったものでございます。

 もしこのまま戦を継続されるようでございましたら、ご神罰がご神命の代行者様であらせられるメリユ・サンクタ・マルグラフォ・ビアド聖女猊下からくだされることとなりますでしょう』


 おお、サラマちゃん、無事口上第二バージョンへと移行できたみたい。

 サラサラの銀髪を輝かせながら、凛々しくおっしゃっている姿が、本当に尊い。


『必要でございましたら、聖国聖女であるわたくしと、聖騎士団の方で書状を発行し、戦を止めることも可能でございます。

 お待ちできるのは、三刻ほどでございます。

 どうぞ、ご賢明なご判断をいただけますよう、お願い申し上げます』


 うん、とても理性的なご警告だと思うわ。

 下手にわたしが警告しなくて正解だったと思う。


 何せ、今わたし、二日目だし、少々情緒不安定なんで、いきなりブチッていっちゃうかもしれないしね。

 あははは。


 まあ、バリアの方も準備万端だけれど、退却してくれるんなら、それにこしたことはないわよね? とわたしは思うのだった。

新規にブックマーク、ご投票等で応援いただきました皆様方に深く感謝申し上げます!

前回のお話、少し変更いたしました。

サラマちゃんには最後までちゃんと口上していただくのが良い、と判断いたしました。

まあ、メリユを歌わせる予定は以前からあったのですが、声優の才能もあるファウレーナさんですからちゃんと歌いきってくれたことでございましょう!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ