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悪役令嬢、母国を救う  作者: アンフィトリテ
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第231話 ハラウェイン伯爵令嬢、勢揃いした味方の前で己の力を示す悪役令嬢を見守る

(ハラウェイン伯爵令嬢視点)

ハラウェイン伯爵令嬢は、奇跡的にも勢揃いした味方の前で、悪役令嬢が力を示す様を見守ります。

 メルー様がバリアの張り方をご習得された直後、見事なまでのタイミングで王都騎士団の先遣隊がご到着されたのです!

 どうしてかと言いますと、メルー様のバリアは、味方を護るためのバリアだからなのです。

 何せ、この砦には、王都騎士団の方々や聖騎士団の方々が寝泊まりするような余裕はありませんから、基本は野営陣地を構築して滞在されるそうです。

 ですので、いざというときは、メルー様のバリアで、砦から野営陣地全てを囲むようにして張れるようご調整されたのです。

 そして、それが成功したところに王都騎士団の皆様がご到着されたのですから、まさにこれ以上ないベストなタイミングと言えるでしょう!


 その王都騎士団の先遣隊のご一行には、領城に残られていたサラマ様、カーレ第一王子殿下たちに加え、何と近衛騎士隊長様も加わられていて驚きました。


「某ら、王都騎士団と少数ではございますが、近衛騎士団の選りすぐりを揃え、馳せ参じました次第でございまする。

 メグウィン第一王女殿下、聖女様のお出迎えを受けられ、感涙の……」


 『面を上げよ』と言われてから、(思っておりましたよりも若々しい?)ご立派なお髭を貯えられた近衛騎士団長様がやけに感情のこもった言葉を紡がれていらっしゃったのですが、途中からメリユ様のお姿を探され、困惑されていらっしゃったようで思わず笑いそうになってしまいました。

 近衛騎士団長様は、普段のメリユ様のお姿しかご存知でいらっしゃらないでしょうから、メルー様のお姿だと分からないのも当然ですよね?


「カブディ近衛騎士団長様。

 今はこの通り、神より下賜されました『別人』の姿で恐縮ではございますが、わたしがメリユでございます」


「は……別人とは……あ、ああ!! これは大変失礼いたしましたっ!!

 まさか、聖女様がご変身されていらっしゃるとは露ほども思わず、このカブディ、己の浅慮ぶり恥じ入る次第でございまする」


「いいえ、とんでもございません。

 どうぞお気になさらないでくださいませ」


「おお、相も変わらずお優しきそのお心、感極まるばかりでございまする」


 近衛騎士団長様、涙ぐまれていて、わたしまで涙ぐんでしまいそうになってしまいました。


 けれど、なぜか、メグウィン様は少しご機嫌斜めでいらっしゃるようで……あ、ああっ、そう言えば、メリユ様に意地悪されたのってこの近衛騎士団長様だったのですよね!?

 メリユ様のご看病をしていましたときにメグウィン様からお話は伺っていたのですが、あまりのお変わり様(?)にその方だとはまるで思えなかったくらいです。


 う……しかし、それはまたわたし自身にも当てはまるようにも思えてきて、心がズキズキしてきてしまいます。


「これが一生付き纏うことになるのかと思うと……」


 今更ではありますけれど、どうしてあのとき、もう少し冷静になってメリユ様のことを見られなかったのでしょうか?

 悪いお噂を聞いてしまっておりましたし、その上、あの偽聖女様の一味に加担しているような思い込みまでしてしまっていたのも事実ですが、じっとメリユ様のご様子を見ていればそんなお方ではないとすぐに気付いたことでしょう!


 わたしがないことばかりで非難しても、反論されることなく、微笑まれてわたしが落ち着くのを待ってくださったメリユ様。


 そんなメリユ様を引っ叩いてしまったことは一生引き摺ってしまいそうです。

 だって、(今こうして)大好きなメリユ様にあんな酷いをしてしまったんですよ?

 できることなら、あのときの自分こそ引っ叩いて、その目を見開いてよーく見なさいよって言いたいです、はあ……。





 そして、奇跡のようなことはその後も続きました。

 いえ、先触れの時点で『奇跡だ』って思っていましたけれど、王都騎士団の先遣隊のご到着後、二刻もしない内に聖国側からも聖騎士団の皆様がやって来られたんですよ!

 思わず、お傍にいらっしゃったマルカ様と手を合わせて喜んでしまいました!

 ええ、もちろん、メグウィン様とも、メリユ様とも。


 それでも、メリユ様はすごく落ち着いていらっしゃって、きっとご神託で聖騎士団の動きについても早めにご存知でいらっしゃったんだろうなって思ったんです。


 けれど、それだけではありませんでした。


 実はちょっとしたトラブルがあったんです。


「サラマ・サンクタ・プレフェレ・セレンジェイ聖女猊下、メリユ・サンクタ・マルグラフォ・ビアド聖女猊下のご容姿が伺っていたものと異なっているのはなぜなのでございましょう?」


 聖騎士団先遣一個中隊長様(?)がメルー様のお姿になられたメリユ様に疑念を抱かれたんです。

 ガラフィ枢機卿猊下様は、ミューラ様のお姿になられたメリユ様しかご覧になられていない訳ですし、頭の固い隊長様がそう思われるのも仕方がないことでしょう。


 しかし、あの視線はいけません!

 ダメです!

 絶対に許されないです!


 あの方の目つきは、メルー様なメリユ様を見下していらっしゃったのですから!


「アローマ様、では、どうすれば、わたしがそのメリユだと信じてくださいますでしょうか?」


 サラマ様はもちろん、ルーファ様やわたしたちも、隊長様に思わず怒りを抱いてしまった中、メリユ様タダお一人がとても落ち着いたご様子で、メルー様の(どちらかと言えばあどけない)お顔で微笑まれながらそうおっしゃったんです。


「メリユ・サンクタ・マルグラフォ・ビアド聖女猊下は、聖都ケレンで神よりのご警告を発せられたのをわたくしも拝見しております。

 貴女様がその聖女猊下であるならば、そのお力をお示しいただけますでしょうか?」


「ええ、もちろんでございます。

 神よりのご警告を形としてお見せすればよろしいでしょうか?」


「ははっ、そうしていただければありがたいですな」


 ええ、もう、ぜひやってしまってくださいっ!


 そう、一瞬言ってしまいそうになったのですが……これでもわたしはメリユ様のディレクトロ デ サンクタ アドミニストラードなんです。

 先ほど確認いたしましたところ、メリユ様は聖なるお力を完全にご回復されていらっしゃっていて、メルー様が七割ほどということでしたけれど、無駄遣いをする訳にもいきません。


「メリユ様、ご警告とは……『星落とし』ではないですよね?」


「はい、少々雷雨を少しばかり……ダメでしょうか?」


 ……キャンベーク川と、聖都ケレンでメリユ様がお日様すら顕現できるほどのお力があるのは分かっていましたけれど、本当に天候すらも左右できるのですね。

 一体どれだけのお力をお使いになるのでしょうか?


「せいぜい、二分ほどで済むと思われますが」


「……それぐらいでしたら」


 って、いえいえ、どこの聖女猊下が気軽に雷雨を齎せるというのでしょう。

 はい、メリユ様以外にはおられません!

 ああ、もう、どれだけすごいのでしょう、わたしのメリユ様は!


「えっと、メリユ様、雷雨となりますと危険ではないでしょうか?」


「雷を落とす地点はきちんと定めて落とすようにいたしますので、大丈夫ですわ」


 心配になられたらしいメグウィン様がメリユ様にこそこそ話しかけられますが、メリユ様はニコリと笑っていらっしゃいます。

 雷を好きなところに落とせるって……まさにご神罰って感じ、ですよね?


「どうなさいましたか、聖女猊下?」


「いいえ、どこにご警告を発しようかと考えておりまして。

 やはり、帝国軍の陣地の方でしょうか?」


「は、ははは、それならぜひそうしていただけますと……」


 さすがに隊長様も、サラマ様に睨まれているのに気付かれたのか、軽口をお止めになられます。

 まあ、この方も……もう間もなく、メリユ様の前にひれ伏すことになるのでしょうね。


「では、始めるようにいたしますね」


「「「はい」」」


 メグウィン様とわたし、サラマ様が頷かれると、


「“Show console”

 “Add 2000.0 to Temp-Radius”

 “Execute batch for lightning-effect with pin-id#53”」


 メリユ様がすぐさま聖なるご命令を発せられます。


 一、二、三……。


 コンソールが出現し、隊長様が『ひっ!?』と驚かれた直後、バーレ連峰の東麓の方、その上空に黒い雲がもくもくと湧き上がり出したんです。


 ええ、まあ、そういうことでしょう。


 何せメリユ様ですから!

 雷雨くらいちょちょいのちょいなのですね!


「なっ!」


「ぉ、おい、雲が!?」


「な、何だ、あの雲は、尋常じゃないぞ!」


 全て分かっている王国関係者だけが『あー……』という感じになっていますが、聖騎士団の方々は聖都ケレンのことがあっても、一人の少女が引き起こせる事態を受け止めきれていないようです。


 そして、雲が天界に届くまでになった辺りで、雲の下から雨が降り出したのか、バーレ連峰の景色が霞んでいき、ついに巨大な稲妻が空から地へと走るのが見えたのです。


 ええ、もうあまりに眩しくて思わず目を瞑ってしまいました。


 続いて、ほんの少しの時間のあと、耳がおかしくなるような雷鳴が届き、


 ピシャーン、ズズズズズズズン……。


 お腹が……いえ、全身がビリビリと震えるほどでした。


「「「…………」」」


 さすがの聖騎士団の皆様も絶句していらっしゃいます。

 まあ、そうなるのでしょうね、分かります。


 と言いますか、正直、今のを落とされて、帝国軍の方々は何も感じないのでしょうか?


 いえ、『星落とし』すら無視された方々ですから、それすらも神からのご警告とは受け取られないのかもしれませんね。


「念のため、もう一回警告をしておきましょうか?」


「「「え」」」


「“Re-execution”」


 ……一、二、三。


 ひゃっ、また辺り一面が真っ白になって雷が落ちたみたいです。

 そして、少しばかりの時間のあと、耳鳴りがしそうなほどの雷鳴が砦に届き、聖騎士団の方々が一斉にメリユ様の前に平伏すことになったのでした。


 まあ、そうなるでしょうね……。

ご投票等で応援いただいております皆様方に心よりの感謝を申し上げます!

ここのところ、少しばかり、燃え尽き気味なもので、ブックマーク、ご評価等で応援いただけますと幸いでございます。

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